藍色ノ狂詩曲 〜Deep Blue Rhapsody〜 SPEED

2003年11月14日発売
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 ピアノ演奏をする主人公と、そのまわりに出てくる女の子という設定がうかがえるパッケージ。そういえば、最近サウンドを前面に出しているゲームというのはあまり見かけないな、と思ったのが、手にするきっかけでした。なにせ、付属のサウンドCDには、ピアノの生演奏が収録されているという以上、かなり気合いを入れて作っているのだろうと思うのも自然でしょう。しかし、ゲームチョイスでの“自然”などという発想は、単なる甘ちゃんのいいわけにすぎないことを知ったのは、プレイ開始後数分を経たのちのことでありました。

シナリオ

あらすじ

 シナリオ担当は、三枝じゅんいち氏。

 主人公・灰谷鷹文(変更不可)は、プロのピアニストを目指して音楽学校に通う学生。海外留学の推薦をかけた発表会を前にして、彼は肉体関係を持っていたパートナーから拒絶され、途方にくれていた。ちょうどそのとき、コントラバスを演奏する転校生・藍子が現れ、パートナーに立候補する。何を考えているのかよくわからず、突拍子もない行動をすることの多い藍子に振り回されつつ、主人公はまわりにいる女の子たちにも目を向けるようになる。発表会の結果はどうなるのだろうか。

つながらない物語

 一見したところ、エリートコースを進もうとしている音楽家の卵が壁にぶつかって悩む、という展開を容易に予想しますが、実際には必ずしもそうではありません。しかし、意外な展開に進んでいくというよりはむしろ、本来悩むべきところには何らの配慮もなく、むしろ見当違いなところで妙な方向へと話がぶっ飛んでいく形になっています。

 具体的には、各ヒロインごとのストーリーを見ても、その個別のストーリーの中で、話がまったくつながっていないことが多いのです。つい昨日ナニしたばかりなのに久々に会ったように会話するなど、イベント相互がバラバラになっています。このため、上記あらすじに続いて各シナリオを説明しようとしても、ストーリーが破綻しているので要約不能というものが、だいたい全体の3分の2くらいを占めます。さらに、不整合があるだけでなく、陵辱したキャラがその後も顔色を変えずににこやかに話したりするので、“これまでプレイしてきたアレはいったい何?”という気になってきます。

 また、ブツ切れなのはイベントだけではなく、各登場人物の思考や行動からしてそうです。中でも主人公など、変態的なプレイで陵辱したり、毎朝望遠レンズと双眼鏡で覗きをしたり、紳士然としたり、いじいじと暗く悩んだり、わけがわかりません。性格に一貫性がないのは別にいいとしても、最初から最後まで人格が分裂しているかのごとく言動がころころ変わっては、そもそもストーリーを追っていっても、そこでどのような思考をするべきなのか、プレイヤーはまったくついていけないのです。性格が破綻しているから感情移入しにくいという主人公はいろいろなゲームでありますが、このゲームではそもそも“人格”なる概念を持ち出すことができないというレベルです。

 個別のシナリオでさえこのありさまなので、作品トータルの出来は推してしるべしです。別に各ヒロインごとのシナリオそれぞれで設定の整合性を取る必要はありませんが、何らかの矛盾があったにせよ、1回1回のプレイを終えているときにはそれらが感じられないようにするのが当然なのですが、とにかく型にはまったエンディングがあっておしまい。困ったものです。

 このほか、誤字もかなり散見されるのですが、上に述べたようなことに比べれば、些細な話です。

唐突な幕引き

 エンディングは各キャラクターごとにいくつかずつ用意されていますが、キャラクターのそれまでの流れとがまったくつながっていないエンディングが非常に多く、ラストで思い切り白けます。

 特にひどいのは聡美で、非常に重要と思われるパートをクリアせず、場合によっては聡美の母親を押し倒していたとしても、展開によってはハッピーなラブラブエンドになったりと、滅茶苦茶です。聡美一本で進めていった場合であっても、そもそも“発表会”という区切りに対するケリがまったくついておらず、どうして主人公がそういう「エンディング」を選択したのか、わけがわかりません。

 また、メイン級であるはずの藍子にしても、中盤以降の展開はわからなくもないにしても(かなり無理は残りますが)、やはりプレイ後に多くの不満が残ります。ラブラブになりながらHシーンが入らないうえ、素顔を見せてくれるようになったときにも、仮面をかぶっていたときのことをすべて明かすわけではないので、プレイヤーに不満が残ります。まあ、あの主人公なら、何も考えなくてもよいのかも知れませんけれどね。

人間関係って、何?

