夏めろ -summer melody- AcasiaSoft

2007年1月26日発売
 

 隠れた名作ともいうべき『シンフォニック=レイン』と同じ原画家の手によるゲームが出るというのを耳にしたのがまず最初のきっかけで、その後登場人物間の会話が楽しそうということで、ごく気楽な気持ちで購入したゲームです。

 発売日に入手したところ、パッケージに柔らかい布状のものが付属しています。何だこれと思いつつ、とりあえず帰宅してから取り出してみると、ヒロインがプリントされた枕カバー。こんなもん、どないせえっちゅーねん。

※このレビューは、初回限定版(サントラCD同梱)のプレイをもとに書いています。

シナリオ

あらすじ

 時は7月初頭、父親の海外赴任により、主人公である深町徹生は母方の親戚である高村家に厄介になることとなった。しかし、従妹の橘花はなかなかうち解けてくれない。3年生なので受験も間近ながら、これまでと同じ学園に通う主人公の悪友たちとは、夏休み中も事あるごとに会って会話を交わしたりと、退屈しない毎日。夏休みが終わったあと、主人公はどうなっているのか。

 シナリオ担当は木之元みけ氏。

話したり、選んだり

 前半では、主人公と周囲の登場人物たちのやりとりが何とも楽しいのがいいところで、AcaciaSoftがうたう「まったり系・日常アドベンチャー」というフレーズは、少なくとも前半については適切なものです。キャラクターのバリエーションも、結ばれる以前の友達段階では定番タイプばかりとはいえ、仲良しグループ間の会話だけで十分に楽しめます。こんな仲間とまったり過ごせるのなら、女のコとのエロを求めるよりも、友達とダベっているほうが和めるぐらいです。

 また、時おりでてくる選択肢にしても、キャラの攻略とはあまり関係なさそうなところで、ウケねらいで出しているようなものがあり、これが特に橘花(いぢられキャラ)あたりとのやりとりで効いています。ラブレターイベントで迷わずミス貧乳コンテストの参加要請か?を迷わず選んだのは、決して私だけではないはずです(^^;

お猿さんな主人公

 やりたい盛りのお年ごろとはいえ、この主人公、中盤以降は年がら年中「ヤりたい」を連呼しているようです。もともとエロを重視したゲームであるゆえとはいえるのでしょうが、それでもヒロインとのいちゃつき方ひとつとっても、もう少し芸がほしいところ。単に性欲が爆発しているだけならそれでもかまわないかもしれませんが、(後輩の秋を除いて)ラブラブになる前にとりあえずやっちゃっていることを考えると、がっついている主人公が軽薄に見えてきます。デート中に青姦スポットを見定めるって、ちょっと待てよといいたくなります。

 彼女と2人でいつもいっしょにいたいという意識が、性欲の陰に隠れてしまい前面に出てこないのは、主人公の過去が全ルートで共用されていることを考えると、主人公のみならずストーリーの魅力をスポイルしているように思えてなりません。夏の恋はまやかしなんてフレーズが、プレイ中に何度も頭をよぎりました。

サカリのついた娘さん

 いっぽうのヒロインのほうも、主人公に負けず劣らずエロエロぶりを発揮してくれます。もっとも、主人公を襲ってくるというわけでは必ずしもなく、主人公が迫ったときにあれこれ特殊な嗜好を見せてくれたりします。

 後輩の秋は特にこれといったことはないのですが(単にラブラブの延長というだけでしょう)、あとは意外な面が出てきたりします。発情すると態度がころっと変わる委員長など、何度もシーンを見ているうちに、こちらのほうがどうにかなってしまいそうでした(^^;

あの話はどこへ?

