TALK to TALK Clear

2002年2月1日発売
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 比較的淡々とした流れのこの作品に手を出したのは、特に理由があってのことではなく、いわば「何となく」という程度のものだったのですが、このブランドの既存の作品『MoonLight』(以下、ML)『Wing&Wind』(以下、W2)の両作品の“雰囲気”が好みだったのが、きっかけの1つでありました。パッケージにしても、あまり表情のないごくふつうの女の子が2人描かれているだけで、あまり目を引くものでもありませんが、むしろ「落ち着いた感じ」が好みの人は手を出しやすいかもしれません。

 しかし、発売直後には「なんとなく嫌な予感」がして手を出さなかったのは結果として正解だったようで、製品版そのままでは、壮絶な不具合が含まれているようです。私は修正パッチを当てた状態でプレイしたので致命的な問題は特にありませんでしたが、発売直後にプレイされた方の怨嗟の声を聞くと、ひとごとながら同情します。単純なアドベンチャーゲームのくせに年間最凶バグゲーム最有力候補にノミネートしてはいけません。

※このレビューは、Ver.1.05をプレイした結果をもとに書いております。

シナリオ

 『システム』と呼ばれる機関で遺伝子操作によって造られた“カレ”は、人間のもつ感情を理解できるかどうかのテストのため、試験体として学校に編入することになる。「狭川裕樹」(変更可能)という名前をもってヒトとして暮らすカレの前には、さまざまな人が現れる。その結果、カレの“実験”はどうなるのか。

 

 シナリオ担当は「秋津環」「長野和泉」両氏。秋津氏はML・W2両作品でもシナリオを担当しています。

 主人公が人間でないというところからスタートするシナリオは類例がほとんどなく、非常に珍しいものです。一般的な人間に比べて主人公の感受性が特殊(欠如とまではいかない)で感性が極度に論理に依存するという例には『Silver Moon』(R.A.N Software)がありますが、それでも生身の人間であることには変わりがありません。主人公が「遺伝子操作」の結果「作られた人間」であるため、その心理や行動・言動に対して「そういうものなんだ」と問答無用で通せる一方、逆に主人公自体が暴走しやすく、また設定の背景に対してリアリティを感じられなくなることも考えられるだけに、ずいぶん難しいものを持ち出したものです。

 ゲーム世界はMLの数年後という設定のようで、廃校になった学校の学生が多数転入した学校が舞台となっています。MLの攻略対象キャラがチョイ役で登場するほか、明確には書かれていませんがヒロインの1人はMLの某キャラの妹のようです(MLリプレイで確認)。また「根戸俊介」という名前(ホントに名前だけですが)が出てくるので、ちょっとだけW2とも重ねている、のかな。なお、例の濃い人はやっぱり出てきます(笑)

 

 ストーリーは、基本的に学園恋愛もののパターンといえます。主人公とバカを言い合っている悪友をはじめ、基本的な役回りがひととおりそろっているといえるでしょう。

 学園恋愛ものの主人公といえば、えてして過度にお調子者であったり、妙なところだけ行動的だったりしますが、このゲームでの主人公は、むしろごくごく自然に女の子といろいろ行動をともにしていくうちに惹かれていくというナチュラルさが徹底しています(シナリオごとのムラはありますが)。ただし、そこで「主人公には、感覚としての“感情”がわからない」という設定を出すことで、主人公の行動の実直さが浮き上がり、結果として女の子が主人公に惹かれるという過程に無理が少なくなっています。このあたりの機微は素直・冴子両シナリオで顕著で、特に素直シナリオでは「好きになる」ことを「感覚的に」理解したこととつきあい始めることとが合致しているため、非常に心地よい展開になっています。逆にこのタイミングを意図的にずらしたシナリオもあります(具体的にどれかというのは避けます)が、これを見てバッドエンドに到達したときは、けっこう凹みました。この点は良かったのかどうか、ちょっと判断に迷うところです。

 

 しかし、このゲームシナリオには、看過できない問題点がかなりあります。

 まずは、主人公が示す「感情」の表出パターンが限定されている、すなわち「実験結果が成功と認知されるような感情表現」が相当に狭い範囲のものに留まっていることでしょう。一言でいえば、「異性を好きになること、そこから始まる感情」のみが「感情」と定義されているように思えます。恋愛要素の強いゲームである以上当然の設定だ、と言ってしまえばそれまでですが、「実験が成功したか否か」の基準に、「感情」というはなはだ幅の広いものを据えるのは、結果における恣意性を拡大することに直結してしまっているといえましょう。

