ネジレ えん

2002年10月4日発売
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 前作『夕闇の童詩』で、暖かさと切なさを伝えてくれる独特の雰囲気が大いに気に入ったこともあって、注目していたのがこの『ネジレ』でした。さっそく発売直後に購入したものの、イントロ部分のテキスト描写が突飛であるうえ、キャラクターの行動原理に一貫性がなかったり、メイン以外のヒロインがどいつもこいつもバカっぽく見えたり(苦笑)したため、しばらく放置していたというしだい。そういつまでも積んでおくわけにもいかない、と“消化”したのですが、盛り上がることは最後までなく(これはある程度予測していました)、さらにプレイ後にほとんど余韻を感じることもありませんでした。

シナリオ

 主人公・虹川捻(変更不可)は、湯煙学園の男子寮に住む学生。オカルトマニアでほとんど友人のいない彼のもとに、「ネジレ調査機関」の捜査官と名乗る「玉虫夕鶴」なる女性がやってきた。「ネジレ」は、世界に存在する未知なる力であるが、それは人の悩みや不安が原因でさまざまな怪奇現象を起こすという。1か月の期限内にすべての「ネジレ」を解決しないと、主人公を含めて「ネジレ」を持つ者全員が殺されることになる、と夕鶴は言う。しかし主人公は、期限やら何やらといったことに何も気を取られることなく、ひたすらオカルト的な話題に興味を向けていく。彼は、どのような「ネジレ」を見いだすのだろうか。

 

 シナリオ担当は、田中蛙氏。

 前作とは異なり、いきなり突拍子もない前提から話が始まるので面食らいます。ただしこれ自体は、詳細を後回しにしているに過ぎないのであって、キャラクターをうまく用いてストーリーを作り上げていくための前提としていると考えれば問題ありません。

 しかし、かんじんのキャラクターそのものが、プレイヤーを引きつけるだけの魅力を持っていないのが実情です。

 

 まず最初に、主人公が行動する基準がよくわかりません。「ネジレ」なる超常現象に対して興味を抱くのはいいとして、自分がそれにかかわること以上のことを何も考えていないのは、彼が単に「近視眼的な行動しか取れない」ことを説明づけるものといえますが、そこから話を広げていく際に、彼の視野が広がっていった点については、ほとんど記述がないのです。この結果、彼の興味対象がどのように変化しているのか、その結果彼が得ている情報の意味がどう動いていったのかが伝わってきません。世界がどうにかなるといったスケールの大きい話に対してあまりにも鈍感な姿勢を最後まで崩さず、それに対する焦燥感がほとんど感じられません。

 

 また、主人公がヒロインに対して抱く気持ちが変わっていく流れ、すなわち「調査対象」から「恋愛対象」へと変化していく過程がほとんど描かれていません。いやそれだけでなく、「ネジレ」を各ヒロインが持っているかどうかを「調査」するはずだったのが、いつのまにかそれが「解決」へと飛躍しているため、不自然さがぬぐえません。自分の行動に対して客観的に見るでもなく、逆にひたすら問題の解決に邁進するでもなく、いわば“取りあえず興味を持った”ことから惰性で続けているようにしか見えないため、主人公の動きが非常に力の弱いものとなっています。このゲームのストーリー展開は、あくまでも“主人公の眼をとおした世界の変化/動き”に基づいている(主観的な世界をベースとした叙述になっている)以上、心情描写の弱さは致命的です。

 

 個別のヒロインキャラのストーリーについても、それを解決しても「ネジレ」の正体が“1つ”明らかになり、そして解決できたというに過ぎないのに、それでエンディングにしてしまっている点も納得できません。もちろん、各ヒロインごとのエンディングは、単なる「全体を構成するための柱の1つ」に過ぎないのですけれど、それを終えた時点では「それ以降につながる」ことを示唆するスタイルを取っておらず完結したものとして扱われている以上、「ほかのパートがあからさまに置いてきぼり」というのはよろしくないでしょう。

