イシカとホノリ AZURITE

2003年10月31日発売
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 ゲームの中には、タイトルを見ただけで興味を惹かれるものが多くあります。この『イシカとホノリ』は、まさにそんなゲームでした。イシカといいホノリといえば、一昔前に話題となった『東日流外三郡誌』、いわゆる和田文書をベースにしたものと考えるのがごく自然ですし、ヒロインたちが身にまとっているのがアイヌ風の服装らしいことから、“アラハバキ信仰”を題材としたフィクションなのだろうと思ったとしても無理ないことでしょう。さらに、シナリオと原画の担当が、以前『紫花 −しのはな−』(PL+US)というゲームを作っており、題材の使い込みが多少甘くても、それらしい雰囲気を作ってゲーム中で展開することには十分期待できると判断しました。

 しかし、そんな判断はまだまだ甘かったことを、ゲームを進めて痛感したしだいです。

シナリオ

あらすじ

 シナリオ担当は田代裕氏。

 主人公・アラカは、平和を乱す荒神とその眷属を調伏する「全国巫女派遣委員会」の専属巫女監視委員として、才能はあるがどうにも実力の見せ方がちぐはぐな双子の巫女、イシカとホノリを指導する立場にある。あるとき、東北の寒村で荒神の調伏に失敗したアヤカは、イシカおよびホノリと体を重ねてしまった。処女を失ったイシカとホノリは支配下の式神を失ってしまったが、2人の力を回復するために修行を重ねつつ、式神を回収していくことを義務づけられたアラカ。3人は無事に式神を回収し、荒神を調伏できるのだろうか。

設定倒れ

 あらすじを読めばわかるとおり、『東日流外三郡誌』など影も形もありません。隠しキャラとして「ガコ」が出てくるだろう(←マニアックすぎ?)という目論見が外れるくらいならいいんですが、東京を根城として、東北地方をイナカ扱いする認識を下敷きにしては、イシカといいホノリという名前を出しても、ちっともおもしろくありません。中央の神々からいじめられてきた神々に仕える巫女、といった設定のほうが楽しいと思うんですけどね。もともと神話で出てくる争いというのは、古代の地方政権相互の抗争に依拠したものだけに、“怪しい習俗が残っている地方”のレジスタンス的なものを期待するのは、求めるハードルが高すぎなのでしょうか。シナリオライター氏が『紫花』を作っているくらいなので、期待するのもおかしくはなかったと思うのですが…。

緊張感のカケラもない展開

 公式サイトには“ちょっとエッチな姉妹巫女の一大捕物帖”とありますが、2人が積極的に捕物に東奔西走するわけではありません。捕物をするというよりは、失った力を取り戻すために修行しながら、合間合間に敵と戦うという程度にすぎません。もっとも「ちょっと」どころではなく、スキあれば求めてくるんですが(^^;

 しかし、この修行のシーンに、緊張感がまるで見られず、毎日毎日ただ修行を繰り返すのみです。しかも修行中にはなぜか立ちCGがまったくなく、セリフがあるのみなので、退屈極まりありません。一応制限日数があるので、エンドレスで修行が続くわけではないのが救いではありますが。

ドタバタのない日常

 それでは日常シーンでは楽しいのかというと、せいぜい2〜3回程度イレギュラーなイベントが入る程度で、パッケージに書かれている式神回収ドタバタAVGといえるようなドタバタ劇がほとんどありません。修行そっちのけでのほほんと過ごすのならそれはそれでいいのですが、こちらもまた手薄。総じて、イベント量が絶対的に不足しています。

 また、ビジュアルの活用という面でも、決定的に失敗しています。冒頭で出てくる“村の地獄絵図”でとまどう3人など、周囲の異様な光景をきちんとかいておかないと、状況把握にも隔靴掻痒の感がつきまといます。

 話の流れそのものも、何がなんだかよくわかりません。ボスからの連絡で「これ以上私が介入する必要もないだろう」といったその翌週にまた連絡があり、「これ以上私が介入する必要もないだろう」と繰り返したり、まったく困ったものです。

白けるHシーン

 こういう項目をあえて作るのは初めてなのですが、これはいくらなんでもひどすぎます。ほぼ毎回のように「オマ○コ」やら「オチ○チ○」やらを口走り、そこでたびたび「ピー」音が入るんですが、一度や二度ならともかく、何度も何度も入るHシーンごとに卑語だけ連発されても、白けるだけです。Hシーンの数が多いだけに、邪魔に思えて仕方がありません。

