失楽の神女 MBS Truth

2002年8月20日発売
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 巫女さんやら転生やらといったものが媒介する伝奇ものとして手に取ったのがこの『失楽の神女』です。体験版をプレイした時点では「会話は悪くないけど、キャラクターの持ち出し方がわざとらしいな…」と思いしばらく手を出さずにいて、その記憶が薄れたころに何となく購入、という経緯を取りました。要するに、大した期待を抱いていたわけではなかった、ということで(^^;

 なお、メーカーサイトには冷蔵庫に収まるライネのCGが紹介されています。実はライネのお気に入りの場所が冷蔵庫(特に理由はなさそう)というだけなんですが、これを見ただけで某ゲームの冷蔵庫エンドを思い出してしまいました(^^;

シナリオ

 主人公・鷹谷裕樹(名前のみ変更可能)は、かがり火の向こうで少女が踊るという謎の夢を頻繁に見るようになった。ある日、それまで会ったこともない父親の訃報を受け、父の納骨のために故郷の墓所を訪れた彼は、そこで幻覚を見る。大学に戻った彼は、なんだかよくわからない愉快な連中とともに、鷹谷の家の秘密を探るとともに、そこで行われようとしている謎の“風習”を知ることとなる。夢の正体はいったい何なのだろうか。

 

 シナリオ担当は、猫柳まんぼ氏。

 背景となる地方やそれに関するさまざまな話題を伝承として扱い、そこで出てくる謎を現在に投影しています。

 序盤では、学校に行って家に帰ってを繰り返し、ひたすら典型的な“日常生活”が続きます。ゲームの中であればこそ許されるような謎のキャラクターたちといろいろな会話をしていくという展開です。この段階で主人公はいろいろな夢を見たり謎の現象に出会ったりし、これが後の伏線だろうという見当こそつくものの、そもそも話がどのような方向に進んでいくのかもわかりません。

 この日常生活はそこそこ楽しいものなのですが、各キャラクターの位置づけが序盤ではいちいち不明なので、各キャラクターの一挙手一投足じたいがストーリーの要素としてしか受け入れられないケースが非常に多いのが残念。非常にわかりやすい恭子などはともかく、毎日ラーメンをたかる2人など、最終段階になるまで正体がわかりません。しかも、登場人物はゲーム開始後ほどなく全員が顔を出すのですが、みんな不自然なほどにあっという間に仲良くなるのは、これが何らかの伏線なのかと思わせるほどですが、実際には特に意味はないようです。

 この日常生活は、1日1日を丹念に過ごしつつ3週間続きますが、この間に大きな展開の変化はほとんどありません。このため、キャラとの会話もどんどんマンネリ化していき、特にライネなど「コクコクッとうなづく」の連発で「いちいちうるせー!」と思うようになってきました(^^; 香澄サンや大江田とのやり取りはなかなか楽しめましたが。

 

 主人公の出生や村の由来、あるいはそこに秘められている謎については、最後のほうで一気に明かされるという形になっています。ところが、この展開があまりにも急。それまでの日常の楽しさを一気に断ち切って進むのですが、このように急転直下の展開にした理由が皆目わかりません。要するに、伏線の出し方において完全に失敗しています。

 しかも、それまでは静かだった敵役が突然活躍してくれるうえに、これが主人公の直接あずかりしらないところで展開されているにもかかわらずていねいに説明されてしまうため、緊迫感が伝わってきません。

 また、主人公にも一種の“超能力”らしきものが備わっているのに、その正体がちっともわかりません。途中で数回出てくる“黒い影”との対決の際にその片鱗をうかがうことができるにとどまるので、主人公の置かれている立場やその力の大きさ(ないしは限界)がピンとこないのは困ったもの。

 このため、最後のほうは流れるような展開に手に汗握る、というはずのところ、実際には説明調の流れに淡々とマウスをクリックすることになってしまいました。

 

 Hシーンはかなり多いのですが、実際に起こっていると思えるシーンは全体の半分程度で、残りは夢あるいは白昼夢のような中で出てくるものです。このため、数があってもあまりありがたみを感じませんでした。

 実際のシーンでも、他キャラには見えないライネとのHシーンに意味がほとんどない反面、恭子および親子丼は毎日2回以上のペースで怒濤のように襲ってきます。主人公、よく体がもつもんです(^^;

 

 キャラゲーとしても非常に中途半端です。本来はメインを張るはずのライネにしても、最終段階になるまで正体がわからないだけでなく、どうして主人公にまとわりつくのか不明です。しかも(展開上)ランダムに発情して主人公とのHを求めるのですが、あまりにも不自然。恭子は主人公へのラブラブ光線でなんとかがんばっているものの、展開によっては朝晩やりまくるだけに近く、これもまたストーリーの流れと関係がなかったりするのが困ります。

 奇々怪々たるサブキャラ連中はまだ悪くないのですが(教授が顔を出さないのがちょっと残念)、メインキャラのがんばりがやや弱い、という印象です。

 