 その一方で、各ヒロインキャラの挙動に対し、それぞれに不審な点をうまく織り込んでいるため、彼女たちがどのような秘密を抱えているのか、それを探ろうとさせる点では、なかなかうまくいっています。シナリオライターの力量のなせるわざでしょうが、謎の提示のテンポは速すぎず遅すぎず、非常にいいものと思います。話のもっていきかたにかなり強引と思えるところが多かったり、生活感のかけらもない“空間”が日常的なものとして扱われたりする点は、プレイの当初はかなり違和感を覚えさせるものですが、話が進んでいくと、むしろこちらのほうが自然だと思えるようになります。

 Hシーンは、特にバッドエンドルートのそれがあまりにもパターン化していてつまらないうえ、ハッピーエンドルートのそれも見ていてあまりうれしくありません。ストーリーの流れからすると、Hシーンが入ること自体は不自然ではないのでしょうが、そこまでの人間関係なり心情なりの盛り上がりが全般的に欠けているんですね。

ゲームデザイン

 5人のヒロインキャラ(うち1人はほかのヒロインを一度攻略してから出てきます)と会話をしてキーワードを集め、夕鶴と相談する際に適切なキーワードを用いていくものです。5人全員をクリアすると、トゥルーシナリオといえる展開になります(選択肢はまったくありません)。

 具体的には、昼間は学園で行き先を選択してヒロインキャラと会話し、キーワードを集めます。1日に行動できる回数には限りがありますが、複数人と接触することもできます。ヒロインが登場する場所はある程度決まっているうえ、行き先は6か所しかないので、特に迷うこともないでしょう。ただし登場パターンはランダムです。会話パターンは各キャラクターごとに2つあるので、キーワードを要領よく集める場合には、会話パターンに注意が必要です。キーワードは、会話中に黄色で表示されますが、マウスを連打しているとついついとばしがちです。

 なお、ある程度会話が進んだキャラに対しては、ランダムでイベントが発生することがあります。

 夜は「寝る」「夕鶴と相談」「手帳を見る」の各コマンドから選択しますが、「手帳を見る」はハッキリいって意味ありません。「夕鶴と相談」することによって、各キャラから集めたキーワードを的確につなぎあわせます。相談がうまくいくと「捜査進度」が1つ上がり(最初は0)、進度が4になった時点で「ネジレ」を特定します。

 「ネジレ」を正しく特定すればそのヒロインとのハッピーエンドになり、まちがえればそのヒロインとのバッドエンドになります。また期限が1か月となっており、この期日までにエンディングを迎えないと汎用バッドエンドとなります。なお、「ネジレ」を特定した時点で、ほかのキャラクターとの同時攻略はできなくなるので、同時攻略をする場合は、進度4でキーワードを集める段階でいったん止めるのがいいでしょう。

 どのようなエンディングを迎えても最後にセーブ画面が出るので、ここできちんとセーブしておきましょう。いったんタイトル画面に戻るので、「続きから」を選び、セーブしたデータをロードすると、それまでの操作段階が保全された状態で最初から始まります。クリアするたびに最初からプレイしていると、いつまでたっても話の本筋にたどりつくことはできません。

 かなり繰り返しが多くなること、また会話パターンで選択肢を変えても(好感度などの要素がないため)矛盾がそのまま流れてしまうことなどのために、かえって会話の内容が印象に残りにくくなる嫌いがあります。手法としてはおもしろいのですが、集めるキーワードの使い方にもう一工夫がほしかったところです。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、特に不具合は発生していません。

デモ・体験版

 デモがえんのWebサイトで公開されています。

 体験版については確認していません。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。

 メディアはCD-ROM2枚組で、インストール時に必要なHDD容量は約570MBです。インストール後、プレイ時にはCD-ROMなしでもプレイが可能ですが、この場合はBGMが鳴りません(CD-DA再生です)。

