knot −絆の魔法− feng

2002年7月26日発売
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 見た目がポワーッとした感じのかわいい雰囲気のパッケージにひかれ、特に考えることもなく買ってしまったものの、その後なかなか怖くて手をつけることができなかったという、後から考えると、いろんな意味で「なんだかなぁ」というセリフが口をついて出てくるような、そんな作品でした。もっとも、女の子がかわいいといっても、みんな似たような顔をしているうえ、どっかほかのメーカーで見たようなタイプの絵だな、と思ってしまったのも確かなので、それ以外の部分についてどう踏み込んでいるのか、という多少の期待を込めていました。しかし…。

シナリオ

 主人公・浅倉鷹也(変更可能)は、「魔法研究会」に所属しながら部員不足に悩む幼なじみ2人組に懇願され、なし崩し的にサークルの部長になってしまう。さらに、ひょんなことから2人の後輩に出会い、彼女たちも入部することとなり、ひとまず廃部の危機を脱することに成功した。なぜか女の子ばかりの部員たちと楽しい学園生活を送る彼の周りで、ちょっとした変化が起きていった。「突然始まった不思議な魔法の毎日」を、主人公はどう受け止めるのだろうか。

 

 シナリオ担当は「はやかわゆずる」氏。

 「僕は、魔法使いに恋をする」というキャッチコピーがあり、主人公が恋をする「対象」が魔法使いであることがどう出てくるのか、という期待を抱かせるイントロとなっています。しかし実際には、ヒロインが「魔法使い」であることがあまり生かされていません。端的にいえば、別に「魔法を使えるキャラクター」である必要がほとんどない展開が非常に多く(某後輩は例外かな)、後半に数多く(しかも唐突に)出てくる超常現象こそが主要な仕掛けになっています。これなら、主人公が「部長」に仕立て上げられた状態で「魔法」の話は完全に打ち止めにして、あとはただの学園恋愛ものにしても問題なさそうな感じさえしますが、そうしなかったのは、ただ単に「それじゃ何の人目を引くこともないだろうから」という考えがベースにあったからに過ぎないのではないか、という気さえします。さらに、「部活」であることさえも、活用されているとはいいがたく、単に「顔を合わせることの口実」以上になり得ていない気がします。主人公以外の部員が全員女性であるという「不自然さ」はともかく、部員どうしのコミュニケーションがかなり中途半端である点は、ゲーム内世界であってもなお不自然です。

 

 個別のキャラクターも、お世辞にも立っているとは言いがたく、主人公との間で紡がれる「恋物語」としてみると、その動機も経過も不十分かつ不自然なことこのうえありません。ヒロインが抱えている悩みが、主人公が関わることによってしだいに解消されていき、その結果2人が結ばれるという、ある意味王道のパターンを取ってはいますが、ヒロインの抱えているものが後半になって唐突に出てくるものが多いため、どう見ても不自然な印象が否めません。ここで一応“魔法”が絡んではくるのですが、「どうして今になってこういう話になるの?」という気がどのシナリオでもほぼ同様に出てきます。

 キャラクター別のシナリオを見ても、王道的なシナリオのものはそれなりに安心してプレイできるので「かわいい女の子と話せるんだしそれでいっか」と割り切ればまだいいでしょう(別の某後輩がこのパターンか)。しかし設定の出し方や使い方がさっぱりわからず、ただただ目を点にして無言になったままキーボードをタンタンと叩き続けることになるものも多く、困ったものです。特に同級生3人+先輩のシナリオの場合、共通して出てくる「オブジェ」がどうしようもなく「物語のための設定」として丸裸のままデーンと出てくるため、口を開けながら説明をうかがいつつプレイするような状況になってしまいました。前半ののんびりした「日常的」なシーンとのギャップがある以上、それをフォローすることを意識した展開にしないと、プレイヤーが置いてきぼりになるのは目に見えていると思うのですが。

 