 会話のシーンはけっこう多く、そこで提示されている情報量もそれなりのものです。しかし、いろいろな設定が出されているのに、これらがゲーム本編ではほとんど使われないというものが非常に多いのは、困ったものです。

 橘花や美夏絡みでのバンド活動など、主人公の生活がかなり変わることが予想され、それによってヒロインとの関係もいろいろと描写できるはずなのに、そこに入る前にお話は終了(それ以前に、受験生にそんな暇があるのかという素朴な疑問もありますが)。ここまでひどくはありませんが、委員長ルートでの演劇にしても、シナリオチェックと配役が少し出てくるだけで、舞台設置や練習などに入る前に終わってしまいます。主人公の属している応援部ひとつとっても、部活動の実態としては屋上での練習1回こっきりだったりします。

 使われない設定というのは、何も活動やイベントにかぎったものではありません。ヒロインの抱えているトラウマ(と呼べるかどうか怪しいのですが)をクリアしてあんなことやこんなことをする、という流れになるルートが2つほどありますが、その解決があまりに安直で、特に委員長のほうはなし崩しとしか思えません(の件をもう少し掘り下げるくらいできたでしょうに)。彼女のキャラ設定にも関わってくるのですが、「結局この娘はこういうヤツ」で終わってしまっており、ヒロイン側の成長もない。これでは「ひと夏の想い出」レベルにしかならないのでは。

 こういった、設定倒れのものが多々見られる結果、全体が骨抜きになってしまっています。キャラどうしのやりとりが楽しいだけに、もったいない限りです。

エンディングの後味

 基本的に、ドロドロした流れにはなりません。ヒロインたちは、途中で知り合いになる後輩の秋を除いて(しかし彼女を例外扱いしないと話が進みませんね…)、すでに主人公のことが大なり小なり気になっているのですが、特定の娘とくっつくと、あとはすんなり進みます。人間関係のゴタゴタなどは皆無で、とてもスマートなエンディングになります。

 ただし、だからといって後味がよいかというと、そうでもないのが困りもの。つぐみなど「それで終わって、あとはどうするんだ」と心配になってきますし、他のキャラクターの場合も、主人公が受験生ということを考えると、儚く終わってしまいそうに思えてなりません。3年生ヒロインが3人もいるのに、進路に関する話題がほとんど出てこない(橘花だけは辛うじて例外か)という不自然さもさることながら、結ばれたことで主人公とヒロインがどのような人生を選ぶことになるか、あるいは迷うかと行った心理描写がほぼ皆無のため、「もう終えちゃうの?」という気になります。

 2人が幸せになったという安心感、満足感にいま一つ欠ける、物足りないエンディングが多かったと思えてなりません。委員長エンドは締めとして悪くないものの、あとはどうにもこの先が不安で。

ゲームの舞台

 ゲームの評価などとは直接関係ないことではありますが、ちょっと“おもしろいな”と思った点がありました。

 このゲームの大まかな舞台は千葉と推測されますが、実際には特定できません。というのも、背景画像が特定の風景を使っているものではなく、いろいろなものを組み合わせていると思われるためです。たとえば駅前の風景ひとつとっても、ルミネ(ゲーム中では「ルミニ」)の隣に、跨座式(車両が軌道の上にまたがる方式)モノレールの駅があるという場所は、実世界では存在しません。このほかにも、海水浴場とか(海岸線は熱海付近か)、別の駅とか(浅見駅はJR伊東線網代駅でしょう)、あっちの写真こっちの写真を組み合わせて作成したようです。

ゲームデザイン

 選択肢で振り分けが行われ、後半部分で単独のシナリオに分岐するタイプのノベルゲームです。攻略対象ヒロインは5人で、ツンデレないとこ、ベッタリな妹(義妹という表記は見あたりませんでした)、クラスメートその1(気さくで男っぽい)、クラスメートその2(「委員長」がニックネームのお嬢様)、後輩という顔ぶれです。ただし、後輩以外はそれぞれにアクの強い方々になっており、「ちょっと待て」と思わずツッコミを入れたくなるような行動や言動を端々に出してくれます。

 選択肢の数はそれほど多くはありませんが、ある特定のキャラを口説くか口説かないかといったタイプの選択肢が多いので、ターゲットにロックオンすれば容易にハッピーエンドに到達できます。私は1人1回ずつ、計5回のプレイですべてのCGおよび回想シーンを見ることができました。難易度は低いほうでしょう。

不具合・修正ファイル

 特に不具合などは確認されていません。

デモ・体験版

 デモ、体験版が協力Webサイトで公開されています。体験版では、ゲームの序盤をプレイすることができます。序盤の会話のテンポを把握するにはよいのですが、後半のエロエロ展開はまったく予想できないのがちと難か。