 

 さらに、これは相当に大きな問題点でしょうが、「システム」の位置づけが最終的に主人公の中で「デフォルトの存在」のままであり続け、主人公は最後までそれに疑問を抱かないことも指摘できます。

 実験体としての主人公は、エンディングになっても「人間」として生きることを認められたわけではなく、「回収されストックになる」ことが延期されたにすぎないわけです。しかし、この点に対する不安や憂慮は、ほとんど描かれていません。そのように計算されているのが主人公だ、と説明することは可能でしょうが、しかし「感情」による自己愛の発露(自我の確立ともかかわってきます)が具体化するのであれば、運命への抵抗や叫びが具体的に出てきてしかるべきですが、それは最後まで希薄なままです。せいぜい、その日その日の楽しさを1日延ばしにしたいと願う程度で、「宿命」に対する判断ができていません。このため、各シナリオ終盤で出てくる「時間がないことに対する切迫感」にリアリティがなく、特定の感情が暴走しているように見えてなりません。一瑠シナリオで感じられる主人公の行動がまさにそのパターンであり、しかも主人公の心理とヒロインの理解とが究極的にはすれ違ったままでエンディングに到達するため、なんとも不完全燃焼に留まっています。

 また、攻略可能各キャラクターに対してそれぞれハッピーエンドが用意されているのですが、その「ハッピー」を主人公が満足して享受できるというのは、やはりかなりの無理を残しているといえましょう。いうなれば時限爆弾を抱えているような身であることに変わりはないわけで、そこに感じている「不安」を見せないのでは、「感情」というものをナマで取り扱うシナリオの締めとしては弱いといわざるを得ません。「未然形の悲劇」の幕が引かれないままの「エンディング」には、やはり落ち着きのなさを感じます。ほかのシナリオへのリンクをにおわせる素直エンドを例外として、どの「ハッピーエンド」を見ても「ここで切るかぁ!?」と思ったしだい。

 別に「システム」の実態なり何なりについて掘り下げたり説明を施したりする必要はありませんが、少なくとも主人公の心理レベルでの説明がもっと欲しいものです。

 

 さらに、「遺伝子操作」にはじまる主人公の初期設定それ自体も、「どうしてそれが出てきたのか」となると、取って付けたようなものという感触がどうしてもつきまといます。W2をプレイ済みであればまだ無理に補完して納得することもできないではないのですが(後述)、未プレイであれば「どうしてそんな発想になるのか」と思うのがオチでしょう。最初から「?」で始めるという手法は、キャラクターの「世界」そのもののもつ「意味」を喪失させることにも直結する危険な手法ですし、もっと初期設定を具体的に明示したほうがよかったのでは。もちろん、起源なき存在の「意味」探しを不毛なものとする結論にも一定の妥当性は見いだせるでしょうが、このゲーム世界でそういう帰結は無理そのものです。

 以下、ネタバレのために背景色と文字色とを同じにしますが、おそらく、W2における紗夜の設定をベースとし、時系列的にはそれよりさかのぼる時間の中に主人公という設定を置いたものと推測されますが、それとて紗夜の「特殊さ」を使っているわけではないので、W2をプレイ済みであっても無理が残ります。

 

 各シナリオごとのバラツキはかなり大きくなっています。主人公が、自分が“ヒト”でないことを思い悩むみさき・素直両シナリオと、主人公が単なる朴念仁キャラであるにすぎない冴子・樹里両シナリオでは、「重み」がまるで違います(一瑠は中間でしょうか)。

 素直・みさき両シナリオについては、設定の連関がうまくとれており、これはMLのメインヒロイン系統のシナリオを思い起こさせるものになっています。共通のキーパーソンを排するとともに、“ヒト”でない主人公に惹かれたヒロインの立場や心情もきちんと描けています。

 しかし冴子・樹里両シナリオは、主人公が「システム」に戻らざるを得ないことについて悩んだり、あるいは葛藤したりといったシーンがないばかりでなく、そもそもそんな必要もない展開になっています。

