Memories Off 2nd KID

2002年12月13日発売
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 KIDの『Memories Off』は、各シナリオ間でのバラツキの大きさという大きな難点を抱えながらも、シナリオによってはかなりの魅力を持っているゲームでした。主人公を軸として世界が動くタイプの展開については見どころがほとんどなかったというのが最大の難点でしたが、ヒロインの動かしかたという点で光っていました。

 その後継作である『Memories Off 2nd』も、前作と同様にコンシューマー版として開発され(PS/DC、2001年9月27日発売)その後Windows版に移植されたものです。私は家庭用ゲーム機を持っていないため、必然的にWindows版を待ってプレイすることになりました。なおこのWindows版は、イベントおよび通信販売のみとなっており、一般店頭販売は行われていません。

 事前情報として「スタートから恋人がいてほかのキャラに乗り換える」「痛いシーンが多い」といった評判を耳にしていましたが、その種のゲームはけっこう出ていること、そして前作をプレイ済みだったこともあって、心理描写を突飛な行動でカバーしたりしなければそこそこのものなのではないか、と期待してプレイしました。実際にプレイしてうんざりしたのが「健ちゃん」「健くん」「健さん」を連呼されたこと(^^; いや、仕方ないんですけどね。

 プレイ途中に抱いた感想として、あわせて「戯れ言」の2002年12月15日のぶんもご覧いただければ幸いです。

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ・ゲームデザイン

 主人公・伊波健(変更不可)は、同級生でピアノが得意な「白河ほたる」と付き合っている高校3年生。しかし彼は、サッカー部を引退して何をするともなく過ごしていた。夏休みに入ったころ、あるできごとをきっかけに、ほたるとの関係を疑い始める主人公。それと歩調を合わせるかのように、一緒にいたいと思える女性が出現する。ぎくしゃくしたほたるとやり直すのか、あるいは新しい思いを実らせるのか。

 

 シナリオ担当は、「打越鋼太郎」「三浦洋晃」「日暮茶房」「館山緑」「佐々木智広」「西川真音」「中澤工」「笹成稀多郎」各氏。

 ヒロインごとにシナリオが分岐していくタイプのアドベンチャーゲームで、大きく6つのシナリオからなります。また、各シナリオはそれぞれイベントユニットの集まりとして構成されているので、日々のスケジュールを逐一追っていくという感覚はありません。一応日付が変わるとそのたびに日付表示のページが挿入されますが、流れによっては日付が表示されなくなります(笑) また、各イベントが始まるたびに、イベント名がウィンドウ右上に表示されます。

 

 まず第一に、シナリオの不整合が非常に気にかかります。各シナリオ間で設定や展開、伏線がかなりずれているため、それぞれを比較するとワケがわからなくなるのですが、これは各ヒロインごとのルートが完全に独立しているものと考えれば説明はつきます(プレイヤーに無用の混乱を起こさせやすいので、あまり望ましくはないのですが)。しかし単一シナリオ内部のターニングポイントにおいて「ちょっと待て!」と思わず言わせるような矛盾があっては、テンションが一気に下がってしまいます。

 具体的には、ほたるに何度も電話をしたり(携帯電話どうしなので着信履歴が記録されると明記されています)メールを送ったりしてもなしのつぶて、数日後にいつだって電話してくれてよかったのにメールだって、ちゃんとくれれば良かったのに(ほたるのセリフをそのまま引用。日本語が妙ですがそれはさておき)と語らせても、滑稽さが浮き上がってしまい、「ここで悲劇を演出しているんだな」ということが鼻について仕方なくなります。これはキャラの行動うんぬんではなく、純粋にシナリオのチェックミスというレベルの話です。

 

 「別れ」が悲劇をうむ、というのがこのゲームシナリオの大きな要素となっているのですが、これを描写するための登場人物の行動があまりにも稚拙なので、悲劇というより、場合によっては喜劇にさえ見えてしまうケースがあります。特に、クライマックスからエンディングに至る「仕掛け」にずさんなものが多いのが困ったものです。

