AS 〜エンジェリックセレナーデ〜 工画堂スタジオ【くろねこさんちーむ】

2002年3月29日発売
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 工画堂スタジオのゲームとしてはパルフェシリーズをこれまでプレイしてきましたが、この『AS』はタイトルから推測するかぎり『エンジェリック・コンサート』(以下、AC)とつながっていると考えられます。私は、キーボードでの擬似音楽演奏ができないと話が進まないという理由でACはプレイしていなかったのですが、このASは、演奏パートはストーリー展開に直接影響しないと知り、またやさしい雰囲気のグラフィックもあって、特攻したしだいです。同じ原画家がかかわった『マーメイドの季節』で苦い思いを味わったために、シナリオおよびバグの双方において、かなり警戒していたのですが、今回もその懸念はそう大きくは外れることがなく……(--;

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ

 主人公・クラビス(変更可能)は、記憶を失ったまま各地を旅する楽士。しかし彼は記憶を失っていたのみならず、何らかの理由で不老不死となっていたのである。何百年という時を経て流浪していた彼は、ある泉のほとりで、美しい歌をうたう少女と出会う。その出会いは、彼の運命を、そして彼女の住む小さな町「フォンティーユ」の運命を変えるきっかけとなった。

 

 シナリオ担当は、小林克典氏。

 根幹となるシナリオは、主人公および各ヒロインが抱えている悲劇、そして「天使」という設定によって成り立っていますが、先ゆく展開がどうなるのか、プレイヤーがぐいぐいと引き込んでいくだけの力がまずありません。これは、中途の展開が盛り上がりにつながるような要素に欠けており、イベントが「暇を持て余していたプレイヤーの息抜きに挿入」といったぐあいに配置されていること、そして各ヒロインごとの設定の調整が不十分であることが理由でしょう。特に後者は、各シナリオごとの設定の矛盾があるわけではなく、むしろ共通の設定の中で各ヒロインが配されている点ではスッキリしており、また伏線も一応消化されているのですが、各キャラクターが、世界設定を説明する存在に留まっており、そこで見せる能動的な動きがほとんどないことがあげられます。フィアはまだいいとして、ほかの各キャラクターはゲーム世界における運命をどう見ているのかに関する言及が非常に希薄であるため、そこに据えられた「悲劇」にも、生々しさが伝わってこないのです。つまり、メインヒロインのラスティを例外として、日常でかいま見えるヒロインたちの行動がゲーム世界とうまくかみ合っておらず、「だから何なんだ」と思えてしまうわけです。

 生死をかけての行動といった画面もかなり出てきますが、主人公が不老不死の流浪者という「非常に特殊な存在」であることが、主人公の周囲の人間からなかなか伝わってこないのが、なんとも不思議です。アルテなど、主人公へ理解するそぶりを示す一方で、実際にはかなり曖昧な姿勢をとり続けており、結局「特殊な存在」であることを踏まえた結末には至っていません。このように、各設定がキャラクターの中に根付くことなく、むしろ逆にキャラクターが設定の「駒」でしかないために、話にリアリティが感じられないのです。キャラの魅力を出す前に話が終わってしまっています。

 特定シナリオの終盤で出てくる天使および堕天使の話でさえ盛り上がりに欠けるのは、それすらクライマックスではなく「説明」にすぎないから…というのは酷に過ぎるでしょうか。ドラスティックな展開は度を越すと白けるだけですが、このゲームでは盛り上げるべきところでの盛り上げが皆無となっています。

 エンディングそのものは、わりとキチンと締まる形で終えているのは好感をもてますが、そこに行くまでに飽きがきやすい作りになっています。

 なお、冒頭で触れたACとのつながりですが、キーパーソンがそのまま重なっています。また、パルフェシリーズとのつながりでいえば、大魔導師の家がそのまま同じであり、「ルティル」の名前が出てきます。また「偉大な魔法使いが女装爆弾を作った」といった小ネタも散見されました。ただし、パルフェやレネットなどの名前は確認できていません(トレカを除く)。

