はぴねす! ういんどみる

2005年10月21日発売(初回限定版)
2005年11月18日(通常版)
ご意見などは掲示板へどうぞ

 ブランクが長いこと続いたうえ、落ち着いてゲームを楽しめる状態でもなかったこともあり、しばらくゲームの購入以前にプレイからも遠ざかっていたのですが、それなりに精神的に余裕がもどってきたこともあり、リハビリ代わりに手を購入したのが、この『はぴねす!』です。萌え系ゲームとしてそれなりのものだろうと思いつつ、それなり以上の期待は何も持たずにプレイを開始。すでにゲーム系のサイトや掲示板などはまったく見ない状態が続いていたこともあって、なんの情報もない真っ白な状態でのプレイとなりました。

 以下、一部ゲーム本編の内容に踏み込んだ記述がありますが、オープニングの初日(体験版でプレイ可能)で明確にわかる、あるいはそこで示唆されている内容については、ネタバレとは判断せず通常の表記にしております。

 なお、私が購入およびプレイしたのは、通常版です。初回限定版は入手していません。

シナリオ・ゲームデザイン

あらすじ

 主人公・小日向雄真(固定)は、どんな女よりも女らしいという不可思議なオトコ・準、歩くバカともいうべきハチといった悪友とともに、瑞穂坂学園の普通科に通う1年生。バレンタインデーの前日、彼は順とともに、公園で魔法を使っていた瑞穂坂学園魔法科1年の才女、春姫と出会う。その後、謎の事故によって学園で爆発が起きて魔法科の教室が使えなくなり、翌年度の新学期から普通科と魔法科は合同で授業を行うことになった。気が付いてみると、主人公のまわりにはきれいどころがいっぱいに。

 シナリオ担当は、ちゃとら、セロリ、渡辺 景、彩火の各氏。

魔法使いとヒロインのカンケイ。

 ゲームデザインはごくオーソドックスなアドベンチャーゲームで、鍵となる選択肢によってシナリオが分岐するほか、好感度の要素もあるようです。メインヒロイン4人に対してハッピーエンドとノーマルエンドが1つずつあり、それぞれのハッピーエンドを迎えたのちに別のエンディングに入ることができるようになります。

 上記中見出しから多くの人が推測するであろう別の某ゲームと『はぴねす!』の間には関係はおそらくないと思いますが(当該ゲーム未プレイにつき断言はできませんが)、最初に気にかかったのがここでした。エンディング対象となっている純然たるヒロインは4人いますが、このうち3人は魔法科に通う生徒です。この3人については、魔法使いであるヒロインが、魔法使いでない主人公と接近していくわけですが、ここでヒロインたちが魔法使いであることが活かされているとは思えないのが残念なところ。

 主人公との関係をひとまず説明している春姫はともかく、杏璃と小雪については、彼女たちが単に魔法戦に加わっているというのみで、そこに魔法使いでない主人公を巻き込む必然性が感じられません。メンタル面でのバックサポート以上のことを主人公に求めるのは酷にすぎる話であり、難敵に対して「やればできる」といった精神論だけで済ませてしまうのは、なんとも安易なかぎり。主人公が魔法に覚醒するか、知識や技術がなくともフォローできることを示すかのいずれかでないと、ヒロインたちの戦い――別に三角関係的なバトルというわけではありません――が空疎なものになってしまいますし、実際そのように感じられました。

そもそも魔法の位置づけとは?

 物語の冒頭で、主人公は魔法を使わないことを心に決めたという設定になっています。さらに、魔法科というコースが学園に設置されていることから考えると、魔法というものが特殊な技術として幅広く定着した世界であると考えることができるでしょう。

 しかし、気になったのは、この世界における魔法、そしてそれを使うことがどのように位置づけられているのか、それが不分明であること。冒頭で学校の建物をぶっ壊すくらいの破壊力を持っている可能性がある技術があり、またその技術を代々伝える系譜が確乎として存在しているのであるなら、それを管理する体制が相応に整備されているはずですし、またその体制についてもある程度一般的に認知されていてしかるべきでしょう(認知させていないのなら、それは行政の怠慢に過ぎないという見方もできなくもありませんが)。そこまでいかずとも、某粗忽キャラが魔法を暴発させていて――これは魔女っ娘キャラのお約束ではあるのですが――、それにもかかわらず何らの処分等もないというのは、現実感とはほど遠いところで世界がまわっているように思えてならないのは私だけでしょうか。学園という現実的な世界と、魔法使いというファンタジックな世界。この2つを、あかたも木に竹を接いだがごとく無理につなげているため、魔法のほうでの問題が、現実的な部分での問題とリンクせず、滑っているという印象を受けます。