 さらに、主人公がヒロインに惹かれる流れについても、冴子・樹里シナリオではごくごく簡単かつストレートに走っており、むしろヒロインが主人公に癒されるという形を取っています。しかし、主人公は非常に特殊なキャラクターなのであり、その「特殊さ」が主人公とヒロインとの2者関係においてほとんど考慮されていないため、ごく平凡なストーリーにすぎず、主人公が“ヒト”でないことの意味がほとんどなく、結局大仰な設定がかえって展開を不自然なものにする一助になっているのが実情です。

 

 これらの問題点は、とどのつまり、おもしろい設定を出していながら、それに見合うだけのストーリーを組み立て、キャラを入れ込むだけの余力がなかったことに尽きると思います。

 結局、舞台設定の作り方自体はおもしろいのですが、それをストーリーとして構築し、なおかつ各ヒロインごとに適合させるという点において、どうにもうまくいっていないといえます。遺伝子操作うんぬんという設定によって主人公を「問答無用の存在」にしてしまった効果は確かに大きいのですが、その「特殊性」を十分に昇華できないストーリーが目につくため、どうしても「上滑り感」が残ってしまうように思えます。素直に「感情の起伏が極度に乏しい主人公」で話を起こした方がよかったような気もします。

 テキストにも、かなりの難があります。文自体が悪文というわけではないのですが、修正ファイルを当てたのち(私は1.05にてプレイ)でさえ大量の誤字があふれています。「不審」とあるべきところで「不信」を連発されては、読む方が本当に“不信”感を抱きます。「写真を取りに行ってきたの」となると、それはそれで意味が通じてしまうので、違った意味に解釈したまま進むことになります。具体例を挙げていくときりがないのでこのあたりにしますが、これはシナリオライターの問題ではなく、チェック機能が的確に働いていないことに原因があるのでしょう。それも、どうやら各ヒロインごとのシナリオによって誤字の分布にばらつきがあるような気がします。早い時点からある程度できていたシナリオはきちんと処理したけれど、そうでないものは事後チェックがかなり適当にされているようにも思えますが、考えすぎでしょうか。

 

 また日常生活の中では、やたらと食べ物に関する話題が多くなっています。MLでも台所がどーたらとかスパゲティがうーたらとか某ヒロインの謎の弁当とかいろいろ出てきましたし、これはClearのゲームの定番パターンなのでしょうか。特に購買で売られているパンが異常というのもどこかで見た設定だと思うのですが、まあそれは置いといて。

 

 キャラクターのバリエーションは定型的といえばそれまでですが、しかしゲームの中で必ず出てくるであろう記号化されたキャラがいないのはむしろ珍しい気がします。設定上幼なじみキャラがいないのはむしろ当然ですが、目が悪くてもメガネをかけていないし、いろんな服を着てくれるわけではなし(笑)、本当に地味ですね。攻略対象キャラは、おとなしい系の後輩、同級生3パターン(無口、快活元気、人付き合いが極度に悪い)、天然の先輩とそろっていますが、思考パターンなども奇をてらったものではなく、特に先輩など、モデルの一件をのぞけばごくごくふつうの女の子といった印象があります。

 そしてまた、各キャラクターのリアクションや変化が、主人公に対して「人間くささ」を与えていく過程がなかなかうまく出ています。一般的には、キャラクターの描写は単純に「萌え」へと直結しておしまいになるのでしょうが、このシナリオでは、ヒロインのかわいらしさが単純な「定型的消費の題材」になっているのではなく、デジタル的な感性に曖昧さを付与していく効果をもたらしているように感じます。ストーリー展開でみれば陳腐あるいは平凡と呼べそうな樹里あるいは一瑠が、パターン化していないキャラクターであるのに存在感を強めているのは、エンディングの「かんどうてきなしーん」に依拠しているのではなく、また変わったパターンだからでもなく、むしろ、この「主人公を変えていく触媒たり得ている」点に根元的な理由があるように思います。

 

 Hシーンについては、各キャラクター2パターンずつで、わりと長丁場です。それまでは万事他人事のようにすべてを客観視していた主人公が、急にその手の言葉を駆使して口達者になるので、ちょっと違和感を覚えました。キャラによって「初Hの後に第2ラウンド」となる場合と「間をおいてから」という場合があり、後者の方では特にHシーンの意味づけや使い方がなかなかうまかったと感じます。ただし、テキストはやや冗長かと。

 

