ゆきうた Survive/Frontwing

2003年12月19日発売
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 年の瀬も押し迫ったころ、積みゲーの処理に追われつつも、そろそろ新しいゲームをプレイしないといけないな、と思っていたときに目に入ったのが、この『ゆきうた』でした。良質の学園恋愛ものから遠ざかっていたこともあって、割とやさしげなタッチのグラフィックにも好感を抱き、バグなどがないかぎり致命的な問題はないだろうと判断して手に取りました。

シナリオ

あらすじ

 シナリオ担当は、藤崎竜太/ヤマグチノボル両氏。

 主人公の長谷川秋臣(変更不可)は、クラスメートたちと学園生活を送っている。そんなある日やってきた転校生は、幼い日に主人公とともに遊んだ娘だった。楽しい毎日を送る彼が女の子とつきあうようになると、彼は壁にぶつかることになった。その街には大きなモミの樹があり、心の底から本当に叶えてほしいと念じれば、願いを叶えてくれる、という。本当なのだろうか。そして、願いが叶ったときに起きる“奇跡”の実態とはいかなるものか。

宙に浮いた悲劇

 私は事前情報もほとんどないまま、ただ単に目にしたときのフィーリングだけで買ってしまったのですが、どのルートでも、前半の共通パートではおバカな会話を登場人物たちがかわしていきながら脳天気に進み、後半の個別パートでシリアスな展開へとつながっていきます。しかし、この“シリアスな展開”というのがくせ者で、素直なハッピーエンドにつながっていくとは限らないだけでなく、むしろ、願いが叶うということを逆手に取った展開になっています。このためどのルートに入っても、“奇跡”ということが容易に起きるものではないことが盛んに強調されます。

 しかし、実際には“奇跡”が安売りされないことに重点が置かれる一方で、何らかの代償が求められることばかりが繰り返され、そこで発生する事件に関する登場人物たちの心理描写が決定的に欠落しています。単に、清水の舞台から飛び降りようかどうしようかと思う程度に留まり、思いを遂げるためにとにかく行動あるのみ、と猪突猛進で進んでいます。

 これは、一見したところ、自己犠牲的な精神の発露と見えなくもないでしょうが、実際には各人物が勝手に暴走し、その歪みが極限にきたところで一刀両断されるというストーリーになっているに過ぎません。ゲームという狭い世界の中でプレイヤーが把握できる状況にはかぎりがあるわけですが、「どうしてそういうことを今までごまかしていたんだ?」と首をかしげざるをえない展開が大量にあります。因果応報とまではいきませんが、悲劇を語る背景に、登場人物たちが抗えない何かがあったようには思えないため、何ともしらけたままでエンディングになったものもありました。エンディングがまずあって、キャラがそれに沿って進んでいるだけでは、それに付き合わされるほうはたまったものではありません。

自縄自爆ヒロイン

 ヒロインの側からみた場合、ほとんどのルートでは、多くの障壁を乗り越えて主人公と結ばれていく過程そのものを、しっかりと受け止めていなかったと断言できます(合格点と呼べるのは由紀だけでしょう)。主人公側には重たい設定が少なく(伯母さんが説明する段階になってはじめて出てきますが)、一方でヒロイン側にさまざまな足かせがあるという形になっているにもかかわらず、ヒロインが徹底的に受け身の姿勢になっているのが気にかかります。

 もちろん、さまざまな制約の中でいろいろと行動を工夫しているのは理解できますが、主人公に対する中途半端な気兼ねのせいか、かえって事態を悪化させているケースが多いのです。この事態悪化に対する反動が、ヒロイン側では消化されることなく、作られた“悲劇”の中に飲み込まれてしまうのは、何とも納得いかないものがあります。

あんた、何やってんの?