 

 移動画面では、主人公をマウスで操作して動かすことになりますが、このマウス操作が非常にやりにくく、通路に沿ってマウスをクリックしたまま動かさなくてはならないため、長時間プレイしていると手首が疲れてきます。通路が限定されているうえ、むだな動きができない仕組みになっているため、自由に動けるように見えても実際にはあまり自由度は高くありません。

 イベントの発生は、日付・時間帯・キャラクターの好感度などによって決まるようですが、イベントが発生する場所がほぼ決まっているうえ、基本的な通路となる場所を通ると自動発生することも多いので、見ても「新しいイベントを発見して楽しむ」ということがなかなか起きません。さらに、繰り返しプレイが要求されるつくりになっているのですが(詳細は後述)、どのキャラクターを攻略する場合でも通る場所などはそう大きく変わるわけではないため、何度も同じイベントを繰り返し見ることになるので、2回目以降は非常にかったるくなってきます。

 町には何人かの人が立っていて、話しかけることが可能ですが、立っている人は決まっているうえ、会話のパターンも非常に限定的なものとなっています。さらに、ごく一部のケースを除けば、別に話しかけなくても展開にはまったく影響しないうえ、話すだけで時間が経過することもあって、これまた2回目以降はわざわざ話そうという気にもなりません。

 話が進行して、ヒロインたちの家の場所がわかっても、そこに入ることができないと言うのはいったいどういうことでしょうか。また、どんなにお金が貯まっても、フィアの宿に泊まることができないなど、移動画面上での不自然さが最後の最後までつきまといます。もう少し考えてほしかったものです。

 

 「ミュージックパート」では、楽譜を流れる音符を見ながら、キーボードで適切なタイミングで入力します。難易度別に3つのランクに分かれていますが、会社帰りで指先が疲れているときに毎日チマチマやる私には「easy」でも正直つらいものがありました。もっとも、フィアやサーリアなどを攻略する際には毎回失敗しまくっても痛くもかゆくもありませんし、クリアしないとそもそも先に進まない、ということもありません。やはり演奏に失敗するとあまり気分がよくはありません。

 もっとも、1回ゲームをクリアすると、2回目以降は自動演奏を選択することが可能となりますので、このパートが苦手という人は、ひとまず最後までプレイすれば大丈夫です。

 

 主人公は、滞在するための経費が必要となるので、いろいろな場所でアルバイトをすることになります。ただし時給が高くなると、それに比例して疲労する仕組みになっているので、体力を見据えて稼ぐことが必要になります。また、攻略対象キャラがいる場所で優先的にバイトするのがよいでしょう。また、川のほとりで作曲に取り組むこともできます。これをしばらく続けると、一定の期日がくると新しい曲を演奏できるようになります。特にラスティを攻略する場合には必須となります。

 結局、町の中での過ごし方が「どこでバイトするか」に集約されることになってしまうので、毎日がずいぶんと味気ないものになっています。

 

 攻略対象キャラクターは4人です。CGモードを確認したかぎりでは、これ以外の攻略対象キャラはいないようです。このうち1名を除き、それぞれエンディングフラグ方式が取られているようで、初回プレイの際にはトゥルーエンドには到達できないようになっています。

 各キャラクターごとの分岐は、おおむね好感度または特定パートでの選択肢によって決まるようです。好感度は、昼〜夜のアルバイト先で左右され、各ヒロインがいる場所でバイトをすると好感度が上がっていきます。このため、各ヒロインごとの攻略は基本的にオンリープレイで進めるのが無難なので、繰り返しプレイが要求されます。

 上記のとおり、イベントのバリエーションが乏しいため、繰り返しプレイはかなりつらいものがありますが、魔法店でトレカを買うことで間をつなぐことができます。このトレカは、エンディングまで到達してから再びやり直した場合、持ち越すことが可能です。しかし、話の筋とは何の関係もないパートで興味をひきとどめようという魂胆が見え見えなのはいただけません。

