ぶらばん! ~The bonds of melody~ ゆずソフト

2006年7月28日発売
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 部活動を背景としたゲームというのは果たして多いのかどうか微妙なところですが、その際に廃部の危機という設定は、仲間意識を高めるためになかなか便利なもののようです。実際、私もそう昔ではない時期に、比較的設定の似たゲームをプレイしていますし。どうして似たようなゲームを再度手に取ったのかといえば、単に「絵柄が好みだった」というだけでした。

 ぶっちゃけ、さほど多くを期待することなく進めたゲームでありましたが、女の子はみんなそれなりにかわいかったのが印象的です。それだけだった、という気もしなくもありませんが。

シナリオ

あらすじ

 主人公、香住純(変更可)は、赤城山学園ブラスバンド部に所属していたが、生徒数の減少により、赤城山学園の合併先となる円山学園に編入となり、ここで学園生活を送ることとなった。ところが、円山学園ブラスバンド部の顧問は、主人公たちの部活動を「レベルが低い」と一蹴して部員の編入を拒否した。なんでも、円山学園ブラスバンド部は、コンクールで銀賞を取った実績があり、その指導をしてきた実績のため顧問が偉ぶっているのだという。すったもんだのあげく、双方の部で学内コンテストを行い、高い支持を得たほうを部として存続させることとなった。旧赤城山学園ブラスバンド部の部長となった主人公は、1か月足らずの期間に、果たして相手に勝つことができるのか。陰湿な円山学園ブラスバンド部顧問の嫌がらせをかわしつつ、練習に明け暮れる日々となる。

 シナリオ担当は、天宮りつ氏。

らぶらぶな雰囲気皆無のお話

 危機的な状況に陥った部活動を契機に真剣になった部員との距離が接近し、そこに恋が生まれる……というのが、通常のプレイヤーが予測し期待するものでしょう。しかし、このゲームにおいては、そういう予測や期待はあまり満たされません。端的にいえば、主人公側での恋愛模様が、ほとんど描かれていません。

 メインヒロインである妙はちょっと色合いが異なりますが、これ以外の攻略対象キャラである4人は、いずれも現状の人間関係に悩んでおり、その背景にトラウマないしプレッシャーを抱えています。これを主人公が解決して接近するというのが王道ですし、それならば悪くないのですが、このプロセスをまがりなりにも経ているのは、ライバル的地位にある由貴だけ。赤城山ブラスバンド部の部長である主人公が牽引していくべき3人に対しては、主人公がいちおう関わっているうちに解決してしまい、そのままなし崩しに肉体関係を持ってしまったようにしか見えません。

 もちろん、恋愛関係にある当事者といえども、片方がらぶらぶになっていてもう片方はやたらと冷静沈着、というのはありえる話でしょう。しかし、本来は盛り上がるべきところで、あるいはそこにいたるまでの間で、主人公側が徹底的に冷めているため、お話として盛り上がりません。しかも、ヒロイン側のアクションを、唯々諾々と受容するため「言い寄ってくるなら誰でもいいんかい」という気になります。さらに、告白即Hシーンになだれこむため、本当にこれでいいのか、という疑問が出てしまいます。特に須美など、告白の直後に屋上でパンツだけおろしてバックって、そりゃ無茶でしょう。

不用心な行動の数々

 繰り返しになりますが、主人公は部長という立場にあります。しかも、そのままでは廃部が確定するという状況で、非常に大きな責任を負っています。この部分については、特にコメントすることはありません。他の部員以上にさまざまなプレッシャーがあるのは想像に難くありませんし――このゲームを素直にみるだけでは、想像に難いかもしれませんが――、できることにプライオリティを付けていけば、場当たり的ともいえる行動も、決して不合理なものではありません。

 しかし主人公は、ヒロインである女の子たちが困った立場にあった場合でも、あまりに素っ気ない、あるいは消極的な対応に終始しています。これは、単に主人公が奥手だからといったものではなく、そこまでの余裕をもてないという設定にしているとしか説明できません。他の部員との関係がうまくいかなかったり、家族とギスギズしていたり、いじめられていたりと、いろいろな悩みを抱えているヒロインたちに対して、主人公の立場は一貫しています。「無理するな」といいつつ、自分では深入りしない。部長という立場から見てその手法の正否はさておき、ヒロインから見た主人公の取る手法かといわれれば、とてもそうとは思えません。

 特に、ななせシナリオなどどうしようもない振る舞いを発揮してくれます。主人公とななせの二人が、その素行について疑われている――事実レベルでは言いがかりに近いものではあるのですが――段階で、あっさりと体を重ねてしまうのはいかがなものか。「不純異性交遊」がどうのこうのというフレーズがその直前にあるだけに、不用意に地雷原を駆け足で進みながら、奇跡的にうまいことクリアできていったような観さえあります。