 パッケージを見ると、ラブラブと陵辱とが同居しているような印象を受けます。

 これは一応間違ってはいないのですが、陵辱についてはさておき、実際にラブラブな雰囲気があるのは藍子ルートの終盤ぐらいで、ほかはイベントシーンなどで唐突にヒロインが現れるというだけで、プレイヤー視点であるべき主人公からは恋人扱いされていないといってよいでしょう。もっとも主人公そのものが破綻しているのですが(苦笑)。

 さらに、パッケージには欲望と嫉妬そして狂気が交錯する…とありますが、“嫉妬”などほとんど出てきません。それ以前に、ほとんどの登場人物が腹に一物持っており、なかなか“素顔”を見せないのですが、これが終盤近くまで続くため、キャラクターたちへの思い入れなど欠片も出てきません。単なるやられキャラならともかく、メイン級となるはずの聡美でさえ、主人公のことが好きという以外のことは何も見せないのです。

 こんな状態で、破綻した主人公によるモノローグが終盤にえんえんと続くと、疲れてきます。

無意味なキャラクターたち

 最初に出てくるキャラなど、果たしてその存在が必要だったのかどうか、よくわかりません。いな、一応ハッピーエンドが用意されている夕菜にしても、聡美あたりと何らかのかたちで絡ませるものかと思いきや、実際には単なる数合わせ以外の何者でもない、取って付けたような存在になっています。

 いや、意味のアリナシで問えば、タイトルと名前がリンクしているだろうと思わせる藍子からして、女性のコントラバス奏者(実在するんでしょうか?)という稀少な存在であり、さらに秘密を抱えていそうな不思議少女という点でツカミに成功させていながら、やはり音楽という背景が実際にはほとんどなく、それを通じて主人公とどういう物語を作っていくのかという視点がみごとに欠けています。彼女が“音楽”という設定を最も純粋な形で表現するヒロインであることは間違いないのに、この扱いは残念なことこのうえありません。

 聡美にしても、“幼なじみ”という役回りをほとんど発揮していません。こういうキャラがいれば、それを媒介として主人公の持っているいろんな要素がプレイヤーにわかりやすく伝わるのが通常のパターンなのですが、実際には単に主人公に好意を抱く近所の娘に過ぎず、主人公のことなどほとんど知らないのではないか、とさえ思わせる描写。なんとかならないものでしょうか。

ゲームデザイン

 会話中の選択肢や移動先の選択によって分岐していくタイプのアドベンチャーゲームです。エンディング対象キャラクターは5人で、各ヒロインをそれぞれ追っかけていけばおおむねイベントが発生します。このほか、藍子とのレッスンする際の会話によって、彼女とのシンクロの度合いを上下させることができ、高いシンクロになればスキルが向上し、発表会で優勝することができます(会話は三択ですが、セーブ&ロードで楽勝)。難易度はさほど高くありませんが、百合子ハッピー(?)エンドが唯一難しくなっています。

 ゲームの作り自体はオーソドックスなのですが、音楽という設定が、残念ながらうまく活かされていません。音楽がシナリオの中心にないのはよいにしても、「パートナーを選ぶ」ということが先にあって、そのために音楽という題材を持ち出したものと思われます。それなら、レッスンなんていう要素を入れる必要はないと思うのですが。もっとも、主人公が演奏するのはピアノで、課題曲がG線上のアリアという時点でかなり無理があります。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、特に問題は発生していません。

