てんたま 〜1st Sunny Side〜 KID

2002年6月28日発売
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 妙にロリっぽいキャラデザに加えて、メーカーWebサイトを見てもどうにもゲームの実像がさっぱり見えてこないので敬遠していたのですが、ある方から「『夢のつばさ』が物足りないというなら、こちらなら楽しめるかもしれませんよ」と言われてプレイすることにしました。

 この『てんたま』は、2001年1月25日にPS版が、同10月25日にDC版が出ています(ただしPS版にはサブタイトルがありません)。Windows版はこれらの移植と思われます。

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ

 主人公・早瀬川椎名(変更不可)は、幼なじみの貴史や千夏たちとのんびりした生活を送る高校生。彼に想いを寄せていたクラスメート、双葉からの告白を受けて2人はつきあうようになり、貴史や千夏を交えた仲良しカルテットができあがる。しかし双葉は病弱で、クリスマスに病院で息を引き取ってしまう。何か月たっても吹っ切れない椎名だが、貴史や千夏の温かい態度が彼を何とか救っていた。そんなある日、椎名を幸せにさせるという見習い天使・花梨がやってきた。地上の人間を幸せにできるかどうかで、天使になれるかどうかの試験の合否が決まるのだという。花梨の登場によって劇的に変化した椎名のまわりには、なぜか女の子の姿が急に増えることになる。高校3年生のクリスマス、双葉の命日には、彼はどんな表情をしているのだろうか。

 

 シナリオ担当は、高瀬伸氏。

 キャラクターの配置がなかなか特殊です。見習い天使1人、もともとつきあいの深いキャラが1人、中学時代の後輩1人、その先輩が1人、および直接の面識はない後輩1人といった顔ぶれです。主人公は昔の想い人への感情にケリを付け、こういったキャラの中から恋人を選ぶことになるわけです。

 当然、主人公が双葉の存在に対してどのようにケリをつけていくか、という部分の描写が必要になってきます。しかし、肝心のこの部分に対する説明はかなりはしょったものになっています。千夏と理香子のルートではそれなりに書かれていますが、千夏ルートの場合は貴史の扱いが先に立ってしまい双葉が自然昇華される(やや反則気味ですが、これはこれで筋が通っています)一方、理香子のほうではヒロイン側の問題解決によってあっさり済んでいます。それ以外のルートでは、双葉とは直接関係ない次元で話が進み、主人公もそれを追認するのみとなっています。生活の中にすっかりとけ込んでしまった花梨については、なし崩しに「いないと寂しい」という気持ちが増幅されていった、で押し通すことはできますが(実際、そうしていますが)、これでも迫力不足と感じざるを得ません。

 総じて、主人公の内面に深く立ち入ることなく、単純に“いつまでもウジウジしてちゃいけない”というレベルの問題として解決してしまっているのが、双葉の設定が活かされなくなってしまった最大の要因でしょう。

 

 主人公側の描写が甘いとなると、ヒロイン側の描写が必要となります。こうすると、主人公の内面的な苦悩をどのように汲み取れるかという、かなり難しい問題が出てきます。

 ところが、花梨が降臨してからこのかた、次から次へといろんな“出会い”があり、しかもそのうち2人は前から主人公に惚れていたという設定だったりします。主人公サイドから見れば立派な“売り手市場”が成立しているわけですが、ここで主人公が何らかのアクションをとり、そして積極的に好意を示すという兆候がほとんどありません。むしろ、ヒロインサイドの抱えている悩みに対して主人公がどう向き合うかを決めたら、それでラブラブ決定、という印象になってしまいます。千夏と花梨を除けば、主人公が中に抱えたものを“癒す”ことによってエンディングに到達したようにはとうてい見えない結末になっています。

 

