カラフル アクアリウム eufonie

2006年11月24日発売
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 幼なじみが複数出てきて、そのうち1人がずっとそばにおり1人が再会するというパターンは、いわば古典的とも呼ぶべきものであり、特に気を向ける要素にはなりません。それでもこのゲームを発売日当日に買ってしまったのは、絵柄が好みだったということもさることながら、キャラの使い方にやや変化球めいたものを感じたことにあります。おそらく登場人物自体は、パッと見て推測できるとおりの行動を取るのでしょうが、他のキャラクターとの関係をどのように描くのか、というところに関心をいだいたしだいです。

※このレビューは、初回限定版(オフィシャルイラスト集同梱)のプレイをもとに書いています。

シナリオ

あらすじ

 主人公・円城寺一臣は、海外赴任中の外交官を父親に、そしてどこで何をやっているのかわかったものではない謎の姉を持ちつつ、一人住まいをしている。細かいことに気がつく幼なじみの泉とつかず離れずの仲である一方、やる気のかけらもないサッカー部に所属し、だらだらした生活を送っていた。そんなある日、小さいころに一臣や泉とともに遊んだ女の子であるアリサが、2人のメイドとともに一臣の家に転がり込む。しっちゃかめっちゃかになった生活に頭を抱える主人公。彼の行く末はいったいどうなるのか。

 シナリオ担当は尾之上咲太氏。

微妙にアクの強い娘たち

 攻略対象となるヒロインは5人です。ずっとそばにいた幼なじみである泉、帰ってきた幼なじみであるアリサの2人が軸となり、アリサ付きのメイドであるカスミ(家事万能にして怪力怪足の元軍人舌足らずおっとりキャラ)とトーコ(表情に乏しいが冷静沈着で的確な状況判断ができる天才発明キャラ)、それに学校の学生会長である先輩という布陣です。

 先輩はありきたりなキャラクターですが(そのぶんストーリーがやや特殊)、個性的という言葉を適用するにはややそぐわない、独特の特殊な要素を備えています。子どもっぽいを通り越してだだっ子だったり、常識的な判断ができるのかできないのかさっぱりわからなかったり、努力家で多才であるのに頭の回転が微妙に鈍かったり、そもそも忠誠心そっちのけで妥当な判断を冷静に下していったりと、デフォルメされているいっぽうで、妙に生々しさを感じさせてくれます。

 そのいっぽうで、主人公が無気力人間という設定であるにもかかわらず、まわりがあまりにも騒々しいため、相対的に被害者としての位置づけになっているせいか徹底的にニュートラルになっており、このためストーリーの流れがごく自然にできています。まわりが濃すぎるというわけではなく、あくまでも異常な状況を自然に作り出してしまうキャラクターたちに囲まれてしまった存在、という位置づけになっているのです。狙って描いたものではないでしょうが、単なるモテモテ君になっていないため、嫌みがありません。

そこから成長する娘たち

 恋愛ゲームのパターンとして、ヒロインが何らかの困難にぶつかり、主人公がそれに関わることで、あるいはそれに首をつっこむことで、場合によっては傍観していることで、ともかくも解決し、それを機に結ばれる、というものがあります。いや、パターンというよりは、もはや“お約束”というべき展開かもしれません。

 しかし本作では、そういう流れにはなっていません。主人公はそう大きくゲーム中で変わっているわけではありませんが、主人公との触れ合いを通じて、みな自分なりのものの見方を変え、成長しています。くっついたらあとはいちゃいちゃを描くだけというのも萌えゲーで多用される流れなのですが、そうではなく、主人公とのアツアツな関係を前提とした世界が、それまでの(ヒロイン視点での)世界よりも新たな視点を増やしたものになっているのです。このように、ヒロインがきちんと“成長する存在”として描かれているのには、新鮮さを覚えました。