 このように、ゲーム内社会における“魔法”の位置づけがわからなければ、主人公が“魔法”を使うことに対して躊躇したことと、それを現在までも封印し続けてきたことへの意味が説明できません。主人公が慎重になったのは、何がゆえだったのか、そこで彼を引きとどめていた(社会的)枷はどのようなものだったのか。これに対しては、何ら答えが出ていません。さらに、主人公の育ての親と実の親の関係にも直接的な影響を及ぼす問題ですが、これが棚上げになっています。

 結果的に、封印してきたことによって、春姫(というより、春姫シナリオ)にとって都合のよい形になってはおりますが、よもやストーリーをつくってから後付で設定をこさえたわけでもありますまい。設定の軸にかかわる部分だっただけに、もっと丁寧に書き込んでほしかったものです。

だんだんトーンダウンしていく展開

 プレイ当初は春姫と杏璃が最初に攻略可能で、ついで小雪とすももが攻略可能になり、最後にグランドエンド(ハーレムエンド?)という流れになっています。

 しかし、骨格をなすべき設定が前述のとおりしっかりしていないため、繰り返しプレイがかなりつらいものとなります。それでも、プロットをそれなりにまとめている春姫、話の深みがなければオチも無理があるものの「主人公とヒロインのおはなし」とみればそこそこ起伏がはっきりしていた杏璃はまだまとも。小雪になると話の重心がどこにあるのかよくわからなくなり、主人公がどのような役割を持たされているのか、最後までわかりませんでした。すももにいたっては、単にべたべたくっついているだけで、ストーリーそのものが存在していない、というのは言い過ぎでしょうか。

 結局、萌え系シナリオに魔法戦という要素をつなぎあわせた結果、クライマックスがぼやけてしまったということでしょう。

パワフルかーさん

 主人公の育ての親というのがかなりはっちゃけた性格というのは、ういんどみるの処女作である『結い橋』でも見受けられましたが、今作ではさらに輪がかかっています。しかも、春姫シナリオを終えた時点で、物語全体の中でかなり重要な役割を担うはずと期待していたのですが、ここでの空回りは痛かった。キャラとしてはしっかり立っていたのですが、話をかきまわすだけに終わっていたのはなんとももったいない。「魔法使い」と「非-魔法使い」の橋渡し役になるのかと思っていたのですが、そもそもこのゲーム中では「魔法」というものがその程度にしか扱われていない以上、仕方ないのか。

 また、ゲーム中では登場しませんが、小雪のお母さんも見てみたかった気がします。もっとも、主人公に関係あるオトナ2名がもう1人増えるだけかもしれませんが。

 なお、準なりハチなりといったサブキャラは、お話の本筋にはまったく関わってきません。準は一応、要所で主人公の親友としてアドバイスしたりしていますが、ハチは単なるギャグ要員。序盤から終盤まで出てくるだけに、キャラのデフォルメも度が過ぎるように感じました。ギャグキャラとしてなら、信哉のほうがよっぽどキマっていました。

どうでもいいこと

 優等生である春姫が、そう見られるのが本意でないといいつつ、結局最後までそのまま。確かに、主人公とベタベタする部分については、傍若無人というか強気になってはいますが。また、春姫シナリオで、主人公からのプレゼントの件でソプラノ(春姫の使っているマジックワンド、人間と会話が可能)がグチまじりに語るシーンがありますが、この部分だけ語りかけてくるというのがなんとも不自然。人間に近い感情をもった存在であれば、ナニしている最中もずっと一部始終を見ているということになりそうなのですが、そういうときにはなかったことにしているのでしょうか。

