Renaissance JIN/スクランブルハウス

2001年1月12日発売
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 独特の淡いタッチのグラフィックになんとなく興味を引かれて手に取ったパッケージ。表情の起伏に乏しげな女の子と、どことなくイタリアを連想させる町並みから、主人公の“持っているもの”はいったい何だろう、と思ってプレイを始めたのですが、いろいろな意味で進めるのが面倒くさくなり、ちょっとプレイしては止め、ちょっとプレイしては止めを繰り返し、最終的にコンプリートするまでに1年半以上を要してしまいました。まったく何やってるんだか。

シナリオ

 主人公・天童弘司(変更不可)は、さまざまな賞を得た美術界の若きホープであり、すでに画家として高い名声を得ている叔母の援助で気ままな一人暮らしを送っている。東京に住む父親の健康がすぐれないことから、東京に引っ越すことを決めた主人公だが、その日を境に、さまざまな事件が起こる。彼は東京に転居し、そして画家として独り立ちすることができるのだろうか。

 

 シナリオ担当は、鳥山仁氏。

 ヒロインとのラブストーリーなどは二の次三の次以下で、ゲームの中で展開される独特の世界に浸りつつ、その仕組みを見極めていく、というタイプのシナリオです。神秘学を主要装置として、言語や美術(絵画)などを使いながらそれらの世界を組み立てていく、というスタイルになっています。

 ゲーム世界は、総体としてなかなかうまくまとまっています。ゲーム世界や、その中で主軸となる鍵概念をプレイヤーにうまく伝えており、シナリオの流れを止めずに過不足なく展開しています。

 しかし、世界や概念を説明できている反面、それら(特に、概念)をうまく使っているかというと、疑問符がつきます。例えば、「言葉」を持ち出している一方、それに対する畏怖心などの描写があまりにも甘い。主人公が絵描きということを考慮しているのかもしれませんが、言葉の神秘性を安易にほかの要素とつなぎ合わせているため、単なる記号に成り下がっています。これに限らず、おもしろい設定を持ち出している以上、それに対する主人公の視点の変化をもっと明確に出すべきです。単なる「謎解きのための道具」ではなく、いわば人生観を変えるような転回をもたらしうるだけの“大道具”が、役不足を託つのはなんとも悲しいものです。

 

 また、キャラクターの扱いがワンパターンであり、それらの個性が見えてこないため、ゲーム世界への没入が難しい点もあげられます。

 どのヒロインも主人公に対して服従することを望むタイプばかりなのはよろしくありません。確かに、独創的な芸術家とうまくつきあっていけるのはこういうタイプかもしれませんが、逆にいえばある危機や転機に対して、パートナーとして頼れる存在にはなっていません。

 さらに、どのヒロインの判断も、自分の行動などに対してゼロサム的に是非をくだして事足れりとするばかりなので、その考えに対していちいち魅力がわきません。

 

 おまけに、物語のクライマックスにおいては、ヒロインの存在はなくてもまったくかまわないものに成り下がっています。ヒロインそっちのけで話が進むというどころか、いてもいなくても関係なく、主人公に付随する一要素に過ぎません。

 おまけに主人公が女の扱いに長けているという設定もあいまって、ヒロインがさらに軽いものになっています(これはシナリオの中核とは直接関係ありませんが)。

 なるほど、ヒロインたちは“事件の当事者”ではないのであって、傍観者でさえもないことを強烈に示すとこうなった、という説明は一応可能です。しかしトゥルーエンドに到達するまでは、こういう表現をする意図がさっぱりわかりないのもまた事実ですし、プレイヤーに対する訴求力も大きく欠落します。そして最後までプレイしたとしても、シナリオを全体的に俯瞰して解釈すれば理解できるとはいえ、最初から素直に納得できるものになっているとは思えません。

 

 それでは主人公の描写はどうか、という視点が出てきますが、これがまた甘い。謎解きを主体的に行っているわけではなく、むしろ各行動の結果が、プレイヤーに対する説明の域を出ていません。

 特に、最終シナリオでの主人公の位置づけが急に変わることもあって、主人公の位置づけが、ストーリーの語り部なのか、あるいはゲーム世界を端的に象徴する存在なのか、はたまた(ネタバレにならないように曖昧に書くと)“神の降臨”なのか、その見極めに右往左往しながらエンディングを迎えることになります。最後の結びがあまりにも急に過ぎた観は否めません。

 

