蒼い海のトリスティア -発明工房奮闘記- 工画堂スタジオ【くまさんちーむ】

2002年7月20日発売
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 このゲームを見て最初に覚えた印象が「初代パルフェ?」 そう、登場人物のラインナップが、どうにも同じメーカーの『リトル・ウィッチ パルフェ』から受けるイメージとそっくりかぶってしまったのです。これを買うことにした直接の動機が、この印象によるものだったことは間違いありません。

 もっとも、ストーリーが「天才が街を復興していく」というもの。この種のゲームで私が最も危惧しているのが、卓越した才能を持つ技術者が、自分の才能がどのように使われるか(直接的にではなく、二次的な効果など)に対してまったく顧慮せず、その結果何もなかったかのように話が進んでハッピーエンド、というものでした。おまけにこの作品では、主人公は弱冠14歳の女のコ。いったいどういう展開なのか、という一抹の不安を覚えながらのプレイとなりました。

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ

 海洋都市・トリスティアはドラゴンの襲来によって大きな被害を受け、それ以来街は寂れる一方であった。街の人々は最後の頼みとして、これまで衰退したいくつもの街をよみがえらせてきた「プロスペロ流工房術」の大工匠、プロスペロ・フランカに街の再建を依頼した。ところが実際にやってきたのは、弱冠14歳の女のコ・ナノカ(名前変更不可)。彼女は工房術をマスターしているとはいえ、偉大な天才を待っていた街の人々は大いに失望した。しかし彼女はひたむきさを武器に、街の復興のために1年間頑張るのだった。

 

 シナリオ担当は「竹内なおゆき」氏。

 基本的にはコミカルな展開で進み、ナノカがなんだかんだでその場その場の事態を解決していく、という形です。

 ただし、個別のイベントは、「おもしろい」と感じされるものがさほどありませんでした。本来であればいろいろと良くない面が出てきてしかるべき展開なのに、ナノカが絶対無垢の安全なところにいることを「堂々と認められている」という観があったのです。もちろん、彼女が「帝都からきたよそ者」である以上、島の住民と簡単にうち解けるのは難しいのでしょうが、彼女の理解者が終盤までレイグリットとフォーリイの2人ぐらいしかいないという中で、彼女が孤独感や焦燥感を覚えずに、天真爛漫さを貫ける「非凡さ」を前提としているのは、凡人たる私には、主人公への投影を難しくするハードルにしか感じられませんでした。

 一方、キャラクターの設定年齢が低いため、友情だの義侠心だのといった「見返りを求めない青臭いもの」が素直に出ていたのがいいですね。主人公のナノカは比較的考えが落ち着いているようにみえながら、その実「自分の視界に入る範囲での発想」にとどまっている点で、年齢相応の女の子という印象が強く出ています。このほか、彼女の周りにいる人物たちも似たり寄ったりであり、このために保護者であるスツーカの役がうまくでているといえます。なお、まっとうな形での恋愛はでてきません(少なくとも、主人公であるナノカが誰かと結ばれて…という展開はまったくありません)ので、念のため。

 逆に、私情を絡めることが醜悪な結果を生み出すのみであること、仕事およびその結果に対する評価を的確に行うことの重要さをも、また一面で示してはいますが、それが敵キャラであるはずのグリフェンが的確に提示しているのがなんとも。実直であるという「本来であればプラスと判断される」ことの多い要素のマイナス面を露呈させ、逆に人間の個性を冷徹に判断して合理的に行動するマキャベリズムの美学をてらいなく出している点もおもしろいところです。ネネの行動が、財を持てる者として正しい行動ではないことが、悪役によって示されているために、かえって「善が勝つ」といった単純なパターン化から免れているように見えます。

 ところで、市長の名前が「ズリアーニ」というのに対し、某大国最大都市の市長をダブらせてしまったのは私だけでしょうか。

ゲームデザイン

 ゲーム期間は1年間。基本的なスタイルとしては、街で基本的なアイテムを購入し、それを研究して新たなアイテムを発明し、それを制作したうえでお店にパテント付きで売り込んでお金を得る、というものです。アイテムを売り込むほどお店の商売の材料が増えて街が経済的に振興していく、という流れです。基本的なエンディングは2つに分かれます(バッドエンドなどのパターンについては確認していません)。ときどき、月末にステータスの確認画面が表示されます。

 作るべきアイテムのメニュー(ゲーム中では「レシピ」と呼ばれます)はデフォルトではごく少ないのですが、ゲームを進めていくうちに、依頼を受けたり、街を歩いているときに思いついたり、手元にあるアイテムを研究することで考えついたりします。特に、この研究をサボっていると、後半で重要なアイテムを依頼されたときに作れずに泣きを見ることになります。かといって、お金に余裕のない序盤で研究に没頭すると、下手をすると噴水の周りで小銭集めをするという情けない状態に陥ります(オレだけか?(^^;)。

