FESTA!! -HYPER GIRLS POP- Lass

2005年12月16日発売
 

 パッケージに多数の女の子が踊るという、これでもかといわんばかりの典型的な萌えゲースタイルを出していた作品。学園を舞台とし、なおかつ学園祭に向かって盛り上がるというのは定番ともいえますが、それだけにどのような盛り上げかたを試みているのか。発売からかなり経ったのち、そんなことを思いながら手に取ったゲームです。しかし、プレイ開始後1分で中断、長らくお蔵入り同然になっていたゲームでもありました。ムダに画面をぐるぐる動かすオープニングで頭痛、その直後に何もなかったように話を進めているのですが、いったい何の意味があるのでしょうか。ゲーム評価への影響は微少なものですが、これだけで投げ出した人もいるのではと推測されます。あと、鎌を持ったブルマー少女は攻略できませんので念のため。

 ところでこのゲームの表記、メインタイトルとサブタイトルの双方が「英字+英字」「カタカナ+カタカナ」「英字+カタカナ」の3パターンを確認しており、どれが正式な表記なのやら、非常にわかりにくくなっています。ここでは、Lassの公式Webサイトに記載されている「名称」の表記に従いました。

あらすじ

 父親の海外出張を気に、生まれ故郷のまほろば市に転居してきた黒田孝弘(固定)。彼が駅を降りて最初に目にしたのは、街を二分しているオレンジ色の点線と、大鎌を持った謎のブルマー少女だった。呆然としていた彼に抱きついてきた幼なじみ・恋水、そのじゃれつきぶりを見て驚くやはり引っ越してきたばかりの少女・奈々子。気があって話が弾んだ3人だったが、実はこの街は破線を境界として御剣町と鏡町に分かれており、相互の行き来はできないのだという。なんと、この境界線は街のいたるところに延びており、それが行動を制約していたのだ。孝弘はどんな学校生活を送ることになるのか。

 シナリオ担当は、LEGIOん、みなみかなか、剣技マナの各氏。

ゲームデザイン

 選択肢で分岐していくほか、進めるイベントによってエンディングが決定されるタイプのアドベンチャーゲームです。実質的には最初といえる選択肢で御剣町側と鏡町側に分かれ、ここで攻略対象キャラが完全に絞り込まれます。いずれのルートに入っても、学園生活パートになると「ストーリースティック」というストーリー選択モードが出現し、これを選択していくことでストーリーが作られていきます。

 さらに、主要キャラクターのエンディングをすべて見ると、トゥルーシナリオともいうべきルートに入ります。ただし、このルートに入れるようになるまでの作業感が強いことに加え、トゥルーシナリオそのものも盛り上がりに欠けるので、あまり達成感はないでしょう。主要キャラクターと呼べるのは6人で(千神姉妹、似非巫女、犬娘、博識眼鏡、アホお嬢)、このほか4人のエンディングが用意されています。サブ系のうち1人はバッドエンド要員、3人はあるストーリーを選択して出現する選択をすると唐突に終わるという形になっています。

 難易度はやや高めで、ポイントをつかまないとストーリースティックの選択で泥沼にはまる公算大。ある程度リプレイを重ねればパターンは読めてくると思いますが、そもそもリプレイするだけの気力が持つかどうか。特に、ストーリースティックに表示される「重要度」というのがくせ者で、これを真に受けて選択していてはまずエンディングにはいけないと思われるルートがあったりしますのでご注意を。

シナリオ

どこまでが不思議なのか

 「あらすじ」で説明したとおり、主人公が降り立った駅前広場にはいきなりオレンジ色の点線(グラフィックではどう見ても破線です)が引かれており、それが2つの勢力の境界線になっているというところから話がはじまります。これに加えて、さらに鎌を持った謎のブルマー少女が出てくるなど、いきなりカオティックな展開となります。