デモ・体験版

 存在を確認していません。もともとパッケージを見ての衝動買いだったので、探せば見つかるかもしれませんが。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。CD-ROM1枚で、このほかにサントラCDがついてきます。フルインストール時に必要なHDD容量は約650MBで、プレイ時にはCD-ROMが必須となります。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示とを切り替えられます。下部にメッセージウィンドウが表示され、その左側に、メッセージの巻き戻しやクイックセーブ/クイックロードを行うボタンが出ます。メッセージスキップ(既読/未読の区別あり)は「Ctrl」キー押下によって行いますが、何度もリプレイするたびに押しっぱなしにしているのはちょっと辛いものがあります。セーブ&ロードは、任意の個所で*個所まで可能で、ゲーム中の日付および場所と実際のセーブ日時が記録されます。

 トップメニューからは「Album」に入ることができ、「CG Mode」(キャラクター別にサムネイル表示)、「Music Mode」(BGMモード。曲名選択方式)、「Replay Mode」(Hシーン再生。キャラクター別にサムネイル)となっています。Hシーン途中では中出し/外出しの区別がある場合が多いのですが、これらはReplay ModeでリプレイすればCG Modeで反映されます。

 操作の多くはキーボードとマウスの双方で可能ですが、キーボードの「Enter」キーを連打していると不本意な選択肢を選びやすいので、スキップする場合をのぞけばマウスで進めるほうが確実です。

サウンド

 サウンド担当は「ミューズアート」。バッハの「G線上のアリア」が課題曲となっているためでしょう、クラシック系統のサウンドが多用されています。素人耳の感想なのであまり踏み込めないのですが、単純に流して聴いているぶんには悪くないものの、ところどころ違和感が残ります。特に、演奏時にかかるサウンドでは、弦楽器(コントラバス)との組み合わせがどうにも不自然。

 音声は、主人公以外フルボイスです。総じて安心して聞いていられる声なのですが、ややシチュエーションと合っていないと思えるところが散見されました。もっとも、ゲームをプレイしていてもシチュエーションが理解できないことも多々あったので、これは高望みなのでしょうが(苦笑)。

グラフィック

 キャラクターデザイン担当は「ぷれしゃすている」氏。目にやや特徴がありますが、割とかわいい感じのキャラ絵ですね。もっとも、藍子だけは“謎めいた少女”という雰囲気を意識しすぎたせいか、妙に怖いような気が。立ちCGでは、どのキャラも表情の変化が大きくて楽しいほか、距離感に応じてズームアップしたり、左右に移動して位置関係を示したりと、なかなか工夫されています。特に藍子は意外にもいろいろな顔を見せてくれるのがよく、にこやかな顔や照れた顔は、実際には皆無に等しかった正常なシチュエーションがもし存在していたのであれば(英語の仮定法)、なかなか萌えられる絵になったのではないかと。

 背景画像はあまり印象に残るものではありませんが、さほど力が入っているようには感じられませんでした。

お気に入り

 キャラとしては藍子に尽きるのですが、多分に同情も入っています。ラブラブ度がいちばん高そうな雰囲気なのに、ハッピーエンドがないのはどうしてなのでしょうか。

総評

 個別のイベントを細切れにみれば、興味深いストーリーを作ることは十分にできたと思うのですが、それらをつないでいく主人公そのものに無理があるというその一点だけをみても、シナリオの完成度は非常に低いものにとどまっています。セールスポイントとしていたであろう音楽にしても、ただ主人公の説明として使われているに過ぎず、だから何だ、で終わってしまっています。

 一方、エロければよいではないか、という視点でみても、とても勧められるシロモノではありません。確かにHシーンの数だけは立派なものですが、ひとつひとつのテキストやシチュエーションに淫猥さがあまり感じられないばかりか、当人たちの思考がぶっ飛んでいるケースが多いため、興奮するどころか邪魔にしか見えない場合や、むしろ笑いを誘う結果になってしまう場合もあります。

 シナリオの出来以前の問題として、ソフトの“ウリ”になるのが何なのか、まったくわかりません。制作者には、たとえ開発当初にねらっていたものとは異なるものになったにせよ、何らかの形で見せるものを“作品”の中に込めてほしいものです。もっとも、作品ではなく“製品”としてしか見ていないのかもしれませんが。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
2004年1月1日
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