 主人公の行動を見た場合、ほたるのピアノコンクール決勝の結果と、その後のほたるの行動との因果関係を把握しているにもかかわらず、前者に対するアクションが極めて乏しく、後者に対しても事前にあれこれ思うことこそあれその瞬間には何らのアクションも起こしていません。もちろん「アクションを起こさない」ことそのものも「行動の選択肢の1つ」ではあるのですが、それが彼の“判断”の結果である描写はまったくなく、事後に事実を回想しているのみです。これは、クライマックス描写を欠落させているという以前に、ハッピーエンディングで主人公が胸をときめかせるために必要な最低の条件を満足させていないといえます。物理的な「別れ」に対して諦めてしまうことを前提としていたのでは、ほどない再会があっても、ふーん帰ってきたの、で終わってしまいます。逆にこれなくしてエンディングで大仰に(しかも、学校全体をギャラリーとした、これ以上ないほどのアピールを伴って)ハッピーさを掲げても、白々しいだけです。私は、これをエンディングと認識できないまま「………オチは?」と固まってしまいました。

 また別のシナリオでも、中盤での「いい雰囲気作り」(主人公とヒロインとが“大人の関係”になると容易に予想させるイベントあり)から終盤への流れが滅茶苦茶で、冷水を浴びせられた思いを抱きました。

 

 また、「別れ」への伏線のうち、メインヒロインである「ほたる」側で貼られたものについても、どうにも腑に落ちない点が数多くありますが、最も大きいポイントは次の2つでしょう。

 まず、コンクール決勝直後の予定については、ほたるは少なくともゲーム開始時点で知っていたにもかかわらず、どのルートにおいても直前までそれを伏していること。言葉を換えれば、最初から「言い出せない」ことを直前まで「打ち明けられていない」わけです。その直接の「結果」の責を負うのは、主人公ではなくほたるであるはずなのですが、これについてほたるが主体的にケリを付けているところは皆無です。決勝直後の「権利」を行使しないという選択を取ることも彼女は可能だったはずですが、そういう展開は1つもありません。

 さらに、彼女が深刻な表情でピアノに対する障害を告白する個所での行動の軽率さ。そのあまりにも稚拙な狂言がバレるのは時間の問題という程度のシロモノだったのですが、その後(ほたるのことを本当に心配していた)主人公がいぶかしむのは当然です。おまけに、伏線としてほたるが嘘は必ずバレるんじゃなくて……バレたから、嘘って言うんだよなどと言っているのでは、救いようがありません。これと上記の「隠蔽」とを重ね合わせれば、主人公の「不審」が「不信感」に、そして疑心暗鬼にと転落していくのはむしろ自然です。ほたるの性格がどうのこうの以前に、表に出た行動を受け止めれば自業自得になります。こんな描写を「悲劇のヒロイン」に課すことによって失われたものは、相当大きいはずです。

 さらに加えれば、ほたるの「身の引き方」が素早い点も、合点がいきません。別に刃物をかざして「健ちゃんを殺して私も…」と叫ばせる必要はないですが、主人公に遠慮しているというよりはむしろ自己完結して「痛み」が広がらないうちに自己防衛に走っていると判断できるケースのほうが多くなっています。これは「物わかりのよさ」とはいいません。

 結局、中途半端に「いいコ」にしようとして失敗した“ヒロイン”がほたるという存在なのだろう、と考えています。

 

 これとは別に、主人公側で「ほたるとのつき合い」に対する主人公の言動は、その発言内容を直接取り上げて考えると支離滅裂なのですが、実際には非合理な心理の表れに過ぎません。例えばほたるシナリオにおいて、彼はほたると「惰性で付き合っていた」と語っていますが、これは、そのとき(現状)の感情を合理化するための「理由付け」でしょう。恋愛感情において、それが本気だったか否かを叫ぶ(対象が自分である場合も含む)内容を吟味しても意味はないのであって、むしろそれを叫んでいるときにどう思っているかのほうが重要です(第三者から見れば、ベタベタなバカップルそのものだったと推測されますが(^^;)。主人公のこの独白は、もともとほたるのほうが万事積極的であった(この点は状況証拠が大量にありそうです)こともあって、彼がそう納得することに抵抗がなかったということを示しているともいえます。これは、嘘に嘘を重ねるような「未来に対する臆病心」に基づくほたるの“芝居”とは明らかに異なります。

 

 さらに、主人公とヒロインとの間の恋物語としてみた場合、もともとほたるとのつき合いの深い2名を除けば、主人公とほたるとのそれまでの関係がほとんど意味のないものに過ぎず、単に主人公が(ほたるとの縁が切れそうなので)タイミングよく乗り換えておしまい、という展開になっている点も問題です。主人公とほたるとの関係を具体的かつ詳細に描写する必要があったとは思いませんし、両者の関係がほつれつつあったことを示せば「ストーリーの流れ」として見れば大きな問題はないのですが、序盤で「付き合っていた2人」の意味が極めて小さいとなると、シナリオの結末としてのエンディングがごく軽いものに収まってしまうのは当然です。