 アイテムの制作は成功するとはかぎらず、けっこうな割合で失敗します。材料の補充が絶対にできない某改造銃の制作で失敗したときには思わず「マイガーッ!」と叫んでしまいましたよ(^^; 一応、何度も同じアイテムにトライすると、そのたびに成功率は上がるのですが、それでも4回連続で失敗してあっという間に貧乏になってしまったこともありました。成功するときには複数個できるのですから、失敗した場合でも最低1個は残すようにしてほしかったかな。また、ナノカの技術力そのものはパラメータ化されていないようなので、あるアイテムを作れるようになっても、研究したり町中で思いついたりしないかぎり別アイテムにはつながらないのがちょっと寂しいところ。さらに、アイテムの制作そのものが「楽しい」と思えず、発明にくらべるとどうしても義務的な作業という感触が強いのが残念です。

 依頼が入るタイミングはまことに頻繁ですが、これらはどうも街の復興には直接関係しないようです。その一方で、いくつかの依頼は、こなしておかないと後々の展開に非常に大きな影響があります。このタイミングのはかり方はなかなか難しいのですが、やはり「断るとヤバそう」な依頼はわかるので、これを重点的にこなしていくことになります。

 街の復興が進んでいくと、どんどん店が増えて人通りも増えていきます。また、寂れきっていた地域の再開発が行われるようになり、そのぶんだけ活動範囲も広がっていきます。ただし公共施設についてはどこに作るかを指定することができないとか、立地条件とあまり関係なさそうな商売がけっこう増えたりします(^^; まあこれはこれでご愛敬か。なお、経済的に大きな打撃を受けたりすると、急に店の数が減るということもあります。

不具合・修正ファイル

 いったん姿を消したはずのラファルーが再び登場するということがありましたが、ゲーム進行に支障のある問題点は今のところ見当たりません。

デモ・体験版

 デモムービーは、ゲームの紹介というよりはナノカの紹介ムービーと化しています。ほかの主要登場人物も一応ワンシーン程度出てきますが、ナノカ百面相とでもいったところが実情に合っているでしょう。

 体験版については、確認していません。

操作性など

 対応OSはWindows98/Me/2000/XP HomeEditionですが、WindowsXP Professionalでも問題なく動作します。

 メディアはCD-ROM1枚で、初回限定版はピクチャーレーベル仕様となっています。また初回特典として「ナノカ特製万能シート」というものがついてきますが、正直いって使い道ありません(^^;

 インストール時に消費するHDD容量は430MB強で、プレイ時にはCD-ROMは必須です。

 画面は、640×480ウィンドウ表示(フルスクリーンと切り替え可能)で、下部に半透明のメッセージウィンドウとフェイスウィンドウが表示されます。また上部に「システム」「ステータス」「アイテム一覧」「依頼の確認」「オプション」「マニュアル」の各メニュー、日付、時(朝/昼/夜)が表示されます。

 基本的な操作はマウスで行います。メッセージスキップの機能はありませんが、慣れや展開の把握には数度のプレイが必要であることを考慮するとやや不親切です。

 CGモードは、サムネイル形式で表示されます。BGMモードは曲名から選択する方式になっています。

サウンド

 音楽担当は、「馬場信繁」氏。ボーカル曲「UP TO ME!」は、なかなかノリのいい曲ですが、さして印象に残るものではありません。

 音声はパートボイスとなっており、演技はまずまずでしょう。

グラフィック

 原画担当は「駒都えーじ」氏。女の子はなかなかかわいいのですが、男がどうにも格好よくない…のは別にかまわないのかな。お肌の露出度は全般的にかなり高めですが、ある部分が絶妙に見えそうで見えない構図になっているのは狙っているとしか思えません(^^; いや、初めから穿いてないから見てないのかな?(^^;;;

 立ち絵は、ナノカに限っていえば、実に多種多彩な表情や姿勢を見せてくれるので、見ていてとても楽しめますが、ほかのキャラは基本的に顔が変わるだけで、場合によってマンガ汗(^^;)がタラー、という程度。また、ヴァルとレイグレットとが並んで立つと、体型のバランスが取れていないのが一目瞭然だったりと、ちょいちょい困ったところもあります。

 移動画面でのチップキャラはなかなかかわいいのですが、市民の顔が職業と一致していないことが多かったのが気にかかりました。どうして鍛冶屋がコックの服装をしているのか、など、あげていったらキリがありません。

お気に入り

 もともとキャラで引っ張るタイプのゲームでないこともあって、記憶に残りやすいキャラは少ないのですが、1人をあげればグリフェンになりますね。あと、テンザンの……………ノー・サー!もキいています(しかし、主人が女でも「サー」なのね…)。

 シーンとしては、グリフェンが人間の俗界を大きく逸脱した、危険な才能を持つ娘よ。お前はどこからきて、どこへ行くのか……と独りごちるところ。ナノカを一番的確に評価しているのがグリフェンであることを端的に示しています。まあこのシーンが印象的だという時点で、私がひねくれている証ともいえるのでしょうが(^^;

総評

 経営ものとしてはそこそこ楽しめ、イベントの数もそれなりにあって楽しめる作品です。

 その一方で、個別のキャラクターがどうにも薄く、それゆえにイベントもさほど印象に残りません。また、街の復興がビジュアル的に把握できるのが楽しい一方で、個別のアイテムそのものを作り込んでいくという楽しみがないため、制作が作業化してしまっている面が否めません。

 ひとまず、ほのぼのとした雰囲気を楽しめる小作と評するのが妥当と思われます。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2002年10月9日
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