ふしぎ電車 デジアニメ・コーポレーション

2003年3月28日発売
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 どことなく“無限ループ アドベンチャー ゲエム”という表記に引かれ、かなり早い時点で目をつけていたゲームでした。夢がどうの何のといった“概念”を、ウンチクというフィルターを介して説明されては辟易してしまいますが、むしろ思考を無化することじたいを恐れず、流れをうまくつむいでいくというイメージを抱いたしだいです。

 ちなみに「電車」というシチュエーションにはさして動かされたわけではありません(実際、そちら方面での描写などはほとんどないので期待しないように)。現実では、夜行列車以外で1時間以上も待つなんていう時代離れした列車は存在しませんし。

シナリオ

 泥酔して目を覚ました主人公は、自分の名前も何も思い出せないまま、奇妙な路面電車に乗り込み、そこでさまざまな物語を経験していくことになる。謎の少女車掌や、誰ともつかぬ女たちと体を重ねながら、駅を出るとその記憶がいっさいない、そんな状態で主人公は時を過ごす。終点で降りた主人公は駅前の酒場で夜を明かすが、泥酔して目を覚ました主人公は、自分の名前も何も思い出せないまま……。

 無限に続く路面電車の旅は、いつまで続くのだろうか。

 

 路面電車に乗った主人公は、駅に着くたびに「発車するまで中で待つ/降りて町を散歩する」を選択します。

 「中で待つ」を選択すると、その時点での乗客あるいは少女車掌とのHシーンが始まります。ただし、散歩中に出会ったキャラとは、電車の中でHすることはできません。また一名のみ、電車の終着駅で降りてからHシーンに突入するキャラもあります。こちらのバリエーションはかなり限られているので、コツをつかめば簡単です。

 一方「散歩する」を選択すると、それぞれの町ごとにいろいろなイベントが発生します。こちらは各選択肢ごとにかなり細かく分岐し、それぞれにさまざまなシーンが見られるようになります。中には特定の展開を一度見てからでないと発生しないイベントなどもあるので、すべてを制覇するのはかなり大変です。

 主要イベントをすべて見ると、少女車掌とのHシーンになり(回避は一応可能)、さらにしばらくするとエンディングにたどり着きますが、エンディングはただ1つだけでゲームオーバーは存在しません。エンディング到達条件は具体的に何かは絞れていませんが(全CGを埋める前にエンディングに到達しました)、何というか、女は怖いというか……。何度も続けることではじめて出現するイベントもあるので、ポイントの見極めが重要です。難易度は並み程度でしょう。

 

 冒頭のあらすじ紹介で書いたとおり、終着駅に着いても自動的にふりだしに戻るようになっているため、何度も何度もしつこく繰り返すことになります。このため「見たことがあるようなシーン」を漫然と見ることになりますが、結果としてその世界で起きている、あるいは感じられることから、意味を求めずに済むようなスタイルになっています。

 “ふしぎ”の世界については、論理も文脈も否定した「宇宙」のイメージがなかなかうまく描かれています。物語なるものがそこでは拒否され、ばらばらのキャラクターによる“ゲームという世界”があるのみ、といった印象でしょうか。それが不条理であることを単純に楽しむだけでなく、そこに「記憶」というファクターを埋め込むことで、“主人公”という存在をも逐一相対化しています。

 その一方で、各イベントシーンをつなぐファクターが主人公と電車しかない反面、その主人公が「発想する展開」が世界そのものに没入していることが大前提となっているため、「傲岸さと小心ぶりとを内包したキャラクターが世界を構成している」ように見えてしまうと、とたんにゲーム世界が色あせてしまう危険があります。私には問題ありませんでしたが、キャラクターの“視点”に主体性があることを前提として考える向きには、まず合わないでしょう。

 

 Hシーンは多種多彩で、体位や状況(和姦/強姦)のほか、フェラチオからスカトロまで入っています。もっとも、数やバリエーションは多いのですが、それをシナリオの中でうまく使い切っていません。シーンを多く出しても、単に数が増えた程度にしか思えず、実際にエロティシズムを感じさせたり、現実感のなさをゲーム世界から感じ取れたりするための装置としては機能していません。

 Hシーンの数をもう少し絞り込み、そこへなだれ込んだのちの言動や行動から、その場のキャラクターを説明できるような展開にすれば、より淫靡な世界を演出できたでしょう。

 

 またエロを第一の基準としてのみ考えても、数だけ多ければいいというものではありますまい。加えて、Hシーンの個別描写がかなり陳腐である点も否定できません。

 それぞれのシーンを見ているプレイヤーを“刺激”するためには、展開の中でシーンをいかに活用するかを考えるべきです。しかしこのゲームでは、いわば鑑賞するにあたって前戯もナニもなくいきなりぶち込むような感があります。各シーンとも相互間の連続性が乏しいうえ、何度も何度も似たようなシーンを繰り返すという構成を取っている以上、時間をかけてゆっくりシーンを記述するようにするのがよかったのではないでしょうか。このシナリオには、テンポのよさが求められているわけではないのですから、なおさらです。

 