 特殊な立場のキャラクターである千夏や花梨の扱いについても、かなり問題があります。

 千夏は、主人公の幼なじみであり、双葉の親友であり、貴史に想いを寄せていながら向こうは反応まるでなし、という存在なのですが、彼女に関するイベントはどのヒロインルートに入ってもほぼすべて登場します。しかし、千夏のことをもともと知っていた理香子を例外とすれば、彼女の存在が主人公にとってどの程度重要だったのかを示すには、非常に中途半端になっていると言わざるをえません。端的にいえば、無意味にウェイトがありすぎます。個人的には好きなキャラクターではあるのですが、例えば初音・真央ルートの場合、千夏や貴史がどうなったかということは、主人公の行動にはほとんど影響を及ぼしていません。それにもかかわらず、特に千夏と貴史とのすれ違いをえんえんと取り込んでいては、主人公の双葉に対する感情(ないしは記憶)の変遷がなかなか描写できなくなってしまいます。実際、終盤の展開で、ヒロインではなく主人公側に性急さが感じられるのは、この千夏がらみのドタバタがあるせいではないかと感じます。さらに、千夏エンドの後、本当に主人公と千夏とはつきあっていけるのだろうか、という素朴な疑問がどうしても拭えません。

 さらに花梨については、同居人として非常に和める存在になっている一方で、恋のキューピッドとしてはあまり役に立っていません(←けなしているわけではありません、念のため)。そのくせ、幸せになれるかどうかを、単純に主人公が誰かと恋仲になるかどうかで判断せざるを得ないということに対して、あまり悩んでいないのが引っかかります。真央や初音に対する発言を見ればわかるとおり、何も考えてなさそうな顔して実に鋭いところをついたりするのですが、プリミティブなところに対しては頭がまわらない存在に押し込めてしまっているのが非常に残念です。大きなポテンシャルを抱えたキャラが、その力を発揮できていないように感じます。

 また、花梨が攻略対象になるのに、ほかの2人はなぜ攻略できないのかという点も疑問なのですが、これはいたしかたないところなのでしょうか。

 

 それでは各キャラクターがその魅力をそれぞれのストーリーで発揮しているのかというと、これまた大いに疑問があります。独特の口調を連発する花梨や、いろんな面を見せてくれる千夏はさておき、どうにも決め手に欠けるイベントがずらりと並んでいる印象が否めません。

 日常会話のテンポはおしなべてよく、また視点がころころ変わるためいろいろなキャラのさまざまな態度が見られるなど、描写の方法にかなり凝っています。しかし、各キャラクターの設定の関連づけがうまくなされていないように感じられます。

ゲームデザイン

 攻略対象ヒロインがどこにも明示されていないのはどうにも困ったもので、けっこうイベントが多くキャラが立っていても攻略できないケースがあります(Windows初期のころにはそういうのもありましたけれど)。エンディング対象となっているのは、花梨・千夏・結花・真央・初音・理香子です。

 各ヒロインごとにストーリーが分かれるタイプのアドベンチャーゲームで、分岐は核となるイベントを発生させるか否か、また好感度が一定以上か否かで決まるようです。ヒロインごとにハッピーエンドとバッドエンドとが用意されていますが、ハッピーエンドは複数のパターンが用意されています。これは直前の選択肢で異なるものを選ぶことによって分岐するものが多いようです。ただし、1回のプレイ時間がかなり長いので、最初から何度もリプレイするのはかなりたいへんです。プロローグをスキップできるのがまだ救いですが。

 また、あるヒロインのハッピーエンドを迎えると、トップメニューから追加シナリオに入れます。攻略できない葵や奈菜のストーリーも用意されています。

不具合・修正ファイル

 私の環境下では、特に問題は発生していません。

デモ・体験版

 存在を確認していません。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。CD-ROM2枚組となっており、フルインストール時に必要なHDD容量は約770MBで、プレイ時にはCD-ROMは必要ありません。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示とを切り替えられます。下部にメッセージウィンドウが表示され、透明度や色を変えることが可能です。メッセージスキップ(既読/未読の区別あり)と文字速度調整、テキスト読み返し機能などが装備されています。また、メッセージ表示と音声との同期/非同期を設定したり、画面効果を変更したりすることもできます。また、メッセージウィンドウに表示されるアイコンをさまざまに切り替えられます。

