月陽炎 〜つきかげろう〜 すたじおみりす

2001年10月19日発売
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 わりと重ためなテーマのゲームが多く続く中で、シチュエーションのバラエティやかわいいキャラクターを楽しむということが少なくなり、もう「キャラ萌え」なんていう言葉は自分とはまったく無縁になってしまったのかも知れないな、などと思っておりましたが、この『月陽炎』をプレイすると、まだまだそうでもないのかな、と思ったりいたしました。

 もとは、Web上で公開されていたデモ版で、ヒロインの声の使い方や画面の流し方が非常に気に入り、おそらくキャラクター描写については心配なかろうと考え、久々の発売日即購入となったものでした。別に巫女萌えというわけではないのですけれど、「和服」に惹かれたことは正直に告白しておきましょう(^^;

 なお、このメーカーの前作はバグがひどくて散々の評判だったようで、そのために購入を手控えた方もいらしたようですが、少なくともこの『月陽炎』にはバグらしいバグは見当たりませんでした。

シナリオ

 時は大正。嘉神悠志郎(変更不可)は、帝都の神社の跡取り息子であったが、神主となるための修行も兼ね、手助けを求めていた有馬神社に赴く。そこで彼は、銀髪で対人恐怖症の柚鈴(ゆず)、元気一杯のお転婆娘・美月の姉妹と出会う。有馬一家とともに過ごす彼は、何を見ることになるのか。また、姉妹の背負ってきたものは何なのか。

 

 シナリオ担当は、「宮蔵」「板東えみし」両氏。これまでどのような作品を担当されたのかは、残念ながら存じません。

 大正時代をベースとしてはいますが、実際には時代考証が厳密に行われているわけでもなく、巫女服の下にぱんつをはいてたりするので、ある程度割り引いて考えるべきですね(^^;) また、おやぢ1名をのぞけば若い女性ばっかりなので、こいつがいなければハーレムとか思ったのですが、そんな発想をしたのは私ぐらいかな?

 

 シナリオの構成は、「ゲームデザイン」で触れるとおりエンディングフラグ方式を取っているのですが、基本的な設定はほぼ同じであり、プレイするごとに少しずつネタが出されるという形になっています。『』(Leaf)のスタイルを思い浮かべていただければよいでしょうか。

 しかし、『痕』とは異なり、ある程度のエンディングを終えれば全体像はほとんどわかってしまい、後はもはやシナリオを「追う」形になってしまいます。これは、設定を動かさず、なおかつ、各シナリオをとにもかくにも完結させているため、シナリオを進めることが、単に「ヒロインがエンディングで迎える運命、およびそこに至る経過のバリエーション」という段階のみに留まっているからのように思えます。

 さらに、どのシナリオにおいても、核となるイベントが似通っており(双葉を除く)、ある程度プレイしているとパターンが読めてしまうのも痛かった。「この展開なら××が死ぬんだろうな」と思ったらその通りになったり。これでは「読んでワクワク」「気づいてドキドキ」とはなりません。

 端的にいえば、三姉妹の関係を把握できればそれでオシマイなので、あとはイベントシーンを楽しみ、エンディングを眺めるのみに近くなっています。

 

 日常シーンは、非常に楽しいですね。ゲーム中での「お約束」といえるような誇張したものも多いのですが、少なくとも私には十分に楽しめました。

 ただ、主人公が過度にいたずら好きであること、一回関係を結べばやたらと助平に走ることが難点でしょうか。

 また、主人公の言葉やモノローグに「…ましたね」「…ですね」と丁寧文が大量に使われているので、テンポが削がれると感じるかもしれません。私は、ていねいな言葉遣いのわりに無茶なことをやるのがおもしろいと感じたクチではありますが。

 

 キャラクターは、2人の姉妹のほかにも数人登場しますが、隠しキャラの類は特にありません。どのキャラもきちんと描き分けができています。特に両姉妹は、いったん仲良くなると本当に可愛い反応を見せてくれるので、見ていてなごみます(^^)

 なお、柚鈴は巫女服こそ着ているものの実質的には家事手伝い、美月は巫女服を作業着としてしか着ていないので、巫女萌えの人には向かないかも。長姉の鈴香は巫女ですが、出番は多くてもシナリオは薄いし、HシーンのCGは5人中最少です(^^;

 肝心のヒロインキャラ2人は、シナリオの構成上も、またCG枚数上もまったくの同格として扱われています。そしてまた、パッケージ記載の陰と陽。二人のヒロインそれぞれに用意された、趣の異なるメインストーリーと様々な結末というコピーが、両ヒロインの「真実」を知った後に改めて理解できるという形になっているのは良かったですね。単純に「銀髪→月依」という具合に、一見してわかる設定のみに頼っているわけではないので、両キャラクターが「軽い存在」になっていないのはマル。シナリオの描き方に比べ、メイン2人のキャラ描写、そして「抱かせたイメージを少しずらした設定」を出すことで、最後までキャラクターが「いきいきと」しています。シナリオ自体の流れはヒネリがないのに、キャラが「ただの駒」になっていないのは、特筆できましょう(誉めてないような気もするなぁ、この書き方…)。