ゲームデザイン

 イシカとホノリの2人を修行を通じて鍛え、戦闘を要領よく行ってクリアしていくゲームです。

 ところが、通常の修行のパラメータの類がまったく出ないため、何をどうすればいいのかさっぱりわかりません。一応、同一メニューの修行が進行すると会話内容が多少変わり、またそのメニューがすべて終わると選択肢から消えるといった程度の変化はありますが、限られた日数でどのようなことを2人に対してすればよいのか、まったく見当がつかないのです。

 また修行名目で、2人のどちらかとHするのですが、これは単にどちら方面に流れていくかというだけで、おそらく戦闘でのパラメータとは関係ないでしょう。毎週Hしていくので、こちらの数だけはけっこう豊富です。

 戦闘では、一応見方側の体力値が示されるものの、相手側の体力値がまったく表示されません。さらに、戦闘ではイシカがまったく無能力同然(マニュアルに記載の技もバグのせいか発動しません)、3人が全員「防御」しても敵が大きなダメージを受けることがある、などなど、バランスがめちゃくちゃです。戦闘メインのゲームではないといえばそれまでですが、最低限“クリアできる”そして“クリアしたという満足感を得られる”程度のものにしてもらわないと困ります。

 アドベンチャーパートについては「シナリオ」欄に書いたとおりですが、ボリューム皆無とまとめることができましょう。

不具合・修正ファイル

 ゲームが強制終了することやセーブ&ロードの不具合などはないものの、展開の不整合や戦闘バランスのまずさなどが多く目立ちます。AZURITEのWebサイトに修正ファイルがアップされていますが、これを適用しても問題が多く残っています。

デモ・体験版

 デモムービーがAZURITEのWebサイトにアップされています。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XP。CD-ROM1枚で、プレイ時にはCD-ROMは不要です。インストールに必要なHDD容量は約575MBです。初回限定版には、卓上カレンダーとブックレットが付属しています。

 画面は640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替えられます。メッセージスキップ(未読・既読の判別あり)、テキスト履歴表示、テキスト表示速度設定など、基本的な機能は備えています。ただし問題なのは、これらの諸設定は、ゲームをいったん終了するとクリアされてしまい、2回目以降には再度設定しなくてはいけないこと。毎回設定するのは非常に面倒なのですが、iniファイルも作らない仕様というのは困ったもの。セーブ&ロードは戦闘中以外の任意の位置で、18個所で可能です。もっとも分岐が少ないうえに迷いにくいので、ゲーム中断以外でセーブすることはないでしょう。

 トップメニューの「おまけ」からは、CG閲覧、回想録、音楽鑑賞の各モードに入れます(前2つはサムネイル表示)。ただしバグのせいでしょう、シーン回想では見ていないシーンを最初からいくつか見ることができたりします。

サウンド

 サウンド担当はHIKO/えびち氏。ボーカル曲が2つ入っていますが、オープニングは論外、エンディングの「宵待ち」はボーカルを前提としているとは思えないメロディラインなのが困ったところ(ボーカリスト嬢はよくがんばっているんですが…)。ポップな感じの曲が多く、単体で聴けば悪くないのですが、ゲームの雰囲気とはあまりにミスマッチなものが多いのが何とも。

 音声は、女性がフルボイスです。音声のレベルはけっこう高いのですが、そのもととなっているテキストがあんまりなので……。

グラフィック

 原画担当は日向悠二氏。ぺったん娘、としかいいようがありません(^^; パッケージ絵の雰囲気はよく出ていますが、線がくっきりしすぎているような気もします。明確なアニメ調のセル風彩色にはあまりあわないと思うのですけれど。

 ただし、表情のパターンこそいくつかあるものの、立ちCGでは各キャラごとに姿勢のパターンは1つしかなく、生き生きした感じがまったくありません。ごく少ないイベントシーンで見られる2人の表情などはよいのですが、それらを活用すべき舞台がないですし(苦笑)

お気に入り

 そんなものが生まれるはずもありません。

総評

 設定の使い方以前の問題として、ストーリーそのものができていません。絵は決して悪くないのですが、これも“美しい”というよりは“かわいい”系統のグラフィックなので、萌えの喚起が必要かと思われるのですが、シチュエーションを描写しきれておらず、キャラがまったく立っていないために、ちっとも有効活用できていません。

 使えそうなネタとして『東日流外三郡誌』を偶然知り、それをもとに適当にあれこれいじったところで時間がきてしまったのでリリースした、としか思えません。このブランドの次回作は、果たしてあるのでしょうか。あったとしても、私が手に取る可能性は非常に低いと思います。

個人評価 ★★☆☆☆ ☆☆☆☆☆
2004年2月1日
Mail to:Ken
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