 しかし、その展開が登場人物の心理なり行動なりとリンクしておらず、どうにも「これって重要な設定だから覚えておいてね」的な説明くささが拭えません。不条理な街という設定を使うのであれば、余所者(主人公の生まれ故郷とはいえ、彼は出身地のことをほとんど覚えていません)である主人公が戸惑う描写も不十分そのもの。主人公とゲーム世界の関係が把握できないため、結局ゲーム世界をどのように評価すべきなのかが伝わってきません。一応、序盤で登場する奈々子がゲーム世界を相対化する役を担ってはいるものの、彼女もただ呆然とするだけのことが多く、やはりゲーム世界を理解させるに足るものではなくなっています。

 ヘンな世界なのはわかっても、それとどう付き合っていくことになるのかがわからないまま、いわば雲の上を歩かされるような形でゲームを始めることとなります。

御剣町 ―― 分断されたのは街だけではなく ――

 主人公の居住地として御剣町を選ぶと、主人公と同様の転校生である千神姉妹、銃を振り回す似非巫女である凛のいるルートへ入ります。このうち、ここでは奈々子以外のルートについて触れます。

 端的に言えば、御剣町ルートではストーリーの濃淡がキャラごとに大きいうえに脈絡に乏しく、とても話を楽しめるものではありませんでした。ストーリースティックを選んで表示されるイベント相互のつながりに乏しいものが多く、また前後の関係が明らかにおかしいケースがあってもスルーしていたところを数個所確認できています。デザイン面で凝ったものにしようとしたものの、それに見合う形でストーリーの整合性を取ることができなかったもよう。

 もちろん、個別のイベントに分解して選択させるという形態を取っている以上、何も一本道のストーリーをきちんと作り上げなければいけないというものではありません。しかし、ゲームのタイトルにもあるとおり、少なくとも学園ストーリーの中では学園祭がファイナルイベントとして位置づけられ、そこへ向かって単線的な時間軸が設定されているはずなのに、あたかも時間の流れなど錯覚に過ぎないかのようなブロック単位のイベントをごろごろ出されても困ります。先の見えないままに世界をたゆたうスタイルで楽しめる作品であれば格別、キャラクターとのやりとりを通じて世界を作り上げていくタイプの作品である以上、このバラバラ感は致命的な欠点とさえいえるでしょう。あるいは、特定キャラクターとの付き合いそのものを楽しむのであれば、そもそも時間も何もないという割り切りも可能でしょうが、共通ルートがかなり長いうえ、個別ルートでもキャラとのやりとりが楽しめそうなのは千神妹のみ(それもかなり薄いですが…)とあっては、ぶつ切り感が色濃くなってしまうのはやむをえないでしょう。

 さらに、千神姉妹および凛とのエンディング条件を満たさなかった場合、自動的に男に掘られるエンディングになってしまいますが、この流れも無茶もいいところ。いきなり、主人公が「付き合いが広く薄くなっていった」とひとりごちているものの、その少し前までは、展開によっては千神姉妹が明らかに好感情を寄せていたりするので、どうしてそうなるのか、さっぱりわかりません。エンディングが選択肢の結果として決まるという側面のみでならともかく、ストーリーの帰結としてみた場合、破綻しているとしかいえません。突然掘られることによる衝撃もあって、かなりのダメージを受ける可能性大。これ、プレイヤーにが納得できるだろうと期待したというのであれば、甘えもいいところでしょう。

 ひとつだけフォローしておくと、個別のストーリースティックを見れば、お約束的な展開が多いとはいえ、それなりに楽しめるものにはなっていました。

鏡町 ―― 粗が目立つが悪くはない ――

 主人公の居住地として鏡町を選ぶと、幼なじみの恋水、博識眼鏡ッ娘の琴子、アホお嬢の彩音のいるルートへ入ります。

 鏡町のシナリオ展開は御剣町に比べるとずっとまともで、主人公とヒロインたちの会話が、相互の関係を築いていくためのステップとしてきちんと描かれています。学園祭に向けてヒロインたちと悪戦苦闘するさまが伝わってくるなど、(少なくとも表面上では)主題へ向けたアクセスルートとして機能しているといえるでしょう。

