紫花 −しのはな− PL+US

2001年2月23日発売
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 読み方がよくわからないゲームタイトルというものがあります。もちろん、私が単に字を知らないというケースもありますが、大半は、いわば「当て字」に対して適当な読みを付したものです。当然のことながら、正統的でない「読み方」をして引きつける場合、その「引きつけるもの」に意味が込められているわけですが、この『紫花』のパッケージを見ると、キャラクターの背景にホンモノの樹が立ち、そして花が咲き散っていく図が、なにがしかの「根本」になっているように思えます。

 さて、その中身たるや、いかに、と思いながらプレイいたしました。

 なお、PL+USサイトで紹介されていた「ザッピングシステム」については、期待よりも不安の方がはるかに大きかったものの、その不安は的中しないように願いながら手を出した、ということを最初にお断りしておきます(^^;

シナリオ

 鉞村は、ほとんど余所者の出入りのない山奥にある寒村。高樹瞬(変更不可)は、自分の記憶の一切を失った状態で、神社の巫女姉妹である、美優・薙に拾われ、神社で厄介になることになる。また、三笠由里(変更不可)も、地元の青年である勇臥に助けられる。彼・彼女は、どうしてこの村に自分がいたのかを、それぞれの視点から探り、村に伝わる怪しげな言い伝え、周囲の人間の奇行に振り回されつつ、鍵となる「紫花(しのはな)」の謎に向かう。

 

 シナリオ担当は「田代裕」氏。主人公の2人が入れ替わる「ザッピングシステム」を取っていることについては、「ゲームデザイン」の項に譲ります。

 上記粗筋を「謎に向かう」と締めましたが、実は「向かう」だけで、謎は解決していません。むしろ、謎解きのスタート地点に立ったところでストーリーは終結しています。「謎が解決されないままで終わる」という表現でシナリオの消化不良が評されることはほかのゲームでもよく見られますが、それは一般的に「伏線をもとにした解決がなされていない」あるいは「前提のない結論のみが出され経過もなにもわからない」といったケースを示すといえましょう。しかしこの『紫花』では、そういうのではなく、「謎」が「謎」として終結しているのです。PL+USサイトにも紹介されていた公式の「ストーリー」概要では2人の主人公が、この村に隠された真実の謎を暴いていく。となっており、これは間違ってはいませんが、「暴いていく」(進行形)だけであって、最終的に暴いたわけではありません。

 これはこれで悪くはないのですが、「謎解き」ものとして取り組むと「騙された!」と思うでしょう。ご注意ください。

 

 シナリオの展開自体は、さほど無理なく行われており、伏線のはり方や消化の仕方もスマートなものと感じます。また用意されているイベントなども、わりといい雰囲気を出すことに成功しており(これは、ほんわか調のキャラ絵の効果もあると思いますが)、比較的すんなりと進めることができます。一方で、トータルとなる主題、ないしは「謎解き」といった行動に対しては、大したものではないと思います。

 もっとも、「閉鎖的な村」を筆頭とした「よくある設定」で、あまりに凝ったモノを出されて自爆されるよりは、むしろ雰囲気のよさを味わいながらのんびりいける方がいいな、というのが私の考えなので、伝奇に興味を抱いて手を出されると外すかも。

 

 キャラの配役ですが、最終的に、役の善悪がかなり明確に分かれてしまうのはいただけません。無名の集団をひとからげに扱ってしまうことはさておき、ヒロインを含めたキーパーソンも「善人・悪人」となっており(辛うじて1名のみが「双方」の橋渡しになっているかな)、エンディング(トゥルーエンドにかぎりません)を見てストーリーを振り返ると、どうにも浅薄な行動や動機の集積に思えてなりません。

 各キャラクターの描き分けはそれなりにできており、また「表情」をきちんと見せることには成功しています。しかし、瞬ルートの場合、ヒロインとの関係に「なし崩し」的な要素が少なくないので、ストイックに途中経過を求める向きには辛いでしょうか。私は、後日譚もきちんと入れていることもあって、これで十分と感じましたけれど。

 

 ところで、冒頭でも触れた「しのはな」ですが、明確な説明づけは特になされていません(少なくともテキストの文面から合理的に確定できる程度の要素はありません)。多義性を前提としたネーミングということなのでしょう。個人的には、具体性に欠ける上に、イメージを喚起するわけでもなく、解答が世界設定の解釈によって複数可能であるという姿勢は、嫌いではないのですけれど、ゲームに用いる手法として歓迎できるかどうかとなると、ちょっと疑問ではあります。

 

 あと、テキスト中に「……」が多用されているのが、多少鼻につきましたが、気にするべき要素ではないのでしょう、おそらく。

 最後に一言。羽柚はなぜ脱がんの?ヾ(^^;

ゲームデザイン

 瞬・由里の2人の主人公の視点でそれぞれ進行させ、一方の視点でエンディングを見ると別の視点でのフラグが立つ、という「ザッピングシステム」を取るビジュアルノベルです。『カナン』(フォア・ナイン)のように「主人公が交替しながら一直線のシナリオを進行させる」というのではなく、開始時に主人公を選択し、最初からスタートさせ、途中の選択いかんで次回以降のシナリオ分岐が可能となり得る、というものです。