女の子はみんないいコなんだが

 主人公の態度については大いに不満があるものの、登場人物全般については、なかなかいいところを揃えていると感じます。典型的なキャラばかりともいえるでしょうが、あからさまな悪役一名を除けば、反感や嫌悪感、あるいは違和感を抱くことはほとんどありませんでした。攻略対象キャラが5人もいれば、私の場合、たいてい1人くらいは「あまり好みじゃないな」と思うものなのですが、今回はそういうのが皆無。たまたま全員がストライクゾーンの中に入っただけでもあるのでしょうが、どのキャラも裏表がなく、スッキリした性格として描かれているためでしょう。ひねりがないともいえますが、妙な意味合いをキャラクターに埋め込んでいないぶん、ナチュラルな存在に仕上がっています。もっとも、女の子に限らず、ボケ役に徹する悪友しかり、見るかぎり単なるナルシストだがその実はというライバルキャラしかり、「こういうのが友達なら退屈しないだろうな」と思えます。

 かえすがえすも、他人のコトバを把握(理解以前)できないことの多い主人公に、歯がみすることしきりです。主人公も、決して性格が悪いわけではないのですが…。

ゲームデザイン

 ヒロイン5人に対して、それぞれエンディングが1つずつ用意されています。移動画面ではマップ上にキャラ絵が表示されるので、目当ての娘に会うようにすれば簡単にハッピーエンドとなります。途中、演奏部分で指示する選択肢がありますが(一度クリアすると回避可能です)、これはセーブ&ロードで容易に対処できます。難易度は非常に低いといってよいでしょう。

 攻略可能なヒロインは、世話焼き型家事万能の幼なじみ、真面目で人に頼られやすい委員長、相手の部長であるツンデレお嬢。元気溌剌自爆系後輩、弱気おどおど小動物系後輩です。アドバイザーとしていい味を出している先輩、いい加減でガサツだが芯は強い顧問などもいます。

不具合・修正ファイル

 細かい不具合があるようで、これらに対応する修正ファイルがゆずソフトのWebサイトにて公開されています。

デモ・体験版

 オープニングムービー、CMムービー、体験版、オープニング主題歌が協力Webサイトで公開されています。このうちオープニングムービーは、ゲーム内で使われているCGと、新規に編集されたアニメを組み合わせているのですが、当然のようにカラーリングの異なる両者が混在しているため、違和感があります。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚で、対応OSはWindows2000/XPです。マニュアルには「98/Meはサポート対象外です」と表記されています。フルインストール時に必要なHDD容量は約2.65GBで(マニュアルには「4GB以上」とありますがそんなにいりません))、プレイ時にはDVD-ROMは必要ありません。

 システムメニューでは、画面サイズ(ウィンドウ800×600とフルスクリーン)、テキスト速度、オート速度、スキップの既読/未読、ボイスカットの有無、日付表示の有無、画面効果の有無、BGMダウンの有無、BGM/SE/ボイスの音量調整、選択し五オート/スキップの切り替え、キャラ別音声の有無を設定できます。セーブ&ロードは任意の位置で90個所まで可能で、ゲーム中の縮小表示とゲーム中の日付、セーブ時の実日時が記録されます。このほか、クリックセーブ&クイックロードも可能です。基本的な操作は、マウス、キーボードのいずれでも可能で、特にストレスを感じることはありません。

 このほか、CGモード(サムネイル表示)、回想モード(ヒロインごとに選択)、音楽モード(曲名を選択)があります。

サウンド

 ブラスバンド部を舞台としたゲームということもあってか、BGMは楽器のバリエーションがなかなか豊富という印象を受けました。きわだった特徴はありませんが、堅実な印象を受けました。

 音声は、主人公以外フルボイスです。まずまずといったところか。

グラフィック

 原画担当は、こぶいち、むりりん両氏。どのキャラも立ちグラで見せる表情がなかなか豊かで、そのアクションもオーバーにならず退屈にならずのバランスが取れています。ときおり効果的に用いられるデフォルメ絵もいい味が出ており、見た目でのつかみはなかなかよい部類に入るでしょう。その一方で、一枚絵の印象があまりないのが寂しく、須美のアップをのぞけばほとんど記憶に残っていません。

 細かい話ですが、学校が統合したというのに、どうして制服は別々なのでしょうか? 特に、ともに1年生であるみなせと須美の制服が異なるのは、相当に違和感があります。

お気に入り

 ヒロインの中でみれば、須美がいちばんいいかな。おどおどしていながら、吹っ切れたあとの笑顔のまぶしさがたまりません。

総評

 ヒロインにかぎらず、脇役も含めて登場人物に嫌みがなく、いわばノスタルジーの舞台としての仮想的学園生活を満喫する舞台がきちんと整っているとはいえましょう。そのいっぽうで、主人公の無茶な動き、無理な考え方が、話の流れを損なっている面がどうしても拭えません。

 佳作になり損ねた小品といったところでしょうか。このままでは「絵だけはかわいい」ということに落ち着いてしまいそうなので、もう少しストーリーの中軸となる視点をしっかり備えたシナリオを用意していただきたいと切に願います。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2006年11月1日
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