Moonlight Sonata えくれあ

2001年1月19日発売
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 正統派ファンタジー、といった場合にどのような内容のものをさすのか、といわれても、私は「ファンタジー」というものをつきつめて考えたことはなく、したがって漠然としたイメージを当てはめて語っているにすぎないのですけれど、この『Moonlight Sonata』は、まさにそんな「ファンタジー」の王道を行く作品、といったところでありましょうか。

 この「えくれあ」は、アクティブ系列の新ブランドだそうですので、操作性については申し分ないと確信する反面、内容については「当たるも八卦」といった感じでの購入となりました。パッケージで顔を染めている聖職者風女性とロリ娘とのグラフィックに惹かれた、というのが正しいところかも知れません。

 しかし、まさか王族であれば、近親婚だって許されるはずですなんていうヤバすぎるセリフが出てくるゲームだとは思わなんだ(^_^; 美しい実妹も出てきますし、「後日の展開」を薄々臭わせる描写もあるのですが、Hシーンはありません。実妹にも「回想シーン」という項目は出るんですが、そういうシーンはないんです。すごく残念…といったって、ないものねだりである以上、仕方ありませんな。

シナリオ

 魔法が当然のように浸透し、また宗教の教義を巡る対立から全面戦争を経験した西欧中世風社会。主人公・リアンは、自分の身を1つところに置くことを潔しとせず、その剣術のみを武器としながら、大陸中を旅して回っている。ひょんなことから、寡黙な不思議少女・リリア、野心的で美貌の聖職者・デュエルらといった魅力的な女性がパーティに参加し、王都を目指すこととなる。

 

 シナリオ担当は「芹沢さとし」氏。

 ゲームの冒頭で登場する主人公の正体がまず不明、さらに参加していく女性たちもみな正体の詳細は不明ながら、次第次第にその実像が明らかになっていく、という体裁を取っています。

 このスタイルだと、最初のうちは「わけわからん」、そして中盤以降「なんでやねん」の連発となるケースがかなり多いのです。それは、「ネタの明かし方」の工夫が足りないことに起因するのでしょう。しかしこの作品では、まず最初の「わけわからん」さまに、キャラの行動や言動のパターン化をうまく重ね合わせることで、決して一筋縄ではいかない経歴の持ち主であることをうかがわせつつ、それが「後に明らかになっていくのだ」ということを巧みににおわせ、「先に進もう」という気を起こさせる描写になっています。また、各キャラクターの実像も、それぞれのエンディングに近づくにつれて明らかになっていきますが(主人公のキャラについては、各シナリオをクリアするごとに少しずつイメージが加わるといった感じですが)、「実は……だったんだ」といきなりバーンと放り投げられて目が点になることはありません。キャラの行動を(量的に)過不足なく描き、それによって各キャラの心情変化を示すという、いうなれば当然の、しかし実は難しいことをキッチリこなしています。

 反面、各キャラの行動描写に過不足がないために、キャラごとの持ち味、ないしは個性といったものがあまり見えてきません。このため、キャラに対するイメージ描写は、キャラごとに割り当てられた看板(「聖職者」など)どおりのイメージにしたがったキャラクターという水準に留まっているのが残念なところです。

 

 ストーリー自体は、ごくオーソドックスなものです。「魔法」が当然のように使われていながら、資源枯渇といった話題が出るなど、「中世」という舞台にはやや違和感を抱く設定もあったものの、展開自体はごく自然なお話といえましょう。一般性のある世界観が呈示されることもありません。むしろ、上記のようなキャラクターの描写のしかたに中核が置かれている、と考えるのがよいと思います。

 さらに、「ファンタジー」として見ると、そのしかけはさほど複雑なものではなく、お話としてはあまりにも凡庸でありましょう。冒険譚というには展開の起伏に欠け、淡々と進みます(単調かどうかは議論の余地がありますが)。また、コミカルなドタバタシーンが多く入っているわけでもなく、エンターテインメント性も高いものではありません。このため、ドキドキものを期待すると、かなり物足りなさを感じるでしょう。

ゲームデザイン

 行き先でヒロインとの出会いを重ね、またコマンドを選択することでエンディングが決定される、アドベンチャーゲームです。

 基本的に、夜になると行き先が表示され、そのうちヒロインのいる場所を選択して会っていくという形を取ります。この選択はカードをクリックすることで進むのですが、一度選択したカードにはヒロインの顔が表示されるので、それ以降のプレイでは「どこに誰がいるのか」の見当をつけることが可能となっています。また、オートセーブ機能(後述)と併用すると、セーブ&ロードで狙ったヒロインに会い続けることもできます。

 初回では誰がどこにいるかはわかりませんが、セーブ&ロードで対処するのであれば、クリアは簡単でしょう。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、「正しいCD-ROMでないと不可」という謎のメッセージが出ていました。Webサイトにアップされている修正ファイルを用いることで、この不具合は解消できます。