 個別のシナリオを見ると、イベントの発生のさせかた、そして各物語の(ゲーム世界内部における相対的な)リアルさの濃淡の差がかなりあるため、当初は相当に面食らいます。しかし、妙な生々しさと痛々しさを感じさせる展開(すなわち、物語を構成する“キャラクター”が存在する展開)と、単に主人公の発想の一部が具現化した展開(生身の“キャラクター”が存在しない展開)、およびそれらの中間的な展開などが入り交じっているため、1回の流れを終えるまでまったく飽きないところは秀逸です。

 ただし、さすがに数十回というスパンで繰り返されると、その新鮮さにも限度がきてしまうのですが、これはこれでいたしかたないところか。

不具合・修正ファイル

 コンプリートするまでの間に、強制終了で落ちることが1回、キーボード操作が正常にできなくなった(マウス操作は可能。ゲームを再起動させれば問題なし)が1回ありました。2003年4月1日現在、修正ファイルは公開されていません。

デモ・体験版

 デモがデジアニメ・コーポレーションのWebサイトで公開されています。各キャラクターの顔見せ+CG表示といった程度のもので“ふしぎ電車”および“無限ループ”がどんなものかをうかがいしることは無理でした。ただし、オープニングの曲が楽しいと感じた時点で、何だか終わっていたのかもしれません(^^;

 体験版については、存在を確認していません。

操作性など

 対応OSはWindows98/Mw/2000/XPです。CD-ROM1枚で、インストール時に必要なHDD容量は約300MB、プレイ時にはCD-ROMが必須です。インストールオプションなどはなく、インストール先のフォルダを変更できるだけです。

 画面はグラフィックが640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示との切り替えが可能です。下部にメッセージウィンドウが表示されますが、このウィンドウはシチュエーションに応じて細かく変わります。

 メッセージ読み返し機能、メッセージスキップ(既読/未読の区別あり)が可能であるほか、メッセージ自動送りや音声リプレイなどもできます。マウスのほかキーボードオペレーションも問題なく可能で、細かくカスタマイズできるため、プレイに際してストレスが溜まることはないでしょう。あとは、すでに選んだ選択肢、あるいは以前とは展開が変わる選択肢の色が変わるといった工夫があればなおよかったと思うのですが、そこまで望むのは酷でしょうか。

 セーブ&ロードは任意の位置で、30個所まで可能です。ただし実際にはセーブポイントが限定されているため、ロードすると実際にセーブした個所より少し前の場所から始まりますが、この場合はメッセージをスキップしてしまえばそれでいいだけなので、特に問題もありません。セーブすると、セーブ時の実日時と状況説明が記録されます。

 CGモード(ヒロイン別)はサムネイル表示されますが、立ちCGもすべて記録されるのがうれしいところ。Hシーン鑑賞モードも同様に選択表示できます。しかしサムネイルを見ていると、大半のイベントシーンがHシーンというのがわかり、なんとも(^^;

 なお、タイトル画面で少女車掌がしゃぼん玉を吹いていますが、このしゃぼん玉の中に攻略終了(?)のヒロインの顔が出ます。

サウンド

 BGMはCD-DAで演奏されます。オープニング曲がいきなりチンドン屋の定番である「竹に雀」なのが驚き。

 音声はなかなかハイレベルですが、少女車掌の“棒読み”は意図的なものなのでしょうか?

グラフィック

 原画は「がお」「タナカ」両氏。キャラ絵に原色系を多用することで、妙にサイケな雰囲気を出しているのが楽しいところです。ただしCGの大半はHシーンで占められていて、それ以外のシーンが妙に少ないのがちょっと残念。

 なお、ヒロイン以外の「その他キャラ」は、完全に黒子扱いで顔なし登場と相成っていますが、このあたりは『メロディ』をほうふつとさせます。

お気に入り

 少女車掌かな。ほかのキャラについては、主人公に見せている“表情”がどんなものか、それを常にうかがいながらプレイすることになったうえ、その物語が瞬間的なものであり、刹那的なものでさえない(何も残らない)以上、必然でしょう。

総評

 不条理の世界を、あくまでもただそれだけのものとして扱い、そこに狂気なりなんなりといった“独自の世界”を持ち込まずに作り、そして“無限ループ”という装置があくまでも淡々と使われており、ドロドロしたものへとプレイヤーを“強制的に”引き込むことを避けている点は評価できるでしょう。

 一方で、エロシーンの取り扱いに失敗したという感は否めません。量より質で勝負してほしかったですし、またそのシーンそのものを演出として使うという視点が欠落しているのが惜しいところです。“主人公の欲望の具現化としてのエロ”と“プレイヤーの欲望の具現化としての仮想的なエロ”とを安易に等値として扱った結果なのですが、これでは「エロ目的」としても半端モノに留まってしまいます。

 また、トータル面でみると、やはりボリュームが物足りません。確かにHシーンだけは多いのですが、それ以外の部分では「もう少し味わいたい」というシーンが多い多い。一回りするのにかかる時間がさほど長くないことも相まって、コンプリートしてもさほど達成感を強く感じることがなかったのも残念です。

 “ふしぎ”な“無限ループ”の作り方じたいはおもしろかったのですが、それを構成するシーンの作りが甘いのが惜しいところです。安易なエロてんこもりに頼るのではなく、不条理の世界のみを突き放して綴り、セックス以外の欲望をも交えていけば相当な代物になったと思えるだけに、非常に“もったいない”という印象を強く残します。雰囲気もいいだけに…。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2003年4月2日
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