E×E(エグゼ) ゆずソフト

2007年6月1日発売
 

 発売2ヶ月前から公式Webサイトにてカウントダウンが行われ、それが頻繁に更新されていたこともあって、ちょっと興味を抱きました。パッケージが暗めの赤を基調としたデザインで、なかなか格好いいものになっています。前作の『ぶらばん!』から、キャラクターの描写が中心のゲームだろうという判断を前提に購入しましたが、その予測はおおむね間違っていなかったようです。幸か不幸かはともかくとして。

 タイトルは『E×E』と書いて“エグゼ”と読むのですが、小田急線沿線に長らく住んでいた私には「エクセ」という読み方が意識に定着しており、なかなかこのゲーム名になじめませんでした(→小田急ロマンスカー)。なお、このページは通常「<ゲーム名>.htm」というファイル名にしているのですが、「exe.htm」なんて名前のファイルは気持ち悪くて開く気になれないので、ちょっと変則的なファイル名にしてみました。

シナリオ

あらすじ

 主人公・伏見籐矢は、かつて母親を病院で起きた火事で亡くし、いまでもその夢にうなされているが、それでも姉がわりの保護者と妹との3人暮らしでごく穏やかな日常生活を送っている。ある日、籐矢のクラスに転校生が入ってきたことをきっかけに、かつて火事が起き、そしていまでは自分がバイトをしている八坂総合病院で奇妙な事故がみられるようになった。さらに、主人公の前には、見まごうことなき、母親の姿をした女性が現れた。過去の事故の真相は何か、そして主人公は何を求めるのか。

 シナリオ担当は天宮リツ氏。

全体ではカバーできても

 主人公やその母親がかつて巻き込みあるいは巻き込まれた事故、そして現在起こっている事件の背景にあるものや真相が、プレイしていくにしたがって明らかになっていくタイプのシナリオになっています。サスペンスドラマ的なストーリーになっており、ヒロインごとのルートにわかれた各種の設定が少しずつずらした形で提供され、全体として物語を形成するというスタイルです。

 このため、基本的な3ヒロインのルートをクリアすればシナリオはおおむね理解できるのですが、理解するにいたるまでの“引き”がどうにも弱い。真相へ踏み込んでいくための動機付けを主人公の個人的感情のみに帰している面が強いことにくわえ、シナリオごとに鍵となる人物がまちまちでロールプレイが不明確となり、結局は全体像をつかみにくくしている観が否めません。終盤になるとやや説明調のセリフが多くなってしまうのはいたしかたないところでしょうが、それにしても「最後でのつじつま合わせ」が妙に鼻につきました。

 端的にいえば、盛り上がりにいまひとつ欠けるまま最終盤まで進んでしまいます。結局、それぞれのストーリーの中でヒロインを中心としたキャラクターの振る舞いに目が向かざるを得ません。

倒れるなら前向きに

 そうなると、物語を束ねる主軸たる主人公の役割が重要になってきますが、このゲームでの主人公は物語世界においては、比較的ニュートラルに近い存在になっています。具体的には、それなりに鍵となる役割を担ってはいるものの、特殊な能力を持っていたりそれに開眼したりするわけではないものの、過去のトラウマをもとに、消極的なままに物事をやり過ごすことに我慢ができないという性格になっています。いうならば、倒れるならばせめて前向きに、というスタイルといえましょうか。必ずしも猪突猛進というわけでもないのですが、勇気と根性で押し通すようなタイプといってよいでしょう。やや視野が狭く、ゲーム世界の中で右往左往する(させられる)ために格好悪さが拭えない(悠ルートは別)という面もありますが、まずは世界への窓としては悪くないと思います。

 そうはいっても、主人公がアクションを取ることでゲーム世界が動いていくというよりは、主人公の行動が影響を与えているという程度とみるべきでしょう。戦闘シーンなどが多いとはいえ主人公はあくまでも「素人」扱いが貫かれています。ヒーロー的な強さはありません。

キャラクターの使用法

 いっぽうヒロイン側を見ると、各キャラクターごとに固有の行動様式や思考様式がコッテリと付与されており、そこに主人公が関わっていくという形になっています。

 メインヒロインのうち悠と夏希については、ルートに入ってからの主人公への依存がかなり高くなっていくので、ラブラブ度もかなり高めです。その一方で、エンディングにおける後味については、「二人の物語」として見た場合はともかく、真相云々という視点で見ると不消化の印象がどうしても拭えません。いちゃついているときは楽しいのですが、もっとスッキリしたお話がほしかったというのは、ぜいたくな望みでしょうか。