 ところで、主人公は大学の文学部に所属しているということなんですが、いろんなところに無理があります。授業名が近代経済学(最後まで“近経”という言葉が出てくるので誤字ではありません)なのに授業内容はマルクス経済学だったり(マルクスの名前が出るだけでなく、リネンの例示があることなどから価値形態論を扱っている模様)するのはその典型でしょうが、それ以前に文学部の日文専攻で経済理論が必修なんていう大学、あるんでしょうか? まあ、史学専攻でマル経を履修した経験のある私が突っ込むべきことではないのでしょうけれど(^^;

ゲームデザイン

 基本的な流れはほぼ一本道で、エンディングが3とおりに分かれます。登場するキャラクターの数はけっこういますが、主人公とのエンディングを迎えるキャラはごく限られています。練り込まれたストーリーは大別して二つに分岐し、凌辱系と純愛系のそれぞれを楽しむことが出来ますとありますが、陵辱といい純愛といってもHシーンが違っている程度のもので、そう大きな違いはありません。分岐のポイントはさほど明確ではありませんが、行動パターンが講義に出る/出ない程度なので、1回プレイすればある程度見えてくるといった程度の難易度です。

 なお、CGモードおよび回想モードは、MBS TruthのWebサイトにある「裏技」を使うと、全部埋まります。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、しばしばエラーメッセージが表示されて先に進まなくなったり、突然落ちたりします。さらに、ゲームを起動してもプログラムが動作しない(ブラック画面のままでフリーズ)ために強制終了せざるを得ず、いったんアンインストールしてから再インストールすることになりました。

 MBS TruthのWebサイトに修正ファイルがアップロードされていますが、私の環境ではこれを用いてもかなり不安定なので、頻繁にセーブしながら慎重にプレイしました。

デモ・体験版

 デモと体験版が、それぞれMBS TruthのWebサイトで公開されています。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。

 メディアはCD-ROM2枚組で、インストール時に必要なHDD容量は約500MB〜1.2GBです。インストール後、プレイ時にはCD-ROMが必須です。

 画面サイズは640×480で、フルスクリーン表示とウィンドウ表示、色数(16/24/32ビット)を切り替えられます。下部にメッセージウィンドウが配置され、その右側にシステム・スキップ・オートプレイ・テキスト読み返しの各ボタンがついています。システムメニューでは、テキスト速度(4段階)、スキップ指定(既読/未読、速度)、カーソル表示、サウンド設定、フォント変更、右クリックメニュー指定などが可能です。音声表示時にBGMの音量が自動的に下がる「サウンドハーフ」機能はユニークですが、違和感が非常に強かったので私はオフにしてプレイしました。概してユーザーインタフェースはすぐれています。

 セーブ&ロードは、任意の個所で20まで可能で、保存時の縮小画面・プレイ日時・ゲーム中の日付・コメントが保存されます。これだけあれば十分でしょう。ただし、セーブ&ロードに妙に時間がかかる点は気になりました。

 CGモードとHシーン回想モードはサムネイル表示となっています。BGMモードはありません。

サウンド

 音楽担当はtutti氏。曲はPCMで再生されますが、各シーンごとの雰囲気と合っていたとは思えず、パッとしません。主題歌「夢常の舟」はけっこうよかったかと。

 音声はキャラごとの差がけっこうあります。特にライネの日常の発生など、ネコが鳴いているようにしか聞こえないのは困ったものです。

グラフィック

 原画担当は一宮正樹氏。特に癖があるわけではなく、強いていえば目元がややキツめではあります。CGの量はけっこうありますが、Hシーン以外のイベントCGが非常に少ないのはどうしたことか。伝奇物である以上、不可思議な現象や体験をビジュアル面でもり立てていくことは不可欠だと思うのですが。

 ところでキャラクターの初登場シーンや、イベントCGなどで最高10画面分(業界初!)スクロール可能なCGを用意していますというのは嘘ではありませんが、特にこれといった効果を発揮しているものではなく、むしろ面倒さを増しているだけに見えます。人間の格好が縦長なのはあたりまえであり、またその全体像を見る場合は視線が上下するのは当然なのですが、それでも視点が対象と不自然に近接しているとしか思えない構図には違和感が先に立ちます。DOS時代にはこういうのよくあったよねという感慨はわきましたけれど。

 あと、Hシーンではズームアップを多用する一方、1つのシーンでは基本的に1枚で終えているのが残念。

お気に入り

 特に気に入ったキャラはいませんが、強いてあげれば恭子と伊月の2人でしょうか。

総評

 なんとか話の筋をまとめようと最後に無理してしまい、最終的になんだかよくわからないままに終わってしまった観があります。題材がおもしろそうであるだけに、もっと盛り上げかたを工夫してほしいものです。伝奇物としては中途半端ですし、Hシーンだけに目を向けた場合にはこれまたやや物足りなさを感じます。

 決して悪い作品ではありませんが、ストーリーの核をしっかりと作ったうえで、Hシーンも数だけで稼がずにそれぞれの描写を丹念にすれば、よりよいものになったでしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2003年4月30日
Mail to:Ken
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