 結果として、これらのエンディングではほたるの影がなくなってスッキリサッパリ気持ちよく終わるわけです。彩花のことを「忘れずに」各ヒロインとのエンディングに到達する前作に比べ、印象が数段浅いものになり余韻を残さないものになっている根本的な原因はここにあります。

 

 実際に「ほたると別れる過程」(結果ではない)を組み込んでいる2シナリオにしても、その一方はヒロインの行動が「主人公に対する姿勢」のみで説明されているためになし崩しのもたれ合い好きになる理由を言葉で説明することなどできないという殺し文句で逃げ切っているだけであり、語るほどのものは何もありません。

 もう一方が、唯一この流れでまっとうなシナリオになっていますが、表層と内実との心理が異なることを暗黙のうちに了解しながら、その表層どうしでしかコミュニケーションを取らない主人公とヒロインとの関係は、なかなか微妙なものがあっておもしろかった。ほたるが介入した修羅場の描写もさることながら、彼女抜きに楽しくやっているように見えつつ、自分で自分の首を真綿で絞めていくさまは秀逸です。また“弱さ”を開き直って正当化したり、逆にそれを全否定したりといった醜悪な描写を用いず、いわば「刹那的な真摯さ」を積み重ねていった先にエンディングが用意されている(ハッピーとノーマル)という点も評価できます。

 

 主人公の心理描写については、やはり「観念先行」の匂いが拭えません。これは、必ず通ることになっているほたるとの共通イベントの中で「愛」がどうのといった話をする中で、何らかの形で「明確な答え」を用意“させ”、その言葉に縛られていくわけですけれど、その呪縛も所詮は「コトバ」が先にありきで、重みがまったくありません。肉体的な呪縛(「物理的な」ではない)をスタートラインに持ってきた前作に比べて「作り物としての“乗り換え”」というイメージが浮かびやすくなった原因の1つは、ここにあるのでしょう。

 また自省的といえば聞こえはいいものの実態は自虐的といえるシナリオなど、ヒロインに対して自己分析を行わせる(ヒロインの「自信のなさ」をヒロインの口から「自発的に」語らせる)ことで「客観的な説明を付与」させてしまっています。このために、主人公の思考そのものも「座標軸を措定し得ず、したがって一意な方向を見出せない」ことを固定化する方向に働いているように見えますが、これはうがった見方でしょうか。ちなみにこの様子を見ていると、前作の主人公がバッドエンドを迎えるとこんなんだぞ、と示しているように見えたのですが、考えすぎでしょうか。この総合トゥルーエンドは無理に「ハッピー」につなげたように見え、蛇足と思うのですけれどね。

 また、行動する際の迷いかたなどをみると、どうも高校3年生という年齢とは思えない判断尺度を縷々持ち出す点も疑問が残ります。

 

 ほたる以外のキャラクターは、無愛想で詩的な表現を用いる臨時講師、バイト先のやや幼げで体の弱い同僚、態度がそっけない体育会系娘、ほたるの姉(単純(^^;)、ファミレスの客(おぃ(^^;;;)と、ひととおり揃っていますが、キャラクターに付された「記号」に肉付けされたタイプのシナリオとは限りません。正確には、キャラの活用方法そのものも、シナリオごとにバラバラなので、全体をまとめることはできません(無理にやってもあまり意味ないでしょう)。

 

 シナリオとは直接関係しないのですが、ストーリー叙述のムラが随所に見受けられます。オルゴールの作り方を仰々しく解説する必要があったとは思えませんし、前作に出てきた意味不明なフレーズを今さら掘り返す必要はないでしょう。

不具合・修正ファイル

 スキップしていても途中で止まってしまうところがありました。既読/未読の区別が可能なのですが、すでに読んでいる特定の個所で止まってしまいます(再現性あり)。2002年12月15日現在、修正ファイルは公開されていません。

デモ・体験版

 ありそうな感じもするのですが、存在を確認してはいません。なお、ゲームのオープニングにムービーが使われています。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。CD-ROM2枚組となっており、フルインストール時に必要なHDD容量は約950MBで、プレイ時にはCD-ROMは必要ありません。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示とを切り替えられます。下部にメッセージウィンドウが表示され、透明度や色を変えることが可能です。メッセージスキップ(既読/未読の区別あり)と文字速度調整、テキスト読み返し機能などが装備されています。また、メッセージ表示と音声との同期/非同期を設定することもできます。