 もっとも、実際にやりとりされる会話のテンポがあまりよろしいものではなく、プレイヤーには客観的に判断可能なことも主人公が知らぬ存ぜぬで通したりしてくれるほか、エンディングでの話のまとめかたにかなりの無理があるため、プレイしていて特に楽しいとは感じなかったのも事実です。また、各キャラクターの設定が、登場当初とエンディング近くでは少なからず変わっているように思えました(が、リプレイしてしっかり確認したわけではありません。念のため)。

 また、ヒロインキャラとの関係がいい感じになるにしたがって、ストーリースティックでのイベント選択に、作業感が濃くなってきます。御剣町側に比べるとイベント単独での話が弱く、しかもその後の話につながらないものが多いこともあって、中だるみしがちでした。このほか、琴子との会話で出てくるもろもろのネタについても、脈絡が感じられないものがやけに目立ちます。私が理解できたネタについてはなぜそこでそれが出てきたのかがさっぱりわからなかったり、あるいはひたすらに説明口調が続いたり。このため、スキップを多用してしまいました。

基本設定における問題

 さて、御剣町と鏡町の両ルートに共通することですが、結局街が分断されているということについては、その背景は説明されるものの、最終的な解決へ向けてのアプローチ、そして帰結がなおざりになっています。一応、鏡町ルートではそれなりの閉め方をしてはいますが、文字どおり学校レベルでの祝祭の枠内に留まっているとしか見えません。ハレの日のみに認められた境界消滅という程度なら納得もいきますが、あの程度でベルリンの壁よろしく境界線を消滅させるというのでは、三文芝居の誹りを免れますまい。

 意味不明な対立の構図として、境界線という題材を使っているのは素直におもしろいと思えるのですが、結局その不条理がどの範囲へ影響を及ぼしているのかが不明瞭であることも、分断解消がカタルシスにつながらない原因となっています。変人ばかりの世界であるのはいいとして、その世界において受容される倫理基準が判然としないのでは、どういった感情で人が動くかなど、わかるはずがありません。

 この点だけを見ても、プロットはなかなか興味深いものの、それをストーリーにするための柱が欠落していたために、意味付けも動機付けもしにくいお話になってしまったのが、この作品の最大の問題といえましょう。

エンディングの後味

 ここまで延々と苦言を呈するがごとき叙述でしたが、それでは奈々子はどうか。Lassの前々作(2007年5月現在未入手)、前作(同プレイ途中)でも登場して人気を博しながら攻略対象キャラではなかったため、非攻略キャラで引っ張るやり方について「奈々子商法」などと揶揄されることもありました。メーカーもこの点は十分わかっているようで、パッケージには「奈々子商法は永遠に不滅です」などという記述が。しかし、こういう揶揄はその対象が自称した途端に興の冷めるものであって、開き直りにしか読みとれません。私はプレイ後に気が付いたのですが、このコピーをプレイ前に見ていたら、その時点で封印していたかもしれません。

 閑話休題、最後の奈々子シナリオですが、まずは御剣町ルートでエンディングとなります。しかしこのお話、展開がめちゃくちゃ。御剣町ルートのバッドエンドもひどいものでしたが、これはそれに輪をかけています。主人公がプレイヤーの意志とは関係ない行動を取ってお話を破綻させてくれるのですが、この主人公の行動がまた、エンディングにいたるまでの行動とはまったく整合性がなく、どうしてあのように破滅が待っているとわかるような言動や行動を重ねるのか、さっぱりわかりません。いや、単に「理解できない奴」というだけならまだしも、エンディング間際になって急に不可解な行動に走られては、とうてい話についていけません。破綻したエンディングを迎えさせるのであれば、それなりのステップを踏ませるべきでしょう。不快感を催させる以前に、開いた口がふさがらないというレベルです。

 さて、このエンディングを終えると、スタート画面で新しいメニューが表示され、ここで真ルートに入ることとなりますが、このルートがまたまっすぐにはいかず、何度もスタート画面から入り直すことになります。選択肢は皆無なので面倒なわけではないのですが、説明的なお話が長く続くこともあって、楽しさも何もありません。しかも、この“説明”が、千神奈々子というLassのゲームに出てくるキャラクター(『FESTA!!』の登場人物であるところの奈々子だけではなく)全体を包含してのものであるため、ある特定事項を説明するために、このストーリーを用意したとしか見えません。