 あと、照れたときなどのテキスト表記に「///」が多用されているのがちょっと気になりました。

不具合・修正ファイル

 細かい不具合があります。修正ファイルがういんどみるのWebサイトにて公開されています。

デモ・体験版

 デモおよび体験版が協力Webサイトで公開されており、体験版ではオープニング部分をプレイできます。雰囲気がわかるほか、前述のようにこのオープニングの初日だけでストーリーが把握できるので、ひとまずこれをプレイしたうえで購入するほうがよいでしょう。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚で、対応OSは、Windows98 SE/Me/2000/XPです。フルインストール時に必要なHDD容量は約3.5GBと、なかなかのサイズです。プレイ時にはDVD-ROMは必要ありません。

 ゲームを起動して最初に出てくるメニューの「環境設定」には、実に多彩なコンフィグメニューが用意されています。スクリーン表示やカーソル、ウィンドウサイズ(5通り。デフォルトは800×600)やテクスチャ補完、サウンド、入力インタフェース、音声ボリューム制御、メッセージ表示速度設定、画面効果の切り替え、フォント、メッセージウィンドウ設定、などなど。すべて目を通すのが面倒くさいと思えるほどいたれりつくせりです。ユーザーインターフェースについては、何ら問題なく、スムーズにプレイできるでしょう。

 セーブ&ロードは、任意の位置で76個所まで可能で、ゲーム中の日付と朝昼夕の別、スクリーンショットの縮小表示、およびセーブ時の実日時が記録されます。このほか、クリックセーブ/クイックロードも備えています。

 一度任意のエンディングを見ると、トップメニューから「おまけ」には、「CGモード」「キャラモード」「回想モード」「音楽モード」に入れます。「CGモード」ではヒロインごとのCG閲覧(サムネイル表示あり)、「回想モード」ではヒロインごとのHシーンとエンディングシーンの再生、「音楽モード」では曲番号をクリックすることで曲名表示とともに音楽が再生されます(音楽モードも、一度聴いた曲でなければ選択できません)。変わっているのは「キャラモード」で、これはキャラごとの立ち絵鑑賞モード。服装や表情、姿勢や背景を切り替えることができます。着せ替えモードとでも呼ぶほうがわかりやすいかも。

サウンド

 BGMはElements Garden、Ecnemuseの担当。ポップでメリハリのきいた曲が多く、特に日常シーンでの雰囲気によくあっていると感じます。ただし、シリアスなシーンでのBGMが、やや軽薄に感じられたのは気のせいか。

 音声は、主人公以外フルボイスで、キャラクターごとにON/OFFを切り替えられます。各登場人物のイメージとうまくあった演技になっていると感じました。

グラフィック

 キャラクターデザインの担当は「こ~ちゃ」氏。目が大きくやや幼い(ロリっぽいわけではない)印象を与える絵ですね。どのキャラも表情のバリエーションがうまく活かされています。特に杏璃や小雪で、デフォルメ顔が入るのが楽しい。

 なお、魔法を使うシーンでは美しいエフェクトが出るものの、表示される時間や画面上で展開される間があいてしまい、緊迫した空気が伝わってきません。この戦闘エフェクトのおかげでテンポがそがれてしまい、逆効果としか思えませんでした。使うのであれば、ここぞという1シーンのみにとどめるほうがよかったのでは。

お気に入り

 攻略対象ではありませんが、かーさんでしょう。こういう人が実際に家族にいたらかなり疲れそうではありますが、楽しくはあると思います。

 ヒロインの中から選ぶなら、春姫ですね。

総評

 萌えゲーと割り切ってプレイし、魔法云々について目をつむれば、そんなに悪いゲームではないと思います。ヒロインのバリエーションは少ないものの、キャラクターが定型的であるためほぼ見た目どおりのリアクションをしてくれるという安心感があるので、何も考えずにいちゃついているのを見たいというのであれば、まずまずでしょう。ただし、それ以上のものを求める、例えばキャラの立ち位置を再確認したりしようとすると、評価が急低下するのは避けられません。

 悪いできではないのですが、盛り上げかたに比してストーリーがむだに長かったような気がします。もっと地に足の着いたストーリーをつくっていれば、最後まで安心してプレイできたのではないかと感じます。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2006年10月11日
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