 また、各ヒロインの描写も、一般的にリアルに描こうとする傾向がある一方で、行動に無理が見られます。例えば盲目のヒロイン・由紀との出会いは、主人公が自分のバイクを歩道に置き、ここに彼女がぶつかるというところから始まるのですが、杖で足下を絶えず確認しながら歩いているという描写がありながら、バイクに腹からぶつかって尻餅をつくというのは無理があります。

 由紀の症例にしても、網膜色素変性症の場合、そもそも視神経を移植(これも、技術的に可能かどうかわかりませんが)して治るはずがありません。おそらく網膜移植を行うほかないでしょうが、さほど規模が大きいとも思えない病院で行うことがはたして可能なのでしょうか。しかも、手術の痕もほとんど残らないまま、たったの一週間で退院できて一人で出歩けるとなると、もうむちゃくちゃです。

 これなどは“見なかったことにしよう”と済ませてしまってもストーリーの流れには影響しませんが、弘美先生などは設定と立場とのギャップがそもそも大きすぎます。不老不死という設定で居場所を転々としているとしながら、どうして堅い職業の代表格である教員などになったのでしょうか。また共通パートでその日の気分しだいで授業を勝手に自習にしたと思うと、別のシーンでは仕事をする立場であることをえんえんと語るなど、むちゃくちゃです。このほかにも、重要なイベントの翌日に、顔色を変えずにほぼ通常通りのそぶりですんなり返すなど、各イベント相互間の整合性がまるで取れていません。

名無しはいやぁ

 また、物語の鍵を握る話をおさえている伯母さんの名前がないのも、やや不自然な気がします。確かに、主人公から見た呼び方は「おばさん」で済んでしまうのですが、立ちCGがあって重要な会話をするキャラだけに、メッセージウィンドウに「伯母」と表示されるのは違和感があります。このほかにも、シナリオの作りとは別次元の話ではありますが、演出面への配慮に欠けたテキストだな、と思えるところが多々見受けられました。

ツボの狭い日常会話

 日常生活でのお気楽な会話については、好みがわかれるところでしょうが、私にはちっともおもしろいと思えないシーンのほうが多いように思われます。何十年前のギャグだよ、と思わずつぶやいてしまったことがあるほか、登場人物たちのおバカさが、むしろ日常生活における行動の単純化を助長しているように思えてなりません。

 いや、日常生活だけでなく、菜乃など、Hシーンでバカなことを言っているので思い切り萎えました。それが強がりの表現だということはわかるのですが、あの場面でああいうことを言われたら「………やーめた」となるほうが自然のように思えます。

答えの出ないエンディング

 主人公ラブラブなヒロインがまわりを取り囲んでいるのはいいとして、主人公が惹かれていく過程の描写が希薄であり、このためにエンディング間際の主人公のさまざまな決心が、取ってつけたように思えてなりません。

 これは、“奇跡が何らかの代償を必要とする”という設定がまず最初に据えられた結果、そこでストーリーの中で求められる“悲劇”がけっこう安直に作られてしまったせいではないか、と考えます。

 別にハッピーエンド至上主義を唱えるつもりなど毛頭なく、むしろ大団円をのぞいた形でのまとめ方のひとつの試みだとは思いますが、そこへの展開が、不可避であるがゆえの悲劇性に欠けており、むしろ短絡的な行動による自爆としか思えないエンディングが少なくないのはいただけません。登場人物がポジティブに成長しようとする動きの見られる由紀ルートが唯一まともですが、あとは「どうしてそうなる?」と思うことしきりでした。

 最終的な結論を明確にせず、プレイヤーの前に出す情報を制限することによって、物語を美しくするというタイプのストーリーであればともかく、徹底的に散文的な本作品では、主人公とヒロインとの双方が、“事件”の顛末をどう受け入れた(あるいは、受け入れられなかった)かを書く必要があったでしょう。

 さらに、ハッピーと思えるエンディングとバッドと思えるエンディングとの格差がいまひとつ明確でなく、これの分岐となる選択肢に必然性が乏しい点も指摘できます。ゲームデザインありきというのはわかるのですが、終盤での盛り上がりに水を差しかねない、取って付けたような“バッドエンド”には、不自然さがぬぐいがたく付きまとってしまいます。