 また、この世界で主人公が行ってきた内容についてはほとんど示されていないのですが、ここにも消化不良の感が残ってしまいます。奈々子が主人公に惹かれた理由付けも希薄なので、ラストに近づくほど話が薄くなっていくように思えてなりませんでした。

不具合・修正ファイル

 御剣町側で進めても鏡町側のイベントが発生するなどの不具合があります。LassのWebサイトにて修正ファイルが公開されていますが、かなりわかりにくいところにあるのはやや不親切。

デモ・体験版

 デモ、体験版が協力Webサイトで公開されています。内容については未確認。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚組で、対応OSは、Windows98 SE/Me/2000/XPです。フルインストール時に必要なHDD容量は約2.2GBで、プレイ時にはDVD-ROMは不要です。

 ウィンドウ上部にあるメニューで「設定」を選ぶと、メッセージ速度(3段階)、未読スキップのオン/オフ、自動進行の待ち時間、入力(マウスボタンやキーボードへの割り当て)、文字表示、BGM・音声・サウンド、音量、マウスホイール動作、スクリーンセーバー動作などの設定ができます。スキップなどをキーボードの機能キーなどに割り当てると便利です。基本的に操作自体はスムーズなのですが、エフェクトがかかっているとマウスをクリックしても先に進まないため、タライ(「グラフィック」にて後述)のときなどでイラつくことがありました。

 セーブ&ロードは任意の位置で167個所まで可能で、セーブ時のシナリオ名と縮小画面、実日時が記録されるほか、任意でコメントを残すことができます。このほか、クイックセーブ&クイックロードも可能です。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが表示されるほか、複数キャラが会話する場合は複数のメッセージウィンドウが表示されます。この場合、メッセージウィンドウの外をクリックしないと話が進まなくなります。トップ画面からはCG回想(キャラクターごとにサムネイル表示)、シーン回想(同)、音楽鑑賞(曲名リストから選択)の各画面に入ることができます。

サウンド

 BGMは妙に賑やかなものが多い印象ですが、特にどうこういうほどのものではありません。それよりも、エンディングでかかるボーカル曲がスキップできないのが、とにかくストレスの溜まる要因でした。攻略したキャラの音声で歌ってくれるといえば聞こえはいいのですが、聴くに堪えないものもあり、エンディングになるとスピーカーを速攻でオフにしていったん席を立って休憩、となってしまいました。

 音声はフルボイスとなっていますが、適宜オン/オフを切り替えることができます。主人公の音声がかなりうるさく感じたので、私は主人公のみオフにしてプレイしました。

グラフィック

 原画担当は、萩原音泉、みけおう各氏。特に善し悪しはありませんが、どのキャラもみんな等し並に、少し抜けているように見えてしまったのは気のせいでしょうか。

 ゲームを進めていくと、ボケをかますキャラに対して上からタライが落ちてくるという演出が何度も何度もありますが、こんなのは一回やれば十分で、何度もやると飽きます。冗談抜きで、「タライ-オフ」というオプションがほしかったところ。

お気に入り

 なし。

総評

 なによりも、方向性がまるでないシナリオの希薄さにすべての問題が帰着するといえます。奈々子というキャラクターをどうにかしようという意識があったのはいいとして、そこへ収斂させるだけの下地をゲーム世界の中で作るにいたっていないのがまず問題。そして、ストーリーを相対化させるというプロセスを踏もうにも、肝心のストーリーがないのでは、シナリオの根幹が揺らいでしまうのが第二の問題、といえるでしょう。

 数々のプロットにしても、目の付けどころはけっして悪くはないのですが、トータルデザインの崩れが、このゲームを高く評価できない原因になっています。

どうでもいいこと

 御剣町ルート、公園で慌てている双葉と会ったとき「それでも引き留める/素直に別れる」という選択肢が出るのを期待したのは私だけでしょうか?(^^;

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
2007年5月14日
Mail to:Ken
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