 画面サイズは800×600で、強制フルスクリーン表示となります。下部に半透明のメッセージウィンドウが表示され、その右側には各種メニューボタンが配置されていますが、どうにも使い勝手がよくありません。メッセージ読み返し機能、メッセージスキップ(既読/未読の区別なし)なども備わってはいますが、これもスキップオフがうまくいかなかったりするなど、どうにも中途半端です。また、キーボード操作がいっさいできないうえ、マウスクリックを重ねると、必要なキーワードを簡単にとばしてしまうことが多いのは大きなマイナスです。

 セーブは、選択画面および各キャラのエンディング付近以外の任意の個所で、**まで可能です。もう少し数が多くてもいいように思いますが、「ゲームデザイン」で記したとおり「ひたすら突き進む」タイプの展開なので、この程度で十分です。

 CGモードはサムネイル表示で、またイベントシーン回想モードは(Hシーン以外も含めて)シーン名を選択するようになっています(これを全部クリアするのは非常にたいへんです)。BGMモードは曲名選択方式となっています。

サウンド

 音楽担当はSETZER氏。曲はCD-DAで再生されます。個別の曲はかなり水準が高いものとは思いますが、シーンとBGMとのミスマッチを感じることが多々ありました。各ヒロインごとの曲など、ヒロインの色づけを的確に反映しているとも言えないものがあり、また日常シーンの妙に脳天気な雰囲気も、やや違和感があります。

 ボーカル曲もあり、唄はかわしまりの氏。ただし、どうにも印象に残りませんでした。

 ヒロインキャラがフルボイスとなっていて、演技はまずまずですが、このゲームには音声はいらなかったのでは。各キャラクターの心理描写を明確にするタイプのゲームではなく、また萌えを喚起するゲームでもなく、むしろストーリーのなかで出されるものを“積み重ね”ていくものである以上、音声によるイメージは、テキストが直接プレイヤーに伝えるイメージを改変させるマイナス面がどうしても出てしまいます。

グラフィック

 原画担当はゆうろ氏。表情の変化が大きいのはよしとしても、暖色系のカラーリングを多用しているにもかかわらず、どうにも立体感に欠けるため、なんだか生気がないように見えるのは私だけでしょうか。

 ときどき、名前なき脇役が出てきますが、彼ら/彼女らの目がまったく描かれていないないのは、違和感を通り越して不気味に思えます。また、学園ものということもあって登場人物は制服ばかりなのですが、この制服がなぜか浴衣をアレンジしたと思われる和服です。しかもその姿で校庭やら屋上やらをうろついているのですが、寒さ真っ盛りの12月にあんなかっこうしていたら一発で風邪を引く連中が続出すると思うのですけれど。これまた、楽しい以前に不自然そのものですが、このあたりはネジレのせいだの一言で片づけてしまうべきなのでしょうか。。

 あと、背景があまりパッとしない印象があります。ていねいに描かれているのはわかるのですけれど。

お気に入り

 特に気に入ったキャラはいません。特に印象に残ったシーンもありませんし。

総評

 シナリオを組み上げていくデザインはなかなかおもしろく、また個別のヒロインからキーワードを探し出していく点も興味深いものがありました。その一方で、登場しているキャラクターたちの心理変化の描写がほとんどなく、把握した情報そのものは理解できても、その情報のベースとなる世界観(世界の見え方、受け止め方)がプレイヤーに伝わってこないため、ゲーム世界が(悪い意味で)淡々とした流れのままに進んでしまっています。

 結局、前作『夕闇の童詩』とは異なり、シナリオの組み方そのものが先に走ってしまい、プレイヤーがそれを追いかける展開となってしまい、この両者を媒介するはずの主人公およびヒロインが、実際にはほとんど動くことがなかったのが致命的でしょう。

 なお、前作のレビューでこのブランド「えん」は、このゲーム専用の単発名なのでしょうかねと書きましたが、このゲームでも最後に「えん」につながっています。そうすると次回作以降も、最終的に「えん」に収斂していくシナリオを出してくるのでしょうか。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2003年2月10日
Mail to:Ken
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