操作性など

 メディアはDVD-ROM1枚組で、対応OSは、Windows98 SE/Me/2000/XPです。フルインストール時に必要なHDD容量は約1GBで、プレイ時にはDVD-ROMが必須ですが、起動チェックが行われるのみなので、いったんプレイを始めれば不要ではあります。

 ゲームを起動すると「Start」「Load」「AlbumMode」「SceneReplay」「Exit」のメニューが表示されます(初回起動時は「Start」「Load」「Exit」の3つのみ選択可)。「AlbumMode」「SceneReplay」からは、各ヒロインごとにCGモードおよびHシーン回想モードに入れるほか、下部にあるメニューからBGMの再生モードに入れます。ただし、他にタスクに切り替えると音楽再生が止まってしまうため、作業をしながらBGMを流すわけにはいかないのは残念。

 各種設定メニューは、画面上側にマウスカーソルを移動すると表示されます。「Game」メニューからはセーブ&ロードなどができ、セーブ&ロードでは最大100個所まで保存でき、ゲーム中の日付とテキスト、セーブ時画面の縮小表示、セーブ時の実日時が記録されます。また、「Game」メニューからスクリーンショットを取ることができ、インストール先ディレクトリの「ScreenShot」フォルダに保存されます。「System」メニューからは、ウィンドウ設定やメッセージ速度設定、フォントの変更が可能です。「Sound」メニューからは、キャラクターごとの音声やBGM、効果音のON/OFFなどができます。特徴的なものに「H-Custom」というものがあり、これは文字通りHシーンの設定が可能なのですが、設定項目はこんな具合です(強調はデフォルト設定)。

2番目のメニューを見たとき、一瞬目が点になり、次の瞬間笑い転げてしまいました(^^; ゲーム設定だけでこれだけウケたものは、ほかに記憶にありません。

 画面はグラフィックが800×600全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが表示されます。メッセージウィンドウ右側には、「AUTO」(自動メッセージ送り)「SKIP」(既読スキップ)「REPEAT」(メッセージウィンドウ表示中の音声を再度再生)「CLOSE」(メッセージウィンドウ消去)の各メニューがあります。なお、マニュアルには書かれていませんが、Ctrlキー押下で強制スキップ、マウス中ボタン逆スクロールでメッセージ履歴の表示が可能です。また、既読スキップしても、ゲーム中の日付が変わるところで必ずいったん止まります。

 マニュアルはごくオーソドックスなものですが、このほかにHTML形式のオンラインマニュアルがあります。操作方法などについてはこちらのほうが詳細です。

サウンド

 BGM担当は細江慎治氏。オープニングにはボーカル曲が使われています。単独で聞くぶんには悪くありませんが、キャラ個別の曲だと、やや違和感が残るものがありました。特に橘花など、突っかかってくるシーンならいいんですが、おとなしいときにはどうにも合いません。

 音声は、主人公を除いてフルボイスとなっています。

グラフィック

 原画担当は、しろ氏。全体的にモノトーン調でロリっぽいキャラ造形に特徴がありますが、怒った表情などにまったく迫力がありません(^^; ちょっと体型に崩れが見られ、特にHシーンでの姿勢に不自然なところが散見されました。あと、驚いたときに白目が使われるのですが、ちょっと多用しすぎという気がいたします。背景は非常に丁寧で、塗りがきれいなのが好印象。

お気に入り

 特に1人を選ぶとなると、後輩の秋でしょうか。いろんな意味で怖くありませんから(^^;

総評

 前半はほのぼのまったり、後半はエロエロという組み合わせになっているのですが、木に竹を接いだような観が否めません。エロゲーたるものエロくあるべし、という考えは間違っていないのですが、ごくごく限られた(特定人のみから成る)人間関係のみにて動いていたわけではない主人公を軸にしたゲームであるにもかかわらず、世界が統一されておらず、散漫な印象を拭えません。

 橘花をいぢるなど、いわばサブ的な部分での楽しみが魅力になっているというのでは、残念ながら成功作とはいえないでしょう。それでも、結果的に楽しめなかったわけではないので、それなりの評価にしておきます。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2007年1月28日
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