 

 エンディング自体は、ある程度プレイしていくとパターンが読めてくるものではありますが、基本的に、柚鈴と美月の両方が直接関わるエンディングは、どれもキチンとまとまっていたと感じます。いわゆる「ハッピーエンド」に属するものは、それまでの出来事をひとまず総括しておしまい、というにすぎないものが多かったのが残念。やはり、「美月、お帰り」のエンディングがいちばん良かったかな。

 

 テキスト描写はわりと良く、長くなく短くなくといったところで読みやすくはあったのですが、漢字を多用したために雰囲気が妙だと感じたことがありました。また、音声があることを前提としたテキストに仕上がっており、感情が声つきでいきいきと浮かび上がってくるのは高評価。

というか……気にされると……恥ずかしいというか……でも……嬉しいというか……はぅ……あぅ……もう……やぁん……

 上記のテキストは、Hシーンではなく日常シーンで照れ照れになっているヒロインのセリフなんですが、これを鼻にかかったような声で演じられたら、正直たまりません。目で読むのはちょっと難あり、と思えても、声が伴うと破壊力抜群です。

 

 Hシーンは、両ヒロインの場合、1回ヤると、あとはかなり頻繁に出てきます。なお、全部が着衣Hというこだわり方には驚きました。賽銭箱Hとか割烹着Hとか水中Hとか放尿とかありますし、ラブラブになったらあとはやりまくり一直線みたいな感じですね(^^; 鈴香と双葉は1回だけ、あとは複数回あります。葉桐のHシーンなど何度も見ようという気にはなりませんでしたが、これはこれでエンディングへの一種の伏線(というほどではないけど)になっています。美月の場合も真相への伏線が入っていますが、詳細は控えます。

ゲームデザイン

 各ヒロインごとにエンディングが用意されているタイプのアドベンチャーゲームです。しかし、最初から任意のストーリーを選択することは不可能で、エンディングを迎えた後に最初からプレイを始めると、選択肢が増えたり話が続いたりして別のエンディングへ到達可能となっています。中には、バッドエンドも含めてすべて見ないと別のシナリオに入れなかったりします。進行に影響のないダミー選択肢もかなりありますが、かといって会話のバリエーションが大きく変わるわけでもなく、どちらかといえば(CGなしのものも含めて)イベントが起きるかどうかが分かれるだけですね。

 攻略可能なキャラクターは5人ですが、実質的におまけ扱いに近い双葉をのぞき、基本的に、柚鈴系統・美月系統に別れています。鈴香・葉桐も攻略可能ですが、2姉妹から分岐する形になります。

 プレイを重ねていけば新しい選択肢は容易に気づきます。選択肢にも意地悪なものはほとんどなく(Hシーンの分岐はそこそこあります)、テキストの既読・未読の判別も簡単なので、丹念にプレイしていけば容易でしょう。双葉攻略にたどり着くのは少しやりにくいかもしれませんが、難易度は「やや易」あたりでしょう。

 なお、各ヒロインを攻略していくたびに、タイトル画面の表示が少しずつ変わっていきます。オールコンプリートすると、タイトル画面そのものがCGモードに登録されます。

不具合・修正ファイル

 私がプレイした環境では、不具合の類はまったく起こっておらず、非常に安定しています。ただし、ゲームを実行すると、ほかのアプリケーションの速度が急に遅くなること、CPUへの負荷がかなり大きいことが難と言えば難ですが。

 ただし、マニュアルに記載されている「オートプレイ」モードは削除されたようで、メニューバーにはなく「F5」キーを押しても反応はありませんでした(2002年3月3日補注:『月陽炎 〜千秋恋歌〜』によると、「マニュアル制作ミス」とのこと)。

デモ・体験版

 Webで公開されていたデモでは、柚子・美月の2人の表情がそれぞれ対照的に移り変わりゆくありさまをうまく出しています。画面が流れる中で出て行く不安な表情、そして声は、ゲームの雰囲気に対して大きく期待させるものになっています。冒頭でお賽銭をあげるシーンからボーカルが流れるまで、一部のスキもない出来に仕上がっています。

操作性など

 対応OSは、Windows95/98/Me/2000ですが、WindowsXPでも問題なく動作しました。

 CD-ROM3枚組となっており、初回版には画集(?)が同梱されています。

 インストールの際に必要なHDD容量は約1.5GB(パッケージには「約1GB」とありますが、これではとうてい足りません)と、半端でなく多いので、ディスクの空き容量は事前にチェックしておく必要があります。インストールの際にはCD-ROMを3枚とも使います(「インストールCD-ROM」と書いてあるのは1枚だけなのですが)し、またインストールにはかなり長い時間がかかるので、注意が必要です。

 ゲームの起動には、CD-ROMは不要です。マウス操作が基本ですが、キーボード操作も一部可能です(選択肢を選ぶとき、およびセーブ・ロードなどの選択の際にはマウスのみ)。ゲーム中、強制終了・タイトル戻りもメニューから可能です。HDDを多く食うだけあって、操作性自体はまず及第点でしょう。