キャラクターの名字

 キャラの名字は、伏見、野宮、籠、貴船、上御霊、白峯、加茂、八坂、日向、宇治上。京都府内の神社から取っているのですが、「籠」だの「上御霊」だのを人の名字に据えるのはちょっと…。松尾とか平野とか吉田とか、もっとマシなのがあったでしょうに。

ゲームデザイン

 選択肢で振り分けが行われ、後半部分で単独のシナリオに分岐するタイプのノベルゲームです。主要なルートは4つあり、メインヒロイン3人のルートとサブヒロイン1人のルートにわかれます。このうちサブヒロイン1人のルートは他のルートとは明らかに雰囲気が異なります。このほか、メインヒロインから分岐する派生エンディングがいくつかあります。メインヒロインは、実は無愛想だが表面上は愛想よくする転校生、いろいろと謎な嗜好を持つ同級生、ナイスバディなお姉さんの3人です。

 ゲームのプレイを進めていくと戦闘シーンが出てきますが、エフェクトがけっこうきれいです。プレイヤーとして操作することは特になく、数個所で挿入されるという形になっています。

 選択肢の数はさほど多くはなく、オンリーねらいでいけばハッピーエンドに到達するのはさほど難しくはありませんが、の扱いには要注意。一部の派生エンドはやや気づきにくいので、ピンとこなければ選択肢をしらみつぶしにすることになるかもしれませんが、それでも難易度はそう高いほうではないと思います。

不具合・修正ファイル

 細かい不具合があります。ゆずソフトのWebサイトに修正ファイルが2つ公開されているので、両方適用してからプレイしましょう。

デモ・体験版

 オープニングムービー、キャラクター別ムービーおよび体験版が協力Webサイトで公開されています。オープニングムービーはなかなかしっかりと作り込まれており、一見の価値はあります。体験版では、ゲームの序盤をプレイすることができます。体験版は序盤の雰囲気を感じることができますが、「これからおもしろくなりそう」というところでプッツリ止まる、なかなか憎いつくりになっています。このほか公式Webサイトでは、発売前に公開されていたカウントダウンFLASHファイルがアップロードされています。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚組で、対応OSは、Windows2000/XP/Vistaです(98/Meはサポート対象外)。インストール時に必要なHDD容量は約3.2GBで、インストールの際にセーブデータの保存位置をきいてくるのはVista仕様というべきでしょうか。プレイ時にはDVD-ROMは必要ありません。

 ゲームを起動すると「START」「LOAD」「SPECIAL」「SYSTEM」「EXIT」のメニューが表示されます(最初にエンディングを見るまでは「SPECIAL」は選択不可)。「SPECIAL」からは、CGモードおよびHシーン回想モード、音楽再生モードに入れます。

 各種設定メニューは、画面上部にあるプルダウンメニューや、メッセージウィンドウ周辺にあるボタンなどから呼び出すことができ、画面サイズ、テキスト速度調整、スキップ(既読/既読未読すべて)、画面中の日付表示、音量、音声のオン/オフが変更できます。セーブ&ロードは任意の場所で90個所まで記録でき、セーブ時の実日時およびゲーム中の日付、画面の縮小表示が記録されるほか、クイックセーブ&ロードも装備。また、セーブ&ロード、画面、バックログ、オート、スキップ、オプションの各メニューはファンクションキーで簡単に操作できます。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが表示されます。メッセージウィンドウ右側には各種メニューボタンが配置され、通常のゲームプレイにはほとんどストレスを感じることがありません。

サウンド

 BGM担当はFamishin氏。全体的にメリハリの利いた曲となっていて、シーンごとの雰囲気を転換させるのに一役買っていますが、のんびりしたシーンと緊迫したシーンの違いがやや大きすぎるような気がなくもありません。このほかボーカル曲が2つありますが、オープニングで使われている曲はなかなか格好がいいものです。

 音声は、主人公を除いてフルボイスとなっています。

グラフィック

 原画担当は、むりりん、こぶいち両氏。やや甘えてくる感じの女の子になっています。背景もなかなかきれいですね。

 主人公以外の視点で語られる場合は、画面の上下が黒くなり、視覚が狭く表示されます。

お気に入り

 悠がいいですね。人に素顔を見せることに臆病だった彼女が主人公に心を開いていくさまがよろしい。

総評

 キャラの造形はそれなりにしっかりしているのですが、もともとサスペンス調のシナリオがベースになっているだけに、最後まで不完全燃焼感が残ってしまうのがなんとももったいないかぎりです。キャラ萌えできるゲームと評することは可能ですが、それでもキャラクターとして生きているのは悠と夏希くらい(ルートによっては寿士も)なので、どうしても物足りなさがつきまといます。

 注力すべきところを間違えたゲームと表しておきます。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2007年12月3日
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