 そうすると、前半の個別のほのぼのシーンがけっこう楽しい…となればそれで良いのですが、これがまたオチがつかないままひとまずにぎやかに話しておしまい、というものが多く、本当に「日常の一部分を切り取っただけ」という感じがします。各キャラクターとのおしゃべりのやり方は悪くないと思いますが(個人的にもう勘弁してというタイプのキャラもいましたが)、もうちょっとていねいに書いてほしかったところ。

 また、前半部の中でも、攻略するつもりのないヒロインと話をする場合、事前の伏線がないまま突然新しい設定を出されて「えっ?」と思ったことがありました。全般的に、各イベントごとの整合性があまりうまく取れていないようです。

 

 さらに、後半部に配置されているHシーンも(キャラクターによって程度の差はありますが)強引なものが非常に多く、「なんでそこで脚おっ広げるんだい」「どうしてそこでヤるんだよ」とツッコミを入れることがたびたびでした。この種のゲームにおけるエロというものはバックグラウンドとなるシチュエーションが何よりも大事であるのに、そこがなおざりでは「本当はこういうのやりたくないんだけど…」とやっつけ仕事で押し込めたように思われてもしかたないでしょう。

ゲームデザイン

 前半でヒロインを選定し、後半が一本道となるタイプのアドベンチャーゲームです。

 前半部は、移動画面で女の子に出会い、好感度を上げていきます。画面中にはカラーアイコンが表示され、色ごとに各ヒロインと対応しているため、だれがどこにいるのかはしばらくプレイしているとすぐにわかるようになります。前半で攻略対象となるヒロインが絞り込まれ、後半になるとそのヒロインとのストーリーとなります。前半で同時攻略して後半に移るときに1人選ぶ、ということは難しいようです。

 難易度はかなり低い(「やや易」レベル)のですが、一部なかなか見るのが難しいイベントもあります。ただし、エンディングは各キャラクターごとに1つずつです。

 これは「シナリオ」ともかかわってきますが、前半パート各イベント間の連関が取れておらずそれぞれがぶつ切りになっている点はともかく(ほめられたものではありませんが)、それと後半パートとのつながりがほとんど感じられない点は、大きな問題です。それまで何度も顔を合わせて彼女たちの「素顔」を見たり、あるいは彼女たちが気を許したりといったプロセスを感じ取ることができないため、「お仕着せの物語」という雰囲気が濃厚になってしまいます。

 また、特に前半パートで、日付の変わり目がよくわからず、夕方のイベントが終わると次の瞬間翌朝になっているというのはいかがなものでしょうか。

不具合・修正ファイル

 少なからぬ問題点があるようです。fengのWebサイトから修正ファイルをダウンロードして適用してからプレイするのがよいでしょう。私は最新のパッチを当ててプレイしましたが、特に問題は発生していません。

デモ・体験版

 デモがfengのWebサイトで公開されています。女の子がかわいいな、という程度の印象であり、「魔法使い」のいる世界がどのようなものかというイメージはまったくわきません。この「まったくわかない」ところからさまざまに想像をたくましくしてしまうのが通常なのですが、なにも考えない方がいいと思います。

 体験版については確認していません。

操作性など

 対応OSは、マニュアルによると「Windows95/98/Me/NT 4.0/2000(ただし全てのサービスパックが適用されていること)」、fengのWebサイトによると「Windows95/98/Me/NT 4.0(SP6以降)/2000/XP」となっていますが、パッケージには対応OSに関する記述がありません。一応私のWindows98、Windows2000(SP2適用済・SP3未適用)およびWindowsXP(SP1未適用)でいずれも問題なく動作しましたが、パッケージに対応OSの説明のないゲームソフトというのはほかに記憶がありません。また公式の対応OSに食い違いがあるのは困りものです(マニュアルの方では、Windows2000の「サービスパック」が何を指すのか、SP2なのかSP3なのか時期的にも微妙なのでなおさら困ります。WindowsXPはサービスパック非適用が前提のはずです)。