 まあ、裏を返せば、みんなその年齢にくらべて幼い、ともいえるのですが。

純粋にして視野狭窄なお嬢様

 通常、レビューの中で特定のキャラを取り上げて説明することはあまりないのですが、1人のために全体のイメージに影響が出ることが避けられないので、あえて触れます。

 登場人物に癖が強いことは上で説明したとおりですが、特にその色彩が濃厚なのが、メインヒロインとして位置づけられているアリサです。自分が原因でトラブルになったらその場から逃げ出すなど、言動のみならず行動にも悪い意味での子どもっぽさが濃厚なので、プレイを始めてしばらくのうちにすっかり冷めてしまう可能性があります。

 もっとも、彼女も最後まで子どもでいるわけではなく、アリサルートではしっかり成長しています。しかしほかのルートでは、エンディング間際になって往生際が悪いとしかいえないような振る舞いを見せるなど、傍若無人キャラといわれても差し支えないのが実情です(トーコルートのみは例外)。いい雰囲気になったときにはかわいいんですが、初期設定がちょっと子どもすぎたような気がします。

縦のつながり、横のつながり

 キャラクターがそれぞれ生き生きしていても、主人公を軸にスター型の個別宇宙を形成しているという例も少なくありません。しかしこのゲームでは、ヒロイン相互間の関係が、対主人公と同様に、いなそれ以上に重要な要素となっています。

 詳細はネタバレになるのでおおざっぱな形で書きますが、泉シナリオの場合、主人公と泉の関係よりも、主人公および泉とアリサの関係のほうが、はるかに長い時間にわたってしっかり描写されています。これは、ルート外のヒロインをもキッチリお話に組み込むというだけではなく、ルートに入っているヒロインと主人公の相対的な関係を示す座標軸(客観指標)としての役割をも持たせているといえましょう。すなわち、ルート外となっているヒロインを通じて、主人公とヒロインの物語により深みを与え、そして彼や彼女の心中をプレイヤーに受け止めやすいものとしています。

 登場人物同士のコント的な会話にとどまっておらず、横のつながりをしっかり使っているのも、このゲームの特徴といえましょう。

ストーリーは気にしない

 このように、キャラクターの描写は非常に秀逸なものですが、ストーリーについては、特筆すべきものはありません。とくだんつまらないというものでも退屈するというものでもありませんが、終わってみてなにがしかの感慨を覚えるほどもありません。大して期待を抱かないのが吉といったところです。

 なお、アリサたちの故郷に関する説明を聞いていると、地球科学や物理学が崩壊していくような気になります(詳細は控えます)。まあ、ツッコミを入れるだけ野暮ということにしておくべきなのでしょうが。

ゲームデザイン

 攻略対象ヒロインは上述のとおり5人で、ゲーム途中で随時出てくる選択肢によって発生するイベントによって分岐するようですが、好感度のようなパラメータが加わっているのかもしれません。ターゲットに早い段階からロックオンしておけばそう難しくはないでしょう。基本的に、一回のプレイでCGなどはすべて見ることができるようです。

 各ルートの大筋は比較的似ていますが、大きく分けて2つのパターンになります。各パターンとも、さらに攻略中のキャラに応じてイベント内容が微妙に変わることが多く、完全に共通するイベントというものは、終盤になるとほとんどありません。なお、1回のプレイ時間は意外に長く、私は上記5エンドを見終わるまでにまる4日を費やしました(うち2日は平日夜の数時間、2日は半日)。

不具合・修正ファイル

 特に不具合などは確認されていません。ただし、セーブ&ロードをはじめとしたシステム画面切り替えの処理が非常に遅く、ひとつのシーンをセーブする作業に20秒近くかかります。

デモ・体験版

 デモ、体験版が協力Webサイトで公開されています。体験版では、ゲームの序盤をプレイすることができます。くどいようですが、キャラクターにかなり癖があるので、体験版で雰囲気をつかんでおくことをお勧めします。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚組で、対応OSは、Windows98/Me/2000/XPです。フルインストール時に必要なHDD容量は約2.55GBで、マニュアルやパッケージに記載されているほどの容量は使いません。プレイ時にはDVD-ROMは不要です。