 ゲームを起動すると「起動メニュー」が表示され、DirectSoundの使用/非使用(非使用時はSE/BGMが鳴らない)、起動画面モード切り替え、MMXコード使用/非使用、CPUパワーに応じたエフェクト設定を変更できます。CPUは「High」(クロック周波数800MHz以上)/「Middle」(同300MHz以上)/「Low」から切り替えます(私は「High」にてプレイ)。

 セーブ&ロードは、任意の個所で5個所までクイックセーブ&クイックロードが可能です(ゲーム中のイベント名が表示されます)。これとは別に、キーボードのみで可能なセーブ&ロードが65個所まで可能で、ゲーム中の日付とセーブ時の実日時のほか、それまでに登場したキャラクターのスタンプを記録でき、またゲーム中のイベント名も自動的に記録されます。さらに、各選択肢ごとにオートセーブ&オートロードが行われるため、選択肢を変えてリトライすることも容易です。このため、リプレイを繰り返してもとまどうことはまずないでしょう。

 トップメニューからは「Special」に入ることができ、「Album」(ヒロイン別のCGモード。サムネイル表示)、「Short Cut」(中心となるイベントシーンの直前からリプレイ可能)、「Append Story」(おまけシナリオ)、「Music」(BGMモード。曲名選択方式)の各モードに入れます。

 これらの操作の大半は、キーボードとマウスの双方で可能です。実際のプレイ時にはほとんどストレスを感じることはなく、またリプレイがまったく苦にならない仕様となっています。

サウンド

 サウンド担当は「阿保剛」氏で、PCM再生されます。BGMのバリエーションは割と多めで、ベートーヴェンやリストなどのピアノソロを多用するなど選曲になかなか凝っています。しかし圧縮方法のせいでしょうか、音質がお世辞にもよいとはいえません。ボーカル曲も2つ入っていますが、中身はノーコメント。しかし、BGMよりもセミの鳴き声などの効果音が巧みに使われていたのが印象的です。ミンミンゼミとツクツクホウシとヒグラシとを使い分けるなど、なかなか凝っています。

 音声は、主人公以外フルボイスです。演技はまずまず。

グラフィック

 キャラクターデザイン担当は「ささきむつみ」氏。髪の毛がみな黒色または茶色で統一されていたのが新鮮に感じられました。

 背景画像はなかなかきれいに仕上がっています。しかし、上記のとおりヒロインの髪の色が渋いうえ、木造建造物が多いため、ヒロインの髪が背景に埋没することが多かったのですが、これはしかたがないかな。また、イベントCGをシナリオの中で用いる“場面”にズレを感じたシーンが少なからずありました。具体的には、鷹乃がプールに飛び込むところ。飛び込むシーンより、プールの中でずぶ濡れになっているシーンのほうがよほどインパクトがあったでしょうに。まさか「服を着たまま水に濡れているシーンは描くのに時間がかかる」なんてことはないと信じたいのですが。

お気に入り

 特にありません。そもそも、ある特定のヒロインに対して思い入れを抱き、それを軸に心理や行動を追う気にはとうていなれませんでした。

総評

 もともと「Memories Off」という言葉が何を意味するのか私にはわかりませんが、単に「Memories」を「Off」にするというのが主要なモチーフであるのなら、本作はOffにする必要のないMemoriesを強引に作ってしまい、その除去作業といううざったいものをプレイヤーに押しつけるという「作為性」を濃厚に残しているといえます。「別れ」を演出するために作られた恋人との「関係」など、その恋人の性格がいかなるものであろうと、皮相的ではあっても悲壮なものにはなり得ません。主人公とヒロインという「2人」の作る物語としては、前作の持っていた輝きにとうてい及びません。このシナリオを受容できるとすれば、それが「悲劇のヒロイン」への同情心に依拠せざるを得ないことは明らかで、そこに「今後の関係」を作り出す素材は含まれません。

 さらに、キャラクターを「用いて」恋着の様態を子細に描写する必要などありません。求められるのは、キャラクターに「演じさせて」主張だの設定だのというものを想起させない描写でしょう。前作のみなもシナリオは、突然変異的に生じたものだったとは思えないだけに、展開を説明の道具に終始させる方法に逆戻りしてしまったのは悲しいかぎりです。

 ストーリーの組み方、「演者」の使い方の両面において、前作の力に比べて大きく後退していると評しておきます。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2002年12月16日
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