 途中でセーブした上でエンディングを迎え、そしてセーブポイントからリスタートすると、新しい選択肢が出現したりします。

 1回あたりのプレイ時間はさほど長くはありませんが、見るべきシナリオの数が非常に多く、トゥルーエンドに到達するまでの試行錯誤はかなりの回数を要します。ポイントとなるべき選択肢の見極めはわりと大変で、しかも失敗すれば最初からやり直さねばならないケースも多いので、どこがキーポイントなのかがわかりにくくなっています。難易度は「やや難」あたりでしょうか。

 

 スタート地点が同じシナリオを何度も繰り返すという「シナリオ構造の仕様」のなせる業なのでしょうが、前に見たシナリオのために、新しい展開に入っても先が読めてしまうことが多かったのは残念。また「新たな視点」から見ることはできても「新たな真実」を見ることはできない、というケースもありました。「シナリオ」欄で書いたとおり、大きな破綻もなく設定をきちんとまとめることができている反面、この「異なるテキストによる展開の繰り返し描写」がアダとなって、退屈さを覚えたことも確かです。

 クリアに必要としているシナリオの本数が、ストーリーのボリュームを上まわっていた、と思えます。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 CD-ROM1枚組となっています。

 操作には、マウス・キーボード・ジョイスティックが使用可能です。画面中での選択なども、基本的に二択・三択があるだけなので、キーボードの方がやりやすいでしょう。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です。基本的に全画面表示で、テキストがグラフィックの上に重なって表示されるビジュアルノベルのスタイルを取っています。スペースキーまたはマウス右クリックでテキストを消去できます。メッセージ速度表示は、標準速のほか、ノーウェイト表示も可能です。また、「Ctrl」キー押下でメッセージスキップ可能で、メニューバーの「スキップ」を押すと既読のみをスキップすることができます。さらに、既読文のみ高速表示することも可能です。テキストの読み返し機能も装備されるなど、「読む」ことについては、非常に細かいところまで気が配られているのが嬉しいところですね。フォントも任意のものを選択することができます。

 セーブ&ロードは、任意の位置で80個所まで可能で、セーブ時の実日時・シナリオ名・ゲーム中の日付も記録されます。

 トゥルーエンドを見ると、トップメニューに「おまけ」が表示され、「画像閲覧の室」(CGモード;サムネイル表示)「楽曲試聴の室」(BGMモード;曲名選択方式)が出ます。回想モードはありません。

サウンド

 サウンド担当は「夜皇禰実」「ねるねる」「ARM」各氏の担当。BGMは、CD-DAで演奏され、やや和風の雰囲気を帯びた曲が多く、落ち着いた感じを醸し出してくれます。また、ごく限られたシーンですが、無音になるところがあり、これが意外とよかったように思います。

 EDには、ボーカル曲が2つ用意されています。「花詩 〜はなうた〜」と「あなたへの旅」で、唄は「KIRIKO」さんです。個人的に「あなたへの旅」が気に入りました(^^)

 音声はありません。

グラフィック

 キャラデザ・原画は「日向悠二」氏。ちゅるぺた万歳ヾ(^^; 独特のほんわかとした、お茶目な感じの絵柄です。メーカーサイトやらパッケ絵やらのグラフィックを見れば一目瞭然なので、まさに「好みかどうか」の世界でしょう。上手な絵というわけでもないのですが、比較的静かで、なおかつドロドロ感をある程度抑えた世界には合っている絵だと思います。「美優、メロンパンくわえたままおねむ」の図が一番好きです。

 背景絵は、あまりパッとしませんね(^^; 実写取り込みが多いのは、いまどきちょっと寂しい気がします。

 前作『想い出の彼方』と同様、画像とテキストの重ね方はなかなかいいですね。ページの切り替えとキャラの表情変化とのタイミングの取り方がいいのはマル。

お気に入り

 姉の薙ですね。最初からかなり辛い役回りですし、どんな展開になっても、わりと重たいものを背負わされていますから。見た目では美優の方が好みなのですけれど。

関連リンク先

 地味なのかなぁ、やっぱり…定期巡回先では見当たりません。うーむ。

総評

 謎を残して考えさせる、というのではなく、むしろ謎を「解かないもの」として完全に手つかずのままで存置する形になっているので、サスペンスとして見ると、肩すかしを食らうのは間違いないでしょう。

 また、物語の結末に至る伏線も、単純明快なので、この点では特に目を引くほどのものでもなく、したがって伝奇ものとして多くを期待しても、やはり肩すかしという結果になるでしょう。

 むしろ、個々のキャラクターが見せてくれるさまざまな表情、そしてサウンドなどによって作られる雰囲気を味わう方が、このゲームをより楽しめるように思います。本来「そういうゲーム」ではないのだ、ともいえるのでしょうが、一応及第点程度に楽しむことはできました。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2001年8月26日
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