静寂は闇の調べ Remain

2003年5月30日発売
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 ブラックとマルーンを使ったパッケージイラストが醸し出す、落ち着いた雰囲気に飲まれるように手を出したのが、このゲームです。また“静寂”ということばに興味を抱き、パッケージ裏の心の中に神と悪魔を宿してますというキャッチコピーから、登場人物それぞれが持つ二面性のようなものを打ち出しているのだろうと期待してプレイしました。が……。

シナリオ

あらすじ

 シナリオ担当は、玄界灘熊五郎/志雄風月/藤村赤の各氏。

 時は敗戦後の混乱がなおやまない日本。軍人だった主人公・穂積尚治朗(変更不可)は、自分の両親は実の親ではないことを、ある日舞い込んだ手紙から知ることになる。その手紙を書いた父親は地方の富豪で、余命が長くないこともあり、遺産を譲りたいという。なんとも釈然としないものを感じながら、受け取る気などまったくない遺産を放棄するために屋敷に向かう尚治朗は、幼いころによく遊んだという従妹の娘に出迎えられる。もてなしを受ける彼だが、しだいに悪意に満ちたさまざまな“警告”を受けることになっていった。

ホントに戦後?

 この種の、ある特定の時代をベースにした作品となると、その当時の世相がゲームの中で伝わってくるべきでしょうし、そこでにじみ出てくる世界の妙を感じるのがひとつの楽しみとなります。

 シナリオの時代背景は、敗戦から5年後となっていますが、それをうかがわせる描写はほとんどありません。戦後の混乱期であるにもかかわらず比較的物資が豊富で列車も空いているなど、やや首をかしげさせられるところがありますが、あまり気にしなくてもかまわないのでしょう。ゲーム評価には直接関係しないとは思いますが、ちょっと肩すかしを食らった観はあります。

嘘ではないけど…

 パッケージには「インモラルサスペンス」とあり、一見ホラー調の雰囲気がありそうですが、実際には大して怖い展開ではありません。オーソドックスなサスペンスドラマといったところです。一応「インモラル」なネタが仕込まれてはいるものの、この種のゲームではお約束の“女性の扱いに関してインモラル”といったものはありません。嘘ではないのですが、パッケージを手にした人は、ほぼ100%誤解するのではないでしょうか。

 ではサスペンスものとしておもしろいかというと、これもパッとしません。特に緊張感が肌に伝わってくるわけではなく、話は比較的淡々と進んでいる観があります。日を追うごとに、主人公の身に不可解な出来事がかぶさってくるのですが、これらのイベントが登場人物たちの描写とうまくリンクしておらず、プレイヤーはやや物語から置き去りにされているという展開になります。

サスペンスとマルチシナリオの両立で失敗

 各シナリオごとに見たキャラクターの使い方も、ずいぶん弱いものです。攻略対象となるヒロインは6人いるのですが、家庭教師やら賄いやら、物語の核心に触れないどころかいなくても大差ないキャラが複数いるため、順次攻略していっても先がさっぱり見えず、かといって次のシナリオにつながるなにがしかの情報を得られるわけでもなく、単なる数あわせのシナリオが用意されているにすぎません。ゲームを進めていくと“謎解きはどうでもいいから恋愛を楽しもう”となっては、困ってしまいます。

 物語の核心に迫るキャラクターのシナリオはまだまっとうなものです。しかし、実際には核となる設定がさほど複雑なものではない(これ自体は別によくも悪くもありません)にもかかわらず、その設定解決が複数ルートで細かく出されるために、ひとつひとつの話が非常に薄っぺらになっています。比較的単純な設定がベースになっているのであるなら、各キャラごとの視点によって終幕への展開を変化させることを優先させ、1つのシナリオを終えるだけで設定を明らかにさせてしまったほうがよかったでしょう。もっとも、視点の切り替えによる多面描写というものはかなり難しいものですから、実際には設定を深めて、複数シナリオで分散させるに耐えるボリュームのイベントを配置するのが妥当だったと考えます。

イベントにも少なからぬ矛盾

 ストーリー展開だけでなく、個別のイベントにも矛盾したものが多く見受けられます。明らかに話の流れを阻害するものではないのですが、キャラクターの行動に説得力がなくなっているのは事実です。細かいことは気にするな、という姿勢でないと、とてもではありませんが最後までプレイする気になれません。

薄めのキャラ味

 それではキャラ萌えするかとなると、これもかなり微妙なところです。定番を通り越してテンプレート化されたようにさえ見えるキャラクターが並んでいるのですが、主人公側からのアプローチがさっぱり見えてこないので、気がついたらいつの間にかラブラブということになっており、何がなにやらわかりません。

 シナリオによっては、2日目以降はまったく選択肢が出現しないものもあるのですが、それがかえって展開の自由度を奪っているようにも思われます。キャラクターの行動や発言などが、シナリオ展開をうまく説明しきれておらず、存在意義がよくわからないイベントが続くこともあって、さほど長くはないシナリオなのに、プレイ途中でダレがきました。