 例によってというか、細かいツッコミ。某キャラとプラネタリウムへデートに行くシーンがありますが、その帰り道、「オリオン座の三つ星が見える」というシーンがあるのですけれど、10月の時点で三つ星が見えるのは深夜の11時すぎなんですけれど、これは無理がありますって。あと、樹里先輩は色盲という設定になっていますが、女性の色盲はかなり珍しいので、そう簡単に通常の人が気づくとは思えないのですけれど。

ゲームデザイン

 前半パートで対象ヒロインの絞り込みが行われ、後半パートでハッピー・バッドが分岐するタイプのアドベンチャーゲームです。攻略可能なキャラクターは5人でです。MLやW2と似たパターンで、絞り込み・分岐ともに選択肢によって決まります。前半で誰のルートにも入らなかった場合は、汎用バッドエンドになります。

 MLのようにやたらと難しい即死選択肢が居並ぶことはありませんし、またW2のように不正解選択肢がなかなかわからずに進んでしまうこともないので、ゲームデザイン自体は似ているものの、難易度はかなり緩和されています。各キャラクターごとのパターンを読みとれれば、数回のセーブ&ロードや試行錯誤でハッピーエンドに到達できるでしょう。難易度は標準レベルです。

 なお、MLやW2では、バッドエンドも含めてすべてのエンディングを見ると、タイトル画面にちょっとした変化が出ます。

不具合・修正ファイル

 スクリプトミス、音声のブレ、画像の入れ違い、フラグ判定のミスなど、とにかく大量の不具合が確認されています。私はClearのサイトで配布されている修正ファイルをあらかじめ入手しアップデートした上でプレイしましたが、それでも一部の音声に雑音が入っています。また、修正内容には「誤字脱字を修正」とありますが、「シナリオ」欄で書いたとおり、まだまだ大量の誤字が残っています。オリジナルはどれぐらいのものだったのか、と気になるぐらいです(^^;)

デモ・体験版

 デモは、各キャラクターの紹介とゲームの雰囲気を出すものになっていますが、流れるフレーズがそれぞれ抽象的であり、何を指すのかが今ひとつわかりにくいこと、また「特殊な存在」としてスタートしているはずの主人公の位置づけが不明確である観が拭えないことがあげられます。これは、ゲーム本編をプレイしても大差ありませんでした。もっとも本編では前半部が(ツボにはまりさえすれば)楽しいので、あまり気にする必要はないのかもしれませんが、本編で主軸となるべき部分をアピールするにはかなり弱いものになっています。

 体験版については、存在を確認していません。

操作性など

 対応OSは、Windows95/98/Me/2000ですが、WindowsXPでも問題なく動作します。

 ゲーム内容はCD-ROM2枚組で、実際に消費するHDD容量は約720MBです。インストールのオプション設定はありません。

 画面は、640×480ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替え可能で、グラフィックが全画面表示、左上部に日付表示(イベントシーンでは消えます)、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。また、メッセージスキップ・巻き戻しのボタンもあります。メニューバーからは、セーブ・ロード・画面切り替え・オートプレイ・スキップなどを選択でき、これらはキーボードで操作することもできます。このあたりのユーザーインタフェースはMLやW2をほぼ踏襲しており、基本的にプレイするにはストレスをほとんど感じることはないと思います。また、タイトルメニューに戻ることも可能です。

 スキップは基本的に既読スキップですが、「Ctrl」キー押下で未読テキストもスキップ可能です。既読・未読は各シナリオフラグごとに行われているようなので、そっくりそのままのテキストであっても直前の選択次第で未読扱いされることが多いのも前作同様ですが、今回は比較的シーンの区切りが柔軟になっています。メッセージ速度表示切り替えや文字設定変更なども充実しており、テキストを「読ませる」ことへの配慮はうかがえます。また、キーボード操作だけでも大半の操作が可能となっています。

 セーブ&ロードは、任意の場所で25個所まで可能です。プレイ実日時・ゲーム中の日時のほか、シーンの縮小表示も記録されるので、後にロードしやすくなっています。ただし、1つセーブするごとにHDDをかなり消費するのも相変わらずです。

 ハッピーエンドではスタッフロールが流れますが、マウスクリックまたはエンターキー押下でスキップ可能です。またこの場合のエンディングでは「Fin.」という文字が表示されます。

 ゲームを1回クリアすると「おまけ」に入ることができ、音楽鑑賞・画像鑑賞・回想の各モードが出ます。CGモードは、各ヒロインごとにサムネイル表示されます。BGMモードでは、曲名がリスト表示されます。

 なお、インストールディスク内の「staff」フォルダに、各スタッフが書いたコメントがテキストファイルで収録されています(今回はミュージックディスクのほうではありません)。

サウンド

 BGMは、cresc氏の担当。曲の数は27曲(音楽鑑賞モードによる)あり、すべてCD-DAで再生されます。各キャラごとのメリハリはありますが、シーンごとに印象に残ることはあまりなく、日常シーンでのBGMに徹している感じがあります。あまり技巧に走らず、素直なイメージを抱きました。個人的には、メロディラインが単調ながら、「White Light」(樹里のテーマ)がお気に入りです。

 OP「With」およびED「明日への距離」はボーカル曲で、佐藤裕美さんの担当。EDについては可もなく不可もなくといった感じですが、OPはなかなかよいと思います。

 音声は、主要女性キャラのみフルボイスで、各キャラごとに音量を調整できますが、どのキャラも音声が非常に小さく、BGMとのバランスが崩れています。特にひどいのは素直で、デフォルトでは「何か音が出ている」ぐらいにしか聞こえず、演技力以前に言っていることがわかりません。このゲームが音声入りの初ゲームということを差し引いても、ボリューム調整ぐらいきちんとやってほしかったものです。主人公の名前の部分は、適宜「キミ」などと読み替えられたり無視されたりし、無音の空白ができないのがよし(私は無音が入るのは好きじゃないので)。

 肝心の演技については、非常に水準が高いものに仕上がっています。特に樹里先輩の照れた声がいいです(^^) ただし音量を上げると音が割れがちなのが難点ですが。また、教室での3人漫才シーンでは、冴子が話しても荻谷が話さないのは不自然ですし、男性キャラにも声がほしかったところです。こういった難点があるため、私は途中から音声をオフにしてプレイしました(素直・樹里のみ、音声ありで終了)。

グラフィック

 キャラクター原画担当は「Rけん」氏。パッケージを見ればわかる絵柄で、やはり「地味」という言葉が先に出てしまいますが、それがゆえに落ち着いた雰囲気をうまく出しています。特に立ちCGでの表情の変化はMLに比べるとずっとスマートになっており、かわいらしさをよく発揮しています。ただし、背景画のあからさまな人物の手抜き絵はどうにかして欲しかった。

 ただし、一枚絵CGになると、光線による効果を多用したり、アングルを変えたりといった「工夫」が先に目についてしまい、どうもパッとしない印象があります。Hシーンにしてもそうで、妙にねちっこいテキストに対して淡泊で、アンバランスさを感じました。

お気に入り

 どのヒロインもそれぞれのかわいらしさがきちんと描かれていますが、一番気に入ったのは素直ですね。主人公に惹かれながらも、自分の中でどうケリをつけるのか悩む彼女を見ると、たまりません。二番手が樹里先輩、続いて一瑠の順。

 シーンとしては、素直のエンディング間際、……本当にそう思っているなら、それは私にとって残酷ですという個所。ここは本当にクラッときました。恋愛モノとしてはごくごく平凡なストーリーが並ぶ本作品ですが、このシーンをハッピーエンド直前に持ってきたのは大成功でしょう。

総評

 何はともあれ、どうしようもないといえる大量の不具合、そしていちいち白けさせてくれる大量の誤字(さらに語彙の誤用も)をなんとかしてくれ、というのが真っ先に立ちます。

 その点を差し引いても、設定の「使い方」に対し、不十分と思える点が多く、高い評価を下すのはかなり無理がありましょう。これは、謎が残る残らない、あるいは奇跡や超常に依存する依存しないといった次元ではなく、本来であれば説明されてしかるべきものが存置され、またケリをつけるべきものが放置されたまま幕が引かれることが非常に多いため、最終的に居心地の悪さをどうしても残してしまうからです。ゲームシナリオが提示する倫理や世界観が独自のものであり、プレイヤーのそれと衝突するというのであれば致し方ないでしょうが、あくまでも「閉じた世界」の中における「物語」である以上、各パーツのリンクが切れているのは間抜けなことこのうえありません。

 設定自体は悪くありませんし、また各ヒロインの描写については前2作を大きく凌駕しています。シナリオによっては、盛り上げ方もなかなか心地よいものに仕上がっています。次回作にはまだまだ期待できると思いますが、もうひとのびがほしかった、そういう作品でしょう。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2002年4月11日
(4月14日、「シナリオ」「総評」に加筆・修正)
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