操作性など

 アクティブおなじみのすぐれたユーザーインターフェースは、このゲームでも健在です。

 CD-ROMを挿入するとセットアッププログラムが自動起動し、インストールの際には、最小・標準・最大の3とおりが選べます。

 操作には、マウス、キーボード、ジョイパッドが使用可能です。マウスとキーボードとは、いずれも自由に使い分けることができ、画面上のクリックポイントやキーボードのショートカットキーが多数用意されています。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です(デフォルトではフルスクリーン)。基本的に全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが半透明表示されます。画面表示は「標準速/高速/最高速」から選択できます。

 メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。ただし、メッセージの自動再生機能があります(「F8」キー)。メッセージウィンドウの上側にあるボタンをクリックすることで、システムメニュー呼び出し(右クリックでも可能)・メッセージスキップ・メッセージ読み返し・メッセージウィンドウ消去が可能です。また、いつでもヘルプを見ることができます。メッセージスキップでは、既読・未読を判別でき、既読文のみスキップ・強制スキップの別、ファンクションキーを用いての一発操作など、非常に細かいカスタマイズが可能となっており、リプレイがまったく苦にならない配慮がなされています。

 セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能です。シナリオ数などを考えれば妥当な数でしょう(というより、アクティブのゲームでは標準仕様ですが)。また、プレイ中、オートセーブが行われるため、ゲーム中で見たテキストやグラフィックは自動的に記憶されます。セーブを「F2」キー、ロードを「F3」キー一発で可能というのも嬉しいところ。また、オープニング画面に戻ることもできます。

 冒頭の「Memoir」を選択すると、「Initialize data」(データの初期化)「Characters」「Music Mode」というメニューが表示されます。「Characters」を選択すると、エンディングを迎えたキャラクターごとに選択可能となり、それぞれ「プロフィール」「チャット」「CGモード」(サムネイル表示されます)「回想シーン」を選べます。また、各キャラが音声つきでナレーションをしてくれます。また音楽モードでは、BGMが各曲(曲名あり)ごとに再生できます。

サウンド

 BGMは、MIDI(GM)/DirectSound/CD-DAから選択可能です。ピアノ曲がわりといい感じですが、やや硬質に過ぎる気もします。イベントシーンが多い夜には、「G線上のアリア」が使われていますが、この曲はXゲームでも使われることがけっこう多いですね(これまで、『メロディ』『Silver Moon』の2例を確認)。著作権の心配も必要ない、というのもあるのかな? また、エンディングはボーカル曲となっています。

 音声は、男女・主人公含めてフルボイスで、有無を細かく切り替えることが可能です。演技はなかなかよい方だと思います。個人的には、リルルの声がいいと感じましたが、地味ながらも黒豹もよかったと思います。

グラフィック

 原画担当は、九郎乃氏。なかなかにプロポーションの良い女性たちで、しかも頬を染めたときの妖艶さには意外にも(失礼)グッとくるものがありました。表情の変化などは特に効果的に出ているというわけではなく、むしろ昨今のゲームに比べれば演出は非常におとなしいのですが、それでも落ち着いたいい感じだと思います。

 塗りは、おとなしい…というより、かなり地味な印象を受けます。パーティの雰囲気自体、ちゃかついたものではなく、むしろ仲間内の暖かさを見せる感じですし、この地味な塗りは意外にも(再び失礼)合っていると感じますが、果たして一般受けするものかどうか、ちょっと疑問には思います。

お気に入り

 リリアでしょう。このキャラにHシーンがあるとは予想しておりませんでしたが(爆笑)

関連リンク先

 まだ新しいゲームということもあってか、このゲームを取り扱っているサイトはさほど多くないようです。

総評

 キャラクターの人数が多いわりには、かなり地味なゲームです。正統的ファンタジーといえなくもないのですが、舞台となっている世界自体に広大さが感じられず、また社会自体もどちらかといえば沈滞的なものとして描かれていることもあり、ハッピーエンドといえども、それがキャラの個別水準に限定されたものとなっています。したがって、主人公たちが世界を切り拓くだとか、そういったイメージを抱いてプレイしてしまうと、間違いなく大外れという印象になりましょう。

 しかし、各キャラの心情描写にはなかなかに巧みなものがあり、各キャラ単位で見たシナリオは、それぞれきちんと作られています。しかも演出が最小限に抑えられているため、よけいな贅肉はなく、むだにストーリーを長くしていることもありません。昨今の演出過剰ゲームにどっぷり浸っていると、その素っ気なさには戸惑うでしょうが、プレイしていくうちに、この穏やかかつ地味なシンプルこそが、このゲームの持ち味なのではないか、と思えるようになっていったしだいです。

 笑いに頼らず、感動を使わず、謎に依らず、しかしキャラをきちんと描ききっている、なかなかに憎いゲームです。

 もっとも、裏を返せば、特にこれといって積極的に「このゲームにしかないものがある」というほどのものではなく、したがって別段プッシュしたくなる要素があるわけではないのですが、たまには薄味の料理も悪くないかなぁ、という向きにはよいかもしれません。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2002年5月9日
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