 テキストは比較的安定しており読みやすいのですが、一部デバッグ用のコードらしきものがかいま見えました。地のテキストがしっかりしていたからいいようなものの、テストプレイに甘さがうかがえます。

設定に関するツッコミ

 ちなみに、設定に関してもけっこう問題があります(以下、ネタバレになるので文字色を背景色と同じにします)。「業病」や「天刑病」とは、大正から昭和初期にかけて、らい病の通称として用いられてきました。前世の悪事が現世で露出したというニュアンスがあり、これはらい病に対する偏見がベースにあることは説明不要でしょう。感染力が強いという誤解があったり、警察権力による暴力的な強制隔離があったりしたこともまた事実です。ところが、外国での治療云々という記述がありながら、実際にはそれが“選択肢としては絵に描いた餅”と扱われているのがどうにも腑に落ちません。らい病の特効薬であるプロミンは1941年に開発されており、外国での治療そのものは問題なく可能でした。もちろん、渡航が可能だったかどうかは別問題ですが、その点については障壁とはされず、治療法のあるなしが話題になっているのは不可解そのものです(日本国内でも1949年に認可されていますが、実際に末端の患者に行きわたるにはタイムラグがあったと解しておきます)。資産家が外に患者を出したくないために隔離するというのは理解できますが、あのオチでは「最後に手段を選ばずに助けたい」という切迫感を感じろといっても無理な話です。

ゲームデザイン

 攻略対象キャラクターごとにシナリオが用意されているアドベンチャーゲームで、攻略できる順序はある程度固定されています。初日にどのルートに進むかが決定しますが、これが非常にわかりにくい。選択肢の内容および結果がキャラクターの行動とあまりリンクしておらず、適当に選択しても意図しないルートに入りやすいのは難点です。初日の選択肢の数自体は多くはないので、総当たりで調べれば済む話ではありますが。

 1回選んだ選択肢は、色が変わって表示されるので、選択肢が新たに追加された場合などに判別しやすいのは便利です。その一方で、選択したあとで関連するキャラクターの好感度の上下が表示されることがあるのですが、実際にプレイした感触ではフラグの有無で進行しているようにしかみえません。

不具合・修正ファイル

 ゲームの進行に影響をおよぼすような不具合には出会っていませんが、ゲームのプレイ中に謎のコードが突然表示されることがありました。

デモ・体験版

 いずれも、存在を確認していません。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XP。CD-ROM2枚組で、マニュアルには「起動ごとにDISCを要求されることがございますので、必ずDISCはお手元近くにおいてください」とありますが、実際にはプレイ時にはCD-ROMは不要です。インストールに必要なHDD容量は約1GBです。

 画面は640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替えられます。株に半透明のメッセージウィンドウが表示されますが、フォントが細ゴシックのみで変更不可というのは、ノベルタイプのゲームとしてはやや不親切です。メインウィンドウ上部のメニューのほか、キーボードショートカットも多く用意されており、セーブ、ロード、画面表示切り替え、メッセージスキップ、バックログ表示、オートプレイを制御できます。セーブ&ロードは、任意の個所で49まで可能で、ゲーム中のイベント名と会話内容、およびセーブ時の実日時が記録されます。

 トップメニューでは「はじめから」「つづきから」「おまけ」「終了」の各メニューが表示され、「おまけ」からは、CG閲覧(キャラごとにサムネイル表示)、回想(Hシーンのリプレイをサムネイルから選択)、音楽(曲名を選択)を選択できます。

サウンド

 サウンド担当はsash/NAO両氏。ボーカル曲が1つ入っています。落ち着いた感じの曲が多く、シリアスなシーンにはなかなか合っていますが、日常のどたばたとはややズレた感じがしました。やや重厚な雰囲気のものが多くなっています。

 音声は、女性キャラの多くがフルボイスとなっています。比較的安心して聞けるものですが、ベースとなるテキストがやや寒いものなので、あまり好印象は受けませんでした。

グラフィック

 原画担当はKEG氏。立ちキャラが見せる微妙な仕草の変化がなかなかうまく描けています。その一方で、一枚絵になるとどうにもバランスの崩れが気になりました。ただ、背景画像が軒並み暗いうえ、服装も紺や黒が多用されているため、首だけ背景の中にぽっかり浮かんでいるように見えるなど、背景との重ね合わせがどうにもよろしくありません。

 背景は上部と下部には表示されず横長という、なんだかDOS時代を思い出させるようなデザインになっていました。古くささをこうやって表現していたのでしょうか?

お気に入り

 特にありません。

総評

 地方の資産家によるリッチな生活の雰囲気がよく出ており、のんびりした展開の部分を見るかぎり、決してつまらない作品ではありません。しかし、物語の核心部分へのアプローチがよろしくないため、個別のストーリーからは情報を得られるものの、印象にはまったく残らないままに終わってしまいます。 最後はいちおうきれいにまとめてはいるのですが、プレイをしている最中に「なんで?」と思うことが一度や二度ではなく、どうにも困ったものです。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2004年2月1日
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