 画面構成は、640×480とフルスクリーンから選択可能で、グラフィックは全画面表示となり、テキストはモノローグおよび主人公のセリフが下部に、主人公と対話しているキャラのセリフが中央部に表示され、また話しているキャラごとにテキストの色が変わります。フォントは変更可能で、影付きや縁取り・アンチエイリアスなどの指定もできます。メッセージウィンドウはありませんが、読みにくいと感じることはありませんでした(背景明度を落とすことも可能です)。なお、既読・未読の判別はオートセーブされるようなので、テキストをひととおり読んでからロード(ないし強制終了)しても、次回以降は既読と判定されます。

 テキスト表示速度は比較的細かく変更でき、「Ctrl」キーで押下中強制スキップ、メニューバーの「次の選択肢へ」または「F6」キーで既読スキップ可能です。途中ときどき引っかかるところが多く、あまりスキップが速いとは言えませんが。画面右下のフィルムマーククリック、あるいはマウスのホイールを回転させることでテキストの読み返し(全画面表示されます)もできます。

 セーブ(「F2」キー)・ロード(「F3」キー)は任意の位置で、20まで可能です。セーブ時のイベント名称、およびプレイ時の実日時が記録されます。どのシナリオかが表示されないのがやや残念ですが、実際にはイベント名から各イベントが割とすぐに思い浮かぶので、これで充分かも。

 CGモード(各ヒロインごとのサムネイル表示)・BGMモード(曲名から選択する方式)・Hシーン鑑賞モードのほか、「アイテム」というものがあり、これがエンディング確認モードを兼ねているようです。

サウンド

 オープニングの「夢陽炎」はボーカル曲です(唄・KIRIKOさん)。

 BGMは、PCMで演奏されます。44100kHz・16ビットなのですが、総量が700MBを超えたためにCD-DAにしなかっただけのようです(ファイル名がすべて「Track」で始まっています(^^;)。サウンドのバラエティには富んでいますが、クライマックス付近、あるいは緊張感を出すシーンでの曲はやや浮いていたような印象を受けました。日常シーンの曲は割とほのぼのした感じで、個人的には「夢追う少女」や「日差しの下で」が好みです。…というより、日常シーンの曲ばかり頻繁に流れっぱなしだったような気もするのですが(^^;

 音声は、主人公をのぞきフルボイスです。演技力はなかなか良かったのでは。

 また、ところどころではさんでいる効果音が、なかなかリアルに効いています。廊下を歩くときにギシギシいう音までしっかり入っています。

グラフィック

 キャラクターデザイン担当は「仁村有志」氏。全般的に幼げなキャラクターで、クリクリした目がチャーミングですね。

 各キャラの描き分けもきちんとしていましたし、何よりも立ちCGでの変化のつけかたがいいですね。表情の変化と姿勢の変化とをうまく使い分け、各キャラの感情描写をうまく出していたと感じます。「芋かりんとうくわえて幸せモードの柚鈴」「呆れ顔で糸目になっている柚鈴」など、緊張感のカケラもない表情が特にいいですね。塗りもきれいなので、メーカーサイトのサンプルグラフィックがツボに合えば、まず問題ないでしょう。

 背景もなかなかきれいですが、パターンがあまり多くないのがやや残念なところ。舞台の範囲が限られているのですから、もう少しいろんな場所を入れてほしかった、というのは贅沢でしょうか。

お気に入り

 やっぱり美月ですね。モロに狙ったキャラなのですが、シナリオ上での位置づけと日常シーンとのギャップにやや難を感じる点を除けば、やはり一番印象に残りました。貧乳だからだろうというツッコミがどっかから入りそうですがそういう指摘はなかったことにしておきましょう(^^;

 次点として、ストーリーの本筋上はいなくても大差ない(笑)鈴香を挙げておきます。キャラがきちんとできているのにもったいない感じ。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトで取り上げられています。基本的に私とほぼ同様のお考えですね。

総評

 可愛いキャラクターのやり取りを見てなごむ、あるいはキャラに萌えるゲームとして捉えるのであれば、十分に合格点でしょう。特に、立ちCGのクオリティが非常に高く、キャラデザが好みに合えば、絵で損することはないと思います。パッケージからして、姉妹が仲良くお昼寝しているシーンですし、こういう雰囲気を味わおうとすれば、期待に応えてくれる作品になっています。

 その反面、サスペンスもの・伝奇ものとしてみると、設定の使い方が比較的単純であり、プレイを重ねていくたびに発見も重なっていくといった感触は得にくいのが実状です。

 しかし、キャラクターの配置やテキストの書き方を見るかぎり、シナリオを「読み解いていく」タイプのゲームというよりは、やはり「なごみ系・萌え系」ゲームとして見る方がよいと思います。その尺度で見れば、良作と判断していいでしょう。

 あと、巫女属性の方よりは、ちゅるぺた万歳の方向けかなヾ(^^;

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2001年10月22日
(10月29日、「操作性など」に加筆)
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