 テキスト描写は、あまり感心できるものではありません。プレイヤーに対して「わかりやすく説明する」といった配慮がある一方で、読んでいるときにはわかりやすい一方記憶に残りにくく、このためストーリーを最後まで終えた時点で展開がピンとこないものになっています。おそらくはこれを避けるためでしょうが、要所要所で“復習”といった感じでイベントを思い出すケースが多いのですが、このためにテキストがかなりくどいものになっているのが残念。また冒頭で書いたように世界や概念の提示じたいはスマートであるだけに、もう少し簡潔にしたほうがよかったのでは、と思います。もっともこの判断は、言語学(特にソシュール)に関する知識の程度で変わってくるかもしれませんが、私の神秘学やカトリック史に関する知識を考えれば、さほど気にする必要はないかも(^^; 専門用語を可能なかぎり廃しているのは高評価(使用すれば簡単に説明できたと思える「シニフィアン−シニフィエ」など、一回も出てきていません)。

ゲームデザイン

 ゲームは、攻略対象(基本的に4人)の各シナリオをクリアすると、トゥルーエンドへのルートが開けるというタイプのアドベンチャーゲームです。ゲーム期間は2〜3週間ほどです。

 4つのストーリーで伏線を張り、またそれらの個別のストーリー間でそこそこの関係を持たせつつ単体では不十分というスタイルを取っており、なおかつエンディングでややひっかかるものを残す形で締め、「先へ進もう」という気にさせる方式になっています。

 しかし、シナリオ分岐は、基本的に毎晩の「時間割作成」をプレイヤーが決定し、これによって決まるカラーチャート(カラーパターンは4種類)によって翌日のイベントが決定するという不可解なシステムとなっています。このため、おそらく初回プレイではバッドエンド直行でしょう(バッドエンドでは一応ヒントが出ます)。私は、かなりの回数の試行錯誤を経たのち、パターンを何とかつかんで意に添う色の組み合わせを出せるようになりましたが、この試行錯誤がプレイヤーに対して無用な作業を課しているのは納得いきません。しかも、時間割(および授業)そのものはシナリオ展開とはほとんど関係ないのだから、毎日毎日時間割を組むのが空しくなってきます。時間帯にかかわらずカラーパターンを決められる科目は決まっているのがせめてもの救いでしょうか。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、特に問題は発生していません。

デモ・体験版

 いずれも、存在を確認していません。

操作性など

 対応OSはWindows95/98です。WindowsXPでも一応動作はしますが、ときどき画面(背景・立ちの両方で)がブラックアウトするため、プレイに耐えません。CD-ROM1枚で、インストール時に必要なHDD容量は約230MBです。

 画面はグラフィックが640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示との切り替えが可能です。

 メッセージ読み返し機能がないのは残念。「Enter」キーを押しっぱなしにするとスキップが可能ですが、既読/未読の区別がないため、あっという間にすっ飛ばしてしまうことが多いのが困ったところ。

 セーブは、1日の終わりにのみ、40個所まで可能。ロードはタイトルメニューからのみ可能なので、プレイ中にロードしたくなった場合はいったんタイトル画面に戻る必要があります。

 CGモード(ヒロイン別)は1枚ずつの表示と、2001年初頭発売という時期を考慮してもかなりかったるいものがあります。Hシーン回想モードと音楽モードもあります。

サウンド

 BGMはCD-DAで再生されます。強く印象に残るものはありませんでしたが、雰囲気がよく出ていたとは思います。

 音声はありません。

グラフィック

 原画担当は「煉瓦」氏。中間色を多用し、いわば水彩画のような独特のトーンが特徴です。キャラクターの表情が乏しいのがやや気にかかりましたが、パッケージ絵が肌に合えば問題ないでしょう。

 ただし背景画像が妙に小さく、ゲーム世界を窓からのぞいているような気になります。意図的な演出として行ったのかどうかはわかりませんが、もう少し大きい画像を使ってもよかったのでは。

 あと、Hシーンで「一部着たまま」が多かったのは、作者の趣味でしょうか(^^;

お気に入り

 アルコン。妄執の権化といってしまえばそれまででしょうが、しかしこの物語における穢れ役である彼の存在は非常に大きいものです。ヒロインが数人消えても問題ないくらいに。

総評

 「シナリオ」欄ではかなりキツいことを書きましたが、問題点の多くは、主人公の位置づけのブレに起因するものといえましょう。逆に言えば、主人公の立場に対してさほど気にすることなく、各ヒロイン、あるいは世界そのものを徹底的に“対象”としてみれば、なかなかに楽しめる作品になっているといえます。特にこれといったものを残してくれるわけではなく、むしろ最後は尻すぼみのような観もあるのですが、ストーリーの組み方そのものはなかなかよいものになっています。

 一方、不可解なゲームデザインや、お世辞にもよろしくないユーザーインタフェースについては、どうにも納得がいきません。シナリオを満喫し、特にテキストを丹念に追っていくことが必須ともいえるゲームにおいて、この点は非常に問題を抱えています。

 なお、トゥルーエンドを迎えても、やや“奥歯にものが挟まった”感が残る結末になります。その点はご注意のほどを。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2003年2月28日
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