ゲームデザイン

 学校生活を送っていく中でイベントを発生させていくタイプのアドベンチャーゲームで、攻略対象キャラは5人です。

 昼休みおよび放課後の移動先でヒロインと出会いイベントを発生させますが、だれがどこにいるかは地図上でアイコンが表示されるため、迷うことはありません。各キャラクターのルートに入るまでの共通ルートの部分はかなり長いのですが、実際には追いかけるキャラを絞らないとエンディングには行けないため、オンリープレイが要求されます。会話中での選択肢は比較的多く、前半の共通パートで選択ミスをすると即コースアウトするため、最初の数回は汎用バッドエンドを繰り返すことになるでしょう。

 後半の個別パートの選択肢はごく少ないのですが、1人のキャラに対して軒並み複数のエンディングが用意されているため(必ずしも、ハッピーとバッドが1つずつとはかぎりません)、個別ルート最初の選択肢が出た時点でセーブし、2回に分けてプレイし直すことになります。難易度はやや高めといったところでしょう。

不具合・修正ファイル

菜乃のエンディングのうちの一方で、目が覚めた直後に目を覚まさないという展開になっており、さっぱりわけがわかりません。おそらく、もうひとつのエンディングと混在しているものと思われます。2004年1月3日現在、修正ファイルは確認していません。 

デモ・体験版

 デモがServive公式サイトで公開されています。ただしこのゲームの雰囲気をつかむには、デモよりも体験版のほうが適していると思えるのが残念です。

操作性など

 対応OSは、Windows98/Me/2000/XP。CD-ROM2枚組で、マニュアルには「起動ごとにDISCを要求されることがございますので、必ずDISCはお手元近くにおいてください」とありますが、実際にはプレイ時にはCD-ROMは不要です。インストールに必要なHDD容量は約1GBです。

 画面は640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替えられます。株に半透明のメッセージウィンドウが表示されますが、フォントが細ゴシックのみで変更不可というのは、ノベルタイプのゲームとしてはやや不親切です。メインウィンドウ上部のメニューのほか、キーボードショートカットも多く用意されており、セーブ&ロード、オートプレイ、メッセージ読み返し、既読メッセージスキップなどを制御できます。セーブ&ロードは、任意の個所で49まで可能で、ゲーム中のイベント名と会話内容、およびセーブ時の実日時が記録されます。

 トップメニューでは「はじめから」「つづきから」「おまけ」「終了」の各メニューが表示され、「おまけ」からは、CG閲覧(キャラごとにサムネイル表示)、回想(Hシーンのリプレイをサムネイルから選択)、音楽(曲名を選択)を選択できます。

サウンド

 サウンド担当はclip氏。ボーカル曲が1つ入っています。落ち着いた感じの曲が多く、シリアスなシーンにはなかなか合っていますが、日常のどたばたとはややズレた感じがしました。。

 音声は、主人公以外フルボイスです。比較的安心して聞けるものですが、ベースとなるテキストがやや寒いものなので、あまり好印象は受けませんでした。

グラフィック

 原画担当はFMO氏。一枚絵ではかわいいのですが、立ちキャラとなると姿勢が妙に不自然と感じられることが多かったように思われます。

 背景画像はパッとしない……どころか、かなりひどいですね。パッケージに描かれたレベルのグラフィックを期待していると、大きくはずすことは間違いありません。

 全般的に塗りがあまりにも淡泊で、平板であるうえに安っぽい印象が否めません。派手派手にせよとはいいませんが、物足りないのが残念です。

お気に入り

 特にこれといってのめり込めるタイプのキャラが出るようなゲームではないのですが、一人あげるなら由紀ですね。

総評

 話の展開にいろいろなレベルで無理を感じることのほか、エンディングで各ヒロインが受け入れるべきことをすべてカットしているため、単に後味のよさ/悪さということにとどまらず、尻すぼみで納得のいかない形で幕を引いているように感じられます。

 設定のよしあしに踏み込む以前に、描写不足が最初から最後まで徹底してしまった点が致命的だったといえるでしょう。

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
2004年1月3日
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