re-laive Klein

2002年11月8日発売
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 新ブランドの処女作ということでチェックはしていたものの、Webで公開されていた体験版をプレイして先行きに不安を感じて回避した作品です。それでもあえてプレイしたのは、単に1,000円を切るという価格で投げ売りされていたのを見て、グラフィックは悪くなさそうだという理由で買っただけだったりするのです。

シナリオ

あらすじ

 シナリオ担当は、大和環氏。

 主人公・芳野高志は、親元を離れて学園に通う2年生。新年度を迎えようとしていた矢先、1年違いの幼なじみである佐伯こずえが高志と同じ学園に通うことになった。やりたいことが見つからないまま漫然と1年を過ごしてきた彼の生活が、いま大きく変わろうとしていた。

延々たる留保

 主人公は、学園に通うようになったこずえから好きだという告白を受けたあと、ろくな返事をせずにその場を離れます。こういう場面で返事をしない主人公の心境については、一応理解はできます(納得いかん、というほうが素直な反応ではあるとも思いますけれど)。

 しかし問題は、この後返事の留保をこずえに伝えてからも、延々と1か月近く返事をしないで済ませている点にあります。しかも展開によっては、ほかの娘とHしてから、こずえを遊園地へとデートに誘い、しかるのちに「幼なじみ以上には思えない」とのたまったりします。サブキャラはやり逃げも可能だったりするのですが、この段階でも返事をせず、あまつさえ「ほかに好きなコがいる」といったハッキリした返答はしないで、ただ断っているだけです。

 さらに、ヒロインであるこずえも、いわば唯々諾々と主人公の発言を受け止めてしまっているため、主人公の無理が通って道理が引っ込んでいます。こずえが“健気ないいコ”という役割を担っているのはわかるのですが、ひたすら主人公の無理に合わせている結果、むしろ“主人公=プレイヤーにとって都合のいい娘”にしかすぎなくなっているため、こずえというキャラじたいはかわいいものの、作り物っぽいキャラクターという印象がぬぐえません。

ホントに悩んでるのか

 また、主人公サイドから見ても、大きな問題があります。悩んでいたのは最初の数日で、そのうちに平和な学園生活をのんべんだらりと満喫しています。こずえとそれらしい雰囲気になったときだけ、思い出したように悩むそぶりを見せるのですが、私には安パイをつなぎとめておくための演技にしか見えません。

 そこまで悪意的に見ずとも、こずえの告白は簡単に断れるのに、ほかのサブヒロインからの誘惑はすべてあっさり受け入れ、なおかつその後に動揺しない時点で、主人公の性格うんぬんを論じるまでもなく“悩んでいる”という表現が絶対的に不適当だと断じることができます。もちろん、サブヒロインの側は主人公のことが本当に好きになっていても、主人公がそう受け止めていないのは無理があります。

 ちなみにこの主人公、某サブヒロインとのデート中に、こんなことを言っております。

オレたちは、セックスしてしまったのに……別にお互いの気持ちを確認したわけでもなかった

……コイツ、殴っていいですか?

やりたいことって、見つかったの?

 主人公は、中学時代は陸上の都大会で優勝したという実績を持っていたが、頂点に立つとやることがないからという(少なくとも表向きの)理由でレベルの高い学園に進学したものの、実際にはやりたいことに気づかないまま1年を過ごしてしまった、という設定になっています。これを裏付けるように、足の速い後輩が出てきたり(女性ですが攻略対象外)、先輩から生徒会長に推薦されたりといった細かいネタがでています。

 しかし、これら伏線と思われるネタはまったく使われず、ヒロインとくっついたらそれで話が終わっています。やりたいことを見つけるどころか、“やりたいこと”の候補さえも立候補する出番がないままでは、エンディングを迎えてもちっとも気持ちよくありません。こずえルートの場合は、こずえとの関係で悶々としていたのが吹っ切れた、めでたしめでたしでよい(……かなぁ?)とすることも可能でしょうが、ほかの場合はそれさえありません。私は、主人公が落ち込むような流れもあるだろうと思い、あえて八方美人パターンで進めてみましたが、どうやらバッドエンドは存在しない模様です。主人公は悩みを放棄することで幸せにいたった、ということなのでしょうか。

こずえの存在意義って…

 このゲームは、こずえが告白してからが本編となります。そこまでの分岐はありません。

 ところが、ほかのヒロイン4人は、全員こずえと面識があるにもかかわらず、こずえとはまったく関わってきません。そのくせ、こずえは最後まで主人公へのアプローチを崩さず、ほかのキャラのフラグが立っている場合には主人公にフラれるイベントが漏れなくついてきますが、ここでも主人公はそれらのキャラが好きだからつきあえない、といったことを一切口にしません。

 結局、こずえ以外のルートに入った場合、こずえの登場によって主人公が何か変わったわけではなく、ただ偶然その時期にほかの娘がアプローチしてきた、というだけにすぎないわけです。せめて塚原あたり、こずえに対する姿勢で工夫の余地があったのではないかとも思うのですが、まったく触れられていません。

おまけヒロインズ

 上で書いたとおり、サブヒロインのルートではこずえはいなくてもかまわないのですが、それだけでなく、そもそもシナリオなど存在しないに等しいといってよいでしょう。どのキャラもそれなりに思うところがあって、それなりにがんばろうとしているという共通点はあるものの、問題の解決がエンディングへとつながっていないうえに、それが主人公の描く物語においてどのような力を持ち得たのか、さっぱりわかりません。こずえ以外のキャラは全員、例外なく単なる数合わせにすぎません。