 メディアはCD-ROM1枚で、初回限定版には別途音楽CDが付いています。インストール時に必要なHDD容量は約300MBで、インストールするとプレイ時にはCD-ROMが不要となる点はありがたいところです。薄々なマニュアルはそっけないことこのうえなく、キャラ紹介さえないのは寂しいですね。

 画面は、800×600ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替え可能で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。メッセージウィンドウの右側には、コンフィグ・文字送り・メッセージウィンドウ消去などの各メニューボタンが配置されています。メッセージ読み返し機能、メッセージスキップ(既読/未読の区別あり。「Ctrl」キーによる強制スキップも可能)など、操作性については一応問題ありません。

 セーブ&ロードは、移動選択画面以外の任意の個所で50まで可能です。

 CGモードは各キャラクターごとのサムネイル表示、Hシーン回想モードは各ヒロイン別、BGMモードは曲名選択方式と、ひととおりそろっています。

サウンド

 音楽担当は「clapscrap」「Tutti」「Tarao」「shiho」各氏。曲はPCMで再生されます。時間帯ごとに各BGMが設定されているようですが、曲とシーンの雰囲気とがあまり合っていないことが多く、かなりげんなりしました。曲単体で聴くと決して悪いものではないのですが、特に日常のほのぼのとしたシーンで、多少のズレを感じさせるものになっています。

 ボーカル曲もあり、唄は佐藤裕美氏。軽いテンポの曲で、特筆するべきほどのものではありませんが、まずまず良い雰囲気だと思います。

 音声つきではありますが「パートボイス」となっているため、ついさっきまで黙っていたのに、シーンが変わると突然話し出したりするので、非常に違和感があります。もう少しスマートにしてほしかったものですが。演技以前の段階で白けたことがけっこうありました。

グラフィック

 原画担当は「神無月ねむ」氏。女の子の表情の変化がなかなかよく出ていていいのですが、服装が極度にデフォルメ化されており、異様なことこのうえありません。某後輩のリボンを筆頭に、どのキャラも腰の後ろにでっかい溜め(笑)を作っているのはあまりにも妙です。どうせ登場人物は2けたにもならない少数である以上、こういうけったいな格好で統一させる必要はなかったと思うのですけれど。

 背景もひどいもので、特に商店街など、消失点の置き場があまりにも変なので、キャラクターと会話をしていると空間感覚がおかしくなってくる気がしました(誇張抜きで)。このほかにも、背景画像のパターンが非常に少なく、校門前に移動しても背景は廊下だったり、昼間なのに唐突にバックが黒になったりというケースがありました。

お気に入り

 あえてキャラクター1人を選ぶのであれば、小姫でしょうか。Hシーンへの導入が都合良すぎ(ご都合主義というのではなく、流れが「男の側から見て」うまくいきすぎ)という難点がありますが、主人公に惚れたことがいちばんナチュラルに書けていますから。これに次ぐのが鈴香でしょう。

 シーンとしては、小姫と鈴香のアハハ〜ンなシーン(^^;

総評

 キャラクターをかわいく描く、ということを第一にしたというのが明確に見えるゲームです。それはそれでいいのですが、クライマックスへの展開があまりにも急でプレイヤーがついていけないこと、日常のほのぼのシーンとの隔絶が大きすぎて前半部の意義が感じられないこと、日常シーンにしてもかなりはしょり気味で物足りなさが残ることなど、細かい点やら細かくない点やら、いろいろと粗が目に付きます。

 「魔法使い」という題材に手を加えるまえの段階で、足回りをキチンと固めて「ストーリー」を作ってほしいものです。「ストーリー」の「意味」を無化することが主題というタイプのゲームではないのは明白なのですから。

 もっとも、中途半端な点が多々あるとはいえ、日常シーンの「落ち着いた雰囲気」を作ることには一定程度成功していると思うので、もう少し腰を据えて、日常と「コントラストによって浮き上がる非日常」を感じられるようなものを、次回作として期待したいと思います。

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
2002年10月1日
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