 ゲームを起動すると、「START」「LOAD」「OPTION」「ALBUM」「MEMORY」「MUSIC」「GAME END」のメニューが表示されます(初回起動時は「START」「LOAD」「GAME END」の3つのみ)。「ALBUM」「MEMORY」からは、各ヒロインごとにCGモードおよびHシーン回想モードに入れます。「MUSIC」は音楽演奏モードで、曲名をクリックして演奏します。「OPTION」では、画面モード(フルスクリーン/ウィンドウ)、メッセージウィンドウの透過度、テキスト表示速度、スキップ設定、音量等の設定が可能です。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが表示されます。メッセージウィンドウ右側および右下には「SAVE」「LOAD」「OPTION」「BACKLOG」の各メニューのほか、クイックセーブ/クイックロード、メッセージスキップ等の各種ボタンがあります。操作にとまどうことはまずないでしょう。

 セーブ&ロードは、任意の位置で100個所まで可能で、セーブ時の実日時、プレイ時のテキスト、セーブ時画面の縮小表示が記録されます。このほか、クリックセーブ/クイックロードも備えています。難易度はさほど高いものではないので、すべてを使い切ることはないでしょう。ところで、ロードすると毎回「最新データの所得中…」(強調筆者)という表示が出るのですが、これを見るたび萎えるのは私だけでしょうか。

サウンド

 音楽担当はROMANTIC-OBSESSION。BGMはポップなものが多いのですが、どうもどこかで聞いたことのあるようなメロディラインだと感じたのは気のせいでしょうか。このほか、オープニングとエンディングにボーカル曲が使われています。

 音声は、立ちCGのあるキャラに対しては主人公をのぞきフルボイスとなっています。演技の巧拙については保留。

グラフィック

 原画担当は、木場智士氏。ややぽっちゃりした感じの、少し幼げな表情の女の子が並びますが、それほどクセはありません。むしろ、しばしば使われる、マンガ的な汗や怒りのマークが多用されており、人によってはちょっと気にかかるかもしれません。塗りはまずまずですが、光線の加減をあまりきちんと表現し切れていないという印象があり、シーンによってヒロインの髪の色が大きく変わったりします。

 画面切り替え時に、イカだのクラゲだのといった水棲生物がでてくるのですが、最初こそ楽しいものの、すぐに飽きました。これはちと考えもの。

お気に入り

 トーコがいちばんのお気に入りです。屋上での彼女とのダンスシーンにはしびれがきました。最初に攻略したという面もあるのかもしれませんが、ほぼすべてのシナリオを通じてしっかりと筋が一本通っているという点が大きいように思われます。

総評

 どうにも一般化しようのない記述で恐縮ですが、久々に「うっ、このコかわいいじゃないか!」と思えたゲームです。

 キャラクターを魅力的なものとし、生き生きとゲーム世界で動かす。この基本に忠実に、一人一人の性格に矛盾や違和感を決して抱かせることのないよう、非常に丁寧に各ヒロインをつくりあげている点に、好感を持てます。フレーズにところどころ妙なものがあったり、語彙がヘンだったりするのは些細な話で、そこにいる人物がそのように話し、動くということを自然に受容させる。実際にはかなり難しい、この基本に沿ったゲームといえます。

 描かれているキャラクターは、パターン化されたものであるといえなくもない一方、そういう面で見るべきではないともいえるため、デフォルメ化されたその行動様式や思考形態に拒否反応を起こす可能性も低くありません。したがって“こういうプレイヤーにお勧め”ということを絞るのが非常に難しく、人様に説明するのが非常に難しいゲームとなっています。また、ストーリーそのものもたいしたものではないので、シナリオを読み解くことに重点を置けば、凡作よりマシ程度のものになるでしょう。しかし、キャラクターの魅力を巧みに出すことに成功している点を、高く評価したいと考えます。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2006年11月29日
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