不具合・修正ファイル

 移動中に停止する、強制終了する、メニューが正常に表示されない、さらにはあるエンディングに到達するのがそもそも不可能(!)といった不具合があります。工画堂スタジオのサイトで公開されている修正ファイルをあらかじめ使うのがよいでしょう。セーブデータの互換性はありません。

 なお、従来ファイルに比べて発生するイベントなどが増える「DXファイル」も用意されています。こちらを使うと一部キャラクターの攻略条件がやや厳しくなります。こういう「中途半端な修正ファイル」を出されるのは、あまりいただけないのですが。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。CD-ROM1枚組で、初回限定版には上製本「天使の歌う小夜曲」(中には音楽CDが入っています)が同梱されています。必要なHDD容量は約730MBで、プレイ時にはCD-ROMは必要ありません。ただし、画面切り替え時に「Now Loading...」と出て数秒間待たされることが非常に多く、これがテンポを削いでいます。フルインストールしても待たされるというのはあまり感心できない仕様でしょう。

 画面はグラフィックが640×480全画面表示で、強制フルスクリーン表示となります。下部にメッセージウィンドウが表示され、右クリックメニューから設定が可能です。メッセージの読み返しやスキップも可能ですが、操作の大半はマウスで行います。

 セーブ&ロードは、移動画面でのみ、20個所まで可能です。逆にいえば、アドベンチャーパートではセーブできないため、移動シーンが出てこない終盤になるとセーブがまったくできなくなるのは辛かった。ゲーム中の日付とプレイ実日時が記録されますが、何度もプレイしているとどのルートなのかがさっぱりわからなくなります。

 ゲームを一度クリアすると、CGモードやBGMモードに入ることができます。CGモードはサムネイル表示されます。なおBGMモードには、挿入されるボーカル曲はなぜか入っていません。これとは別に「フリープレイモード」があり、ここで演奏の練習をすることが可能です。

サウンド

 サウンド担当は高野ふじお氏。BGMのバリエーションはかなり多いのですが、印象に残った曲はありませんでした。ボーカル曲も6つとかなり多いのですが、こちらはいい歌が多いですね。「この手を伸ばして」「羽根のブランケット」が個人的に好きです。

 音声は、女性陣が基本的にありですが、パートによっては音声なしというのがちょっと寂しいですね。

グラフィック

 原画担当は「成瀬ちさと」氏。ふわっとした感じのやさしい絵が魅力的です。ちょっと幼い感じの目がいいですね。立ちCGのバリエーションがなかなか豊富で、表情を変えるタイミングも非常にうまくいっています。ただし、一枚絵がお世辞にも多いとはいえず、このために寂しい感じがします。塗りは非常にていねいで、背景も美しくなっています。あと、どうでもいいことなのでしょうが……あの熊、ナニ(^^;

 移動画面ではクオータービュー表示されますが、もう少し背景のメリハリをきちんとつけてほしかったところです。また、アルバイト時の成功/失敗でチップキャラの動きが変わるのですが、これによって受け取る給料に変動があるわけでもないので、これはむしろ不要だったように思います。

お気に入り

 特にありませんが、あえて1人をあげるなら、フィアになりますね。数少ない、わかりやすいキャラですから。

総評

 主人公の行動パターンが「アルバイト/町の人と会話/フォルテールの練習/魔法店で買い物」に限定されており、シミュレーションの要素はほとんどありません。このため、シナリオをどう進めていくかが重要になってくるはずなのですが、肝心のイベントについては、質量ともに薄くなっています。各キャラクターの持ち味をいろいろな形でアピールするタイプのシナリオではなく、世界観をプレイヤーに提示するタイプのシナリオを出している以上、いかにして「世界に引き込むか」が大事であるはずなのですが、ここで失敗しています。

 バグを除けば致命的な欠点というものはないものの、アピールできる点もまた少なくなっています。個別のパートで見れば光る点があるにもかかわらず、それらのいずれもが単独でゲームの魅力には直結しておらず、なおかつ相互のバランスが崩れてしまった結果、凡作となっていると判断しています。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2002年6月10日
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