 磨けば光りそうなキャラもいるのですが、設定が出ているだけでオチがないため、「あぁ、終わっちゃったのね」としか言いようがありません。

 また、こずえルートではさほど目立たないものの、サブヒロインのルートでは前にあったイベントが完全に無視、あるいは中途半端に抹消され、主人公がとんでもない行動や言動におよぶことが少なくありません。姫や先生のイベントで特に目立ったのですが、本当に最初からこのルートを一貫してテストプレイしたのでしょうか。

説明なき意味不明の設定

 設定がいかされていないのは、主人公の悩みに関するところでよく出てくるのですが、このほかにも、何らかの意外な展開を期待させるような、突拍子もない設定が出てくることがあります。

なにせ、その学園は武蔵羽村市の市議会もかねてるからな

 “学園”の経営主体が何かはわかりませんが(国公立なら行政機関、大半の私立なら学校法人のはず)、自治体の意志決定機関を包摂することで、学園の自治(!)が広域的に保証されていることになるのでしょうか。

 ところが、上記のセリフはシナリオがかなり進んだ後に出てくるうえ、結局これに関する具体的な説明もなければ、主人公の通う学園の正体も「武蔵羽村市」の正体も明らかにされません。常識から逸脱した設定を使うのであれば、なにがしかのフォローは絶対に必要だと思うのですが。

ゲームデザイン

 朝、昼休み、放課後の移動先によってイベントを発生させるタイプのアドベンチャーゲームです。主要な登場人物がいる場所はおおむね決まっているので、攻略は容易でしょう。攻略対象キャラは5人です。基本となるルートはどのルートでも共通で、授業も当然のように毎日あるため共通パートが非常に長くなっています。

 このゲームの特徴として、立ちキャラが話す内容は漫画のフキダシのようにして表示されるのですが、パターン化された立ちグラとフキダシの形状とがダブるのは、やや鬱陶しいと感じます。ただそれ以上に、フキダシの中にテキストが収まらずにはみ出したケースが何回もあるというのは、まったくいただけません。おまけに、改行位置があまりにも不自然なので、読みにくいことこのうえありません。また、誤字が非常に多い(誤変換のほか、タイプミスがモロに残っている)点も困ったところです。

不具合・修正ファイル

 メッセージがフキダシ(後述)に収まらないという不具合があります。KleinのWebサイトにアップされている修正ファイルで、ある程度修正されるようです。

デモ・体験版

 体験版では、こずえの告白シーンまでが収録されていました。

操作性など

 対応OSはWindows98/Me/2000/XPですが、Windows95 OSR2でも問題なく動作しました。CD-ROM1枚で、プレイ時にはCD-ROMは不要です。インストールに必要なHDD容量は約350MBです。

 画面は800×600全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替えられます。ただし、メッセージスキップには既読/未読の判別がないうえ、非常に高速であるうえ選択肢を選んでも先に進んでしまい、止めるタイミングに手間取ります。おまけにメッセージの読み返し機能もないため、怖くてなかなかスキップできません。セーブ&ロードは任意の位置で可能です。このほかにクイックセーブ&クイックロードがついていますが、そんな機能よりもメッセージ表示関連の機能を充実させてほしいものです。

 タイトル画面には、直前にエンディングを迎えたキャラが表示され、ここからCG/サウンドの各モードに入れます。ただし、イベント回想モードがいまどきついていないというのは、時代錯誤も甚だしいと思うのですが。

サウンド

 サウンド担当は滝沢淑行氏。主要なシーンおよびキャラごとにBGMが用意されているのですが、どうにも印象に残りません。各キャラクターの色づけがうまくできていないこともさることながら、ゆったりした感じのサウンドのために耳に残らないような感じを受けます。

 音声は、一部のイベントシーンでのみ女性のボイスが入ります。しかし、入るのは本当に一部だけなので、淡々と進めていくと、突然声が出て驚きました。こんな中途半端なボイス、いりません。

グラフィック

 原画担当は桜沢いずみ氏。目がくっきりしていて、女の子がとてもかわいらしく描けています。特に立ちグラフィックで、ちょっと切ないような表情、あるいは少し怒った表情などがいいですね。一枚絵もきれいな絵が多いのですが、ややアングルに不自然なものが多かったのがやや気にかかりました。グラフィックに関しては非常に高水準だと思います。パッケージのイラストを見て“合わない”と判断された方以外なら、まず満足できる出来でしょう。

お気に入り

 こずえ以外はどのキャラも存在感が希薄なので、同情もこめてこずえがお気に入りキャラになってしまいました(苦笑)

総評

 グラフィックはなかなかよいのですが、本当にそれだけといってよいでしょう。シナリオなどなきに等しいのはさておき(さておいてよいかどうかはともかく)、ゲームデザインにもまったく芸がなく、本来ならば相応に緊張感があってしかるべき設定なのに、毎日がひたすらのんべんだらりと進むのには、勘弁してくれ、としかいえません。

 冒頭で記したとおり、私は投げ売り品を入手したため、仕方ないかなと納得はできますが、一般論としてはとてもお勧めできるシロモノではありません。

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
2004年2月16日
Mail to:Ken
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