 ゲームを起動すると「起動メニュー」が表示され、DirectSoundの使用/非使用(非使用時はSE/BGMが鳴らない)、起動画面モード切り替え、MMXコード使用/非使用、CPUパワーに応じたエフェクト設定を変更できます。CPUは「High」(クロック周波数800MHz以上)/「Middle」(同300MHz以上)/「Low」から切り替えます。私はAMD Athlon800MHzで「High」にてプレイしましたが、特にストレスを感じることはありませんでした。

 セーブ&ロードは、任意の個所で5個所までクイックセーブ&クイックロードが可能です(ゲーム中のイベント名が表示されます)。これとは別に、キーボードのみで可能なセーブ&ロードが65個所まで可能で、ゲーム中の日付とセーブ時の実日時のほか、それまでに登場したキャラクターのスタンプを記録でき、またゲーム中のイベント名も自動的に記録されます。さらに、各選択肢ごとにオートセーブ&オートロードが5個所ずつ行われるため、選択肢を変えてリトライすることも容易です。このため、リプレイを繰り返してもとまどうことはまずないでしょう。

 トップメニューからは「アルバム」に入ることができ、ヒロイン別のCGモード(サムネイル表示)に入ることができます。

サウンド

 サウンド担当は「阿保剛」氏で、PCM再生されます。どうも印象に残っておらず、ゲームを終えるとどんな曲だったかさっぱり思い出せません。

 音声は、主人公以外フルボイスです。花梨のお子ちゃまボイスがなかなか楽しいですね。

グラフィック

 キャラクターデザイン担当は、松尾ゆきひろ氏。かなりデフォルメがきいていて目がやたらと大きいため、かわいいといえばかわいいのですが、どのシーンを取っても色気の欠片もない娘ばかりというのが何とも(^^; もちろん一般ゲームという面を差し引く必要があるとはいえ、ここまで中性的な連中ばかり出てくる恋愛ゲームというのははじめてでした。おまけに主人公たちの学校の女子の制服がずいぶんダブダブで、ロリフェイスと合わせると園児服に見えてしまいました(^^;;; ただ1か所、真央ルートでメッセージバック画面にしたときの真央の格好がちとアレですが、これはそう見える人間の視線が病んでいるだけなのでしょう(爆)。

 さらに、立ちキャラの配列にかなり無理があります。千夏は女性キャラとしては比較的背が高いように見えるのに、ルリルリと並ぶと頭部が同じ高さになり、しかし腰の位置がズレているなどという画面があり、目がクラクラしてきました。背景がきれいなだけに、もう少しバランスを考えてほしいものです。

 いっぽう、画面の切り替えのときにさまざまなアイキャッチが出るのですが、これがいいアクセントになっていて楽しいですね。3てんたまズ(笑)が「ビューン」と擬音付きで画面を切り替えるところなど、何度見ても飽きません。

お気に入り

 お気に入りキャラは、千夏で決まりですね。あと、てんたま3人組もみんなかわいいから良し。ちなみにこのレビューを書き始めた時点で、千夏と双葉以外の人間の女性キャラの名前はみんな忘れてしまいました(^^;

総評

 登場するキャラクターの数がやたらと多い一方で、スポットの当て方で大きく失敗しています。また、主人公を軸としてみた場合、多くのルートで「どうしてこれで終わりになるの?」と思えるものです。双葉の存在をあれだけ前面に出しているのに、ケリの部分でそれが弱くなっていてはいけないでしょう。

 キャラクターの使い方で光るところは確かにありますし、特に千夏ルートのエンディングのバリエーションなどは「こういう分け方もあるか」と思ったものです。総体で見ると画竜点睛を欠く以前の段階と言えなくもありませんが、独自のストーリーを作っていこうという姿勢がうかがえました。

 さらに、個人的な思い入れバリバリですけれど、葵と奈菜があれだけ活躍している以上、もっと立場を強くしてあげるべきだったかと。あるいは、プロローグ部分で選択肢が出て、それによって担当する見習い天使が変わるとかあったらおもしろそう。もっともそんなことしたらシナリオ量が肥大してしまうので、あまり現実的ではないかな。

 この「てんたま」は、第3作までの続編制作が決定しているそうです。個人的には、葵と奈菜に光あれかし